ドル円は109円台に再び下落 米国での感染に警戒強まる=NY為替概況
きょうも市場はリスク回避の雰囲気を強め、ドル円は110円を再び割り込んでいる。新型ウイルス感染の経済への影響を市場はより意識し始めたようだ。中国での新規感染者数の発生は鈍化しているものの、イタリアやイランなど中国以外の国での感染が急拡大しており、世界経済への懸念につながっている。更に米国疾病管理予防センター(CDC)が、旅行歴のない米国人のカリフォルニアでの感染を確認したことも重石となっている模様
この状況を受けエコノミストやアナリストからは、成長や企業収益の見通しの下方修正が相次いでおり、一部には金融危機以来の低水準に落ち込むとの見方も出ている。感染が予想以上に深刻であることに市場は気づき、経済に与える現実的な影響を織り込む動きを活発化させているとの声も聞かれる。これまでは、感染拡大にもかかわらず、好調な米経済指標や米企業決算を材料に楽観的な雰囲気もあったが、影響を再認識しているようだ。
米株式市場の利益確定売りが加速し、米10年債利回りも過去最低水準を更新する中、為替市場の反応はリスクの円高というよりも、むしろドル安のようだ。FRBは様子見姿勢を強調しているが、市場は年内の米利下げの可能性を強めている。CMEがFF金利先物の取引から算出しているFEDウォッチでは、年内の利下げ確率を95%と確実視しているほか、3回以上が75%まで上昇している状況。ECBや日銀の緩和余地が小さくなる中、FRBの積極緩和で金融格差が縮小するとの見方がドル安を誘っているようだ。
ドル円は110.30円付近まで下げ渋る場面が見られたものの、109円台に再び下落。カルフォルニア州知事が新型ウイルス感染で8400人が監視対象になっていることを明らかにしたことをきっかけに、再び下値模索の動きを強めている。
そのような中、ユーロに見直し買いが活発化しており、対ドルのみならず、対円、ポンドでも上昇。ユーロドルは21日線を回復し、一気にショートカバーが強まり、1.10ドル台まで回復する場面も見られた。ドイツを始めとしたユーロ圏各国の財政拡大策への期待感もあるものの、ユーロ買いの材料は米利下げ期待の高まりによる、ドル安であろう。これまでのドル高の逆風をユーロが最も受けて来たことから、その巻き戻しが出ているものと思われる。
ポンドは戻り売りが続き、ポンドドルは1.28ドル台に下落。3月11日の予算案への期待が後退している。引き続き、EUとの貿易協定締結の交渉へのリスクがポンドに影を落としている。英政府はきょう、EUとの貿易交渉方針をまとめた文書を発表したが、サプライズこそなかったものの、ポンドにとってはネガティブとの指摘も出ている。文書では、合意の大枠が6月までにまとまらなければ、交渉を打ち切る構えをみせている。
EUのバルニエ首席交渉官は、英国が公正な競争と漁業に対するEU側の要求に同意しない限り、貿易取引は行われないと警告している。交渉は難航が確実視される中、貿易交渉は当面の間、ポンドのリスクとしてつきまといそうだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。