今週のまとめ9月2日から9月6日の週
2日からの週は、ポンド相場主導で激しく振幅した。週初は3日からの英議会再開を前に合意なき離脱への警戒感が高まり、ポンド売りが強まった。ポンドドルは1.20台を割り込み、ポンド円は126円台へと下落した。しかし、英議会で野党主導の離脱延期法案が可決、英首相の総選挙動議は否決されて、合意なき離脱の警戒感が後退した。市場のムードは一気に好転して、ポンド買いに転じた。香港政府が「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回したことも好材料だった。加えて、10月上旬に米中閣僚級の通商協議が再開するとの報道もあった。週央以降はリスク選好に相場が転換し、株高、円安の好循環がみられた。ポンドドルは1.23台、ポンド円は132円近辺に上伸。ドル円は105円台後半から107円近辺へと買われた。米経済指標は、ISM製造業景気指数が50割れへと悪化したが、同非製造業指数は予想を上回った。ADP雇用統計の改善も米雇用市場の底堅さを示した。8月米雇用統計は雇用者数の伸びが予想を下回ったが、賃金の伸びや労働参加率は上昇した。ユーロ相場はポンドに追随する局面が多かったが、来週の12日にはECB理事会を控えており、今後は相場の主導権を取り戻す場面もありそうだ。
(2日)
東京市場は、落ち着いた値動きだった。ドル円は106円台前半での推移。週明けのオセアニア市場で105円台に値を落とす場面が見られたが、その後東京勢の本格参加と共に106円台を回復し、その後はもみ合いとなった。 ユーロドルは1.0990を挟む水準でで小動き。 今日は米国市場がレーバーデーで休場ということもあり、取引参加者が少なく落ち着いた動き。株式市場の取引も比較的閑散としていた。
ロンドン市場は、ポンドが売られた。ポンドドルが大幅下落し、ユーロドルやドル円にもドル買いが波及した。ポンド売りの背景は、EU離脱をめぐる英政権内の対立が表面化していること。ジョンソン英首相に代表される離脱強硬派に対して、合意なき離脱の阻止を求める造反派の溝が深まっている。総選挙を視野に入れた報道もあり、英政局に不透明感が広がった。ポンドドルは1.20台後半へ、ポンド円は128円台前半へと下落。ユーロドルは一時1.0958レベルまで下落した。ユーロ円は116.50近辺でサポートされており、下げは限定的。欧州株が堅調に推移し、米株先物も時間外取引で下げを消す動きをみせた。ドイツやユーロ圏製造業PMI確報値が速報値からほとんど変化なかったが、英製造業PMIは前回から一段と低下し、2012年以来で最低水準を記録した。ドル円は欧州株高で高値を106.40レベルに伸ばした。ただ、米加市場がレーバーデーで休場となるなかで、米債取引は休場となっており、積極的な売買は手控えムードとなっている。
NY市場はレーバーデーの祝日で休場。
(3日)
東京市場で、ドル円は106円台前半での揉み合いが続いた。日経平均が小幅安からプラス圏を回復し、ドル円、クロス円ともに買いが優勢となったが、限定的な動きにとどまった。豪ドルは振幅。米中関係への警戒感で、朝方から軟調地合いだったが、豪小売売上高が予想に反して前月比マイナスとなり一段安。対ドルで0.6688レベルまで下押しされた。その後の豪中銀政策金利は大半の予想通り据え置かれた。声明にも目立った変化はみられず、0.6710台まで反発、朝方からの下げを解消した。人民元安機長が継続。オフショア人民元は対ドルで7.1844レベルまで元安が進行した。
