【来週の注目材料】利下げ濃厚な9月FOMCを前に米雇用状況は~米雇用統計
今週から9月に入り、6日に8月分の米雇用統計の発表が予定されています。
今月17日、18日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利(FF金利)を現行の2.00%-2.25%から1.75%-2.00%に引き下げるという見通しが広がる中、利下げのカギを握る大きな材料の一つ、米雇用状況が注目されるところとなっています。
前回7月分の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)がほぼ事前予想通りの前月比+16.4万人。もっとも前回分が速報時点での+22.4万人から+19.3万人に下方修正されており、若干弱めという数字になりました。
失業率は0.1%ポイントの低下見込みが6月分と同じ3.7%にとどまりました。もっともこれは労働参加率が6月分より0.1%ポイント高い63.0%となったことが要因(労働参加率が上がった場合は失業率も上昇することが一般的)。U6失業率(不完全雇用率)が0.2%ポイント低下して2000年12月以来の低水準となる7.0%になるなど、全体では比較的強めの数字に見えます。
平均時給は前月比、前年比ともに予想を0.1%ポイント上回る好結果。
雇用統計全体では堅調という印象を与える数字でしたが、FRBの姿勢を変えるほどのものではないという見通しが広がる結果になりました。
より詳しく、非農業部門雇用者数の業種別の詳細をみてみましょう。広義の製造業は6月から若干伸びが鈍化も、月毎のブレが比較的大きい建設関連が要因で、狭義の(いわゆる一般的な)製造業は6月分の+1.2万人から+1.6万人へと伸びが拡大。中でも通商問題にも絡んで注目される自動車及び同部品の分野は6月分の-0.01万人から+0.72万人と、小幅ながら拡大に転じています。
非製造業は6月分の+15万人から+13.3万人と堅調を維持しました。ただ、景況感などに敏感な小売業が-0.36万人と、小幅ながら6カ月連続で雇用減となっている点がやや気になるところです。全体の先行指標といわれるテンポラリーヘルプ(派遣業)が、前回までの二カ月連続での前月比マイナスから、プラス圏を回復した点は好印象でした。
こうした状況を受けて今回8月分ですが、非農業部門雇用者数の予想は、前回から若干鈍化しての+15.9万人が見込まれています。失業率は前回と同じ3.7%、平均時給は前月比が前回と同じ+0.3%、前年比が前回から0.1%ポイント鈍化の+3.1%見込みです。
非農業部門雇用者数は若干鈍化するとはいえ、予想通りの数字が出てくると3か月平均では前回の+14.0万人から+17.2万人(6月7月の数字にも修正がない場合)と、しっかりの上昇となります。FOMCでの利下げを取りやめるほどではありませんが、少なくとも一気に0.50%という大幅利下げの期待は後退しそうで、ドル買い材料として期待されます。
関連指標をみてみましょう。
週間ベースの新規失業保険申請件数は、計測期間がかぶる雇用統計基準日の12日を含む週の結果が20.9万件と、その前後の週よりも低め(失業保険なので低い方がいい数字)に出ています。この点は好材料です。
3日23時発表のISM製造業景気指数は、2016年6月以来約3年ぶりの低水準である51.2となった前回と同じ51.2が見込まれています。景気の拡大・縮小の基準となる50.0は超えていますが、かなり低めの数字。予想をさらに下回るとインパクトがありそうです。
また、前回分で51.7と、前々回6月分の54.5から一気に低下した雇用部門の数字にも要注意です。
5日21時15分発表のADP雇用者は前月比+14.6万人見込み。7月の+15.6万人から少し鈍化です。予想を下回り、前回からの鈍化という印象が強まると本番の雇用統計の直前の織り込みにも影響を与え、雇用統計発表前の重石となることがあります。
同日23時にはISM非製造業景気指数が発表されます。こちらも製造業同様に前回は約3年ぶりの低水準。2016年6月以来となる53.7を記録しました。ただ詳細をみると雇用部門は56.2と6月分から改善しています。今回は54.0と全体の数字も回復見込み。雇用部門と合わせて強めの数字が出てくると、本番の雇用統計への期待感につながります。
minkabu PRESS編集部 山岡和雅

執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。