米長期金利上昇でドル円も買い戻し続く=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は買いが優勢となり、104.40円付近まで一時上昇した。100日線が104.70円付近に来ており、目先の上値ターゲットとして意識される。米国債利回りの上昇が引き続きドル買い戻しを誘っており、ドル円も反転の流れを続けている。バイデン次期政権および、議会も民主党が主導権を握る中で、大胆な財政拡大策が期待されている。バイデン次期大統領は先週、数兆ドル規模の景気刺激策に言及していた。
足元の感染拡大は最悪の状況が続いているものの、財政拡大策とワクチン接種への期待から、年後半には景気は持ち直すとみており、それに伴うインフレ期待が米国債利回りを押し上げている。
ただ、米国債利回り上昇の持続性には懐疑的な見方も出ている。先週末に発表になった米雇用統計も非農業部門雇用者数(NFP)が予想外の減少となるなど、感染拡大の影響が雇用回復に影響が出始めたことが示唆されている。
FRBはインフレが上昇しても当面、低金利政策を続けることにコミットしているが、財政拡大に伴う国債増発も予想される中で、長期金利の上昇は財政ファイナンスのコスト増加にもつながり、FRBは長期金利上昇の抑制に動くのではとの見方も出ているようだ。バイデン次期政権の財務長官が、雇用に重点を置くイエレン前FRB議長という点もポイント。
きょうもユーロドルは戻り売りに押され、一時1.2130ドル近辺まで下落。きょうの下げで21日線を下放れする動きが見られており、明日以降の動きが注目される。あくまで調整の範囲であり、今年5月以降の上昇トレンドが終了したとの見方は少ないものの、1.20ドル程度まで下落する可能性はあるとの指摘も聞かれる。目先はフィボナッチ38.2%戻しの水準が1.2065ドル付近に来ている。
ポンドドルは一時1.34ドル台半ばまで下落。21日線を下放れる動きが見られており、明日以降の動きが警戒される。これまでのドル安が一服している中で、市場は英経済の先行き不安を再認識しているようだ。感染拡大が依然として続いており、変異種の感染も広まる中で、英国ではイングランド全域に都市封鎖が再導入されている。スナク英財務相もきょうの議会での答弁で「都市封鎖の再導入が経済に影響し、経済は回復前に悪化が予想される」と述べていた。市場では英中銀によるマイナス金利導入の観測が根強い。
市場では、先月にEUと合意した貿易協定に関するいくつかの重要な事実を見落としているとの指摘も出ている。英国はEUの単一市場と関税同盟を離れ、貿易に障壁を課したが、金融取引についてはまだ合意されていない。その状況下で、英国がワクチン接種から享受するであろう成長プレミアムは英離脱からの圧力によって相殺される可能性があるという。英経済は中長期的に縮小する可能性が高く、それがいずれ、ポンド安に現れるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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