ロンドン市場は、ポンドが神経質に上下動している。きょうから英議会が始まるが、離脱延期法案の審議が予定されている。これが可決すればジョンソン英首相が総選挙を実施する公算が高まっており、英政局はより一層流動的なものとなることが警戒された。序盤はポンド売り主導で、リスク回避的な円買いの圧力が広がった。しかし、英保守党の造反派が緊急討議を求めると報じられると、一転してポンドが急反発した。ポンドドルは1.1960近辺の安値をつけたあと、1.2080台の高値を付けている。ポンド円も127円台割れから128円台乗せ水準で激しく下に往って来いとなった。欧州株や米株先物は軟調に推移、米債利回りも低下するなかで、ドル円は一時105.92レベルと前日安値水準にほぼ並んだが、その後は106円台を回復。ユーロドルは1.09台半ばが重く、1.0920台まで一時下落。ユーロ円は序盤に115円台へと下押しされたあと、戻りは116円近辺までと限定的だった。
NY市場で、ドル円は105円台に下落した。8月ISM製造業景気指数が49.1と景気判断の分岐点である50を割り込んだことがドル売りの背景。ISM指数は2016年1月以来の低水準で、詳細を見ても生産、受注、雇用が50を割り込んだ。関税をはじめ貿易問題や世界経済の減速傾向で、米製造業はセンチメント低下をより鮮明に示している。ドル円は106.40近辺まで上昇したあと、再び105円台へと下落。ユーロドルは1.09台後半まで一時買い戻された。次週のECB理事会を控えて、QE再開には慎重の姿勢もみられている。エストニア中銀総裁は、QE再開に強い根拠はない、と発言した。ポンドドルは1.21台まで一時上昇。英議会が再開されるなかで、保守党内での造反や離党の動きが報じられており、少数与党となっている。ジョンソン首相が目論む総選挙の行方は不透明だ。
(4日)
東京市場で、ドル円は106円台を回復した。朝方は前日NY市場の流れを受けて105円台後半で取引されたが、中国人民銀行の元高設定が好感されてリスク警戒感が後退。株高の動きとともに、ドル円、クロス円が上昇した。ダウ平均先物は時間外取引でしっかりとした値動きだった。ポンドが堅調。ポンドドルは昨日の1.19台から合意なき離脱懸念が後退する形で昨日の海外市場で一時1.21台に。1.2080近辺で朝を迎えた後、1.2110台まで上値を伸ばした。英議会でジョンソン首相にEUと離脱期限延長の交渉を命じる法案の採決が本日行われることが決まったことで、合意なき離脱懸念が後退し、ポンド買いの流れとなっている。
ロンドン市場は、円安・ドル安が進行。欧州株や米株先物が買われ、リスク選好ムードが広がった。香港行政長官が「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回するとの報道が流れたことで、香港ハンセン指数が一時4%超高となり、欧州株にも好ムードが波及した。また、昨日の英議会で離脱延期法案の審議についての動議が可決しており、合意なき離脱が遠のいたとしてポンド買いが強まった。ポンドドルは1.22台乗せまで大幅上昇、ポンド円も129円台後半へと買われる動きに、ドル円、クロス円全般に上昇。ドル円は106.30近辺、ユーロ円は117円台乗せ、豪ドル円は72円台乗せへと上伸した。ポンド高に連れてユーロドルは1.10台を回復。ラガルド次期ECB総裁候補が欧州議会で証言しており、大規模な緩和策を長期的に維持するとしている。政策の負の面についても考慮する、ECBは市場の思惑に導かれる必要はない、などの発言がユーロ買いにつながった面も。この日発表された英非製造業PMIは予想を下回ったが、反応薄。一方、欧州各国の非製造業PMIはおおむね改善した。
