ドル円は上げ一服も109.80円近辺と本日高値圏で推移=NY為替後半
NY時間の終盤に入ってドル円は上げを一服させているものの、109.80円近辺と本日高値圏で推移している。きょうのNY為替市場でドル円は109円台後半まで上げ幅を拡大。朝方発表の米新規失業保険申請件数が予想よりも少なかったことや、GDP改定値で個人消費が上方修正されたことなどでリスク選好の円安がドル円を押し上げている模様。ユーロ円やポンド円といったクロス円も買いが強まっている。米国債利回りや米株も指標を受けて上昇しており、ドル売りも一服していることから、ドル円はサポートされている模様。
本日のロンドンフィキシングに向けて、月末を意識した日本の投資家の買いも観測されているようだ。その動きにモデル系ファンドの円売りも活発に出たとの指摘も聞かれる。
海外勢の中からは、日本政府が緊急事態宣言を6月20日まで延長する意向を固めたことも円売りを誘っているとの指摘も出ている。主要都市の緊急事態宣言の延長は日本の景気回復を圧迫し、他の主要国とは異なり、依然として低水準で推移しているインフレが上昇する可能性はさらに後退する可能性がある。
きょうはイエレン米財務長官が下院で議会証言を行っていたが、インフレに関する発言で米国債利回りが上げ幅を拡大していることもドル円をサポートしているとの声も出ている。長官はインフレについて「高進があと数カ月は続き、高水準のインフレが年末まで続くと見込む」と述べていた。
ただ、ドル安への警戒感は依然として根強く、110円には慎重な雰囲気もみられている。明日は4月のPCEデフレータが発表され、市場はいつも以上に注目している。PCEデフレータはFRBがインフレ指標として重要視しており、今回は強い内容が見込まれている。しかし、FOMCメンバーはインフレ上昇は一時的と、慎重姿勢を堅持している。内容次第ではドルを圧迫する可能性も警戒されているようだ。
ユーロドルは1.22ドルちょうどを挟んでの上下動が続いている。きょうはリスク選好の円安が目立っており、ユーロドルは蚊帳の外といった状況ともいえる。ユーロ円は急上昇している一方で、ドル円も急上昇しており、ユーロドルはその動きに挟まれた形となっているものと思われる。本日は特にユーロドル自体の動意はないようだ。
市場からはユーロ下落の可能性も指摘されている。ECBが緩和政策スタンスを維持する一方で、他の主要中銀は出口戦略を舵を切ろうとしている。カナダ中銀は債券購入の減速を発表しており、FRBも資産購入ペース縮小を検討と言われている中で、ECBではそのような動きが見られていない。金融政策のスタンスの相違がユーロドル下落につながる可能性があるという。前日にパネッタECB専務理事が日経新聞とのインタビューで、「債券購入縮小を可能にする持続的なインフレ圧力の兆候はまだ見られない」と述べていた。
ここ数日、ドイツ国債の利回りの低下が続いている。市場の一部からは、ECBはフォワードガイダンス強化で長期金利上昇を抑制する可能性が指摘されている。ECBは市場の予想以上に長期間、政策金利が据え置かれることをより明確に強調するため、資産購入を長期化させるシグナルを発する可能性があるという。
ポンドドルは買い戻しが優勢となり1.42ドル台まで上昇。本日は英中銀のブリハ委員の発言をきっかけに買い戻しが強まっている。同委員は22年の利上げの可能性に言及していた。
今月初めにスコットランド議会選挙が実施され、2回目の独立を問う住民投票を推進するスコットランド民族党(SNP)が4期連続で第1党となった。1議席差で過半数を獲得できずに、住民投票実施へのリスクは後退しているが、市場ではリスクとしてなお燻っている。SNP党首でスコットランド首相のスタージョン氏はきのう、国がパンデミックから脱出した後、2回目の住民投票の計画を進めることを誓っていた。
ただ、そのリスクは短期的にポンドに影響を与える可能性は低いとの指摘も聞かれる。恐らく、現在の英議会の任期中には実施の可能性が低いと見られているためだ。解散等がなければ、英議会の次回選挙は2024年末となる。過去のスコットランドの第1回目の住民投票や英EU離脱の国民投票時の経験則から、ポンドがリスクプレミアムを織り込み始めるのは早くてもイベントの6カ月前とのデータがある。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。