NY市場は、リスク回避ムードが後退。香港が長引く混乱の原因となった逃亡犯条例改正案を正式に撤回すると発表したことや、中国のサービス業PMIが予想を上回ったこと、そして、英議会でEU離脱延期法案が審議入りになったことで合意なき離脱への警戒感が後退していることなどがドル円をサポートしたようだ。ドル円は106.40水準を試す動き。ただ、米中協議の見通しが立たないことや、前日のISM製造業指数の弱い結果などで、上値追いには慎重姿勢も。ユーロドルは1.10台を回復。前日のローソク足が長い下ヒゲを示現しており、リバウンドが期待される状況。ただ、ファンダメンタルズ的にはユーロ圏経済への懸念から、ECBの追加緩和期待は根強い。ポンドに連れ高となった面も。ポンドは急速な買戻し。ポンドドルは1.22台、ポンド円は130円台を回復。合意なき離脱を阻止するための法案が可決成立しており、合意なき離脱への懸念は後退している。一方、この法案の可決に伴ってジョンソン首相は10月15日の早期解散総選挙を提案したが、議会は否決した。カナダ中銀の政策委員会を受けてカナダドルの買いが強まった。政策金利は予想通りに据え置きとなったが、声明では「現行程度の刺激策が適切」との文言を繰り返した。カナダ円は80円台半ばまで一時上昇。
(5日)
東京市場は、ドル高・円安の動き。中国商務省は米中閣僚級通商協議について、10月にワシントンで行うことを発表した。9月に予定されていた同協議だが、1日から一部がスタートした米国の対中関税第4弾や中国からの対抗関税スタートなどの状況もあり、両国関係が悪化する中で具体的な協議日程が決まらず、中止の可能性も懸念されていただけに、先送りとはいえ実施見通しとなったことを市場は好感。ドル円は一時106.75レベルまで上昇。日経平均は一時500円超高。上海総合指数は一時3000ポイント台を回復。午後はやや調整の動き。ポンドドルは1.2240台を中心に静かな取引だった。人民元は元高の動き。
ロンドン市場は、ポンドが一段高。序盤は前日の上昇に対する調整売りに押されたが、再び買いが勢いづいた。ポンドドルは1.22台前半に下げたあと、買いに転じると1.23台前半へと上昇。ポンド円も130円を一時割り込んだあと、131円台後半まで上伸した。前日の野党主導での離脱期限延期法案の可決、ジョンソン英首相の総選挙動議の否決などで合意なき離脱が遠のいたことがジョンソン政権発足後のポンド売りに巻き返しの流れを引き起こしている。英首相報道官は、EUのと話し合いが建設的だったとしたが、EU側からは協議は時間の無駄だったと手厳しい発言があった。英政府がEU側と10月17日のEU会合までに合意する可能性は極めて低いようだ。ユーロは、ポンドに連れた値動き。ユーロドルは1.10台前半で下押しも、その後は1.10台後半へと上昇。ユーロ円も117円台前半から118円手前へと上昇している。ドル円は106.40近辺から106.70近辺へと再び上昇。英株は軟調推移も、欧州大陸の各国株価指数や時間外取引の米株先物は堅調に推移している。
NY市場で、ドル円は107円台を回復。8月の米ISM非製造業景気指数が予想を上回ったことで、ドル買いが加速し、ドル円は107.20近辺まで上昇。先日の製造業の弱い結果が市場の景気後退懸念を広げたが、きょうの数字は安心材料となった。米株は大幅上昇。ライトハイザーUSTR代表とムニューシン長官が中国の劉副首相と電話会議をし、数週間以内にワシントンで閣僚級会合を開くことを明らかにした。停滞していた米中協議が再開することで期待感を高めている。ユーロドルはNY時間に入ってからは伸び悩んでいるが1.10台は堅持している。NY序盤に1.1085近辺まで買われたあとは1.1040付近へと押し戻されている。来週12日のECB理事会を控えて、追加緩和見通しが錯綜している。マイナス金利の深堀はほぼコンセンサスだが、QE再開については意見が分かれている。ポンドは1.23台へと買い戻しが継続。前日の英議会で合意なき離脱を阻止するための法案が可決成立しており、合意なき離脱への懸念が後退していることが引き続き支援している。
(6日)
東京市場で、ドル円は107円付近で振幅。昨日の米中通商協議再開の報道を好感したドル買い・円売りに加えて、米ISM非製造業景気指数の好結果も支えとなり、昨日のNY市場で107円台をつけた。東京早朝には調整の動きが入ったが、東京市場では再び107円台で取引されている。黒田日銀総裁が日経新聞のインタビューでマイナス金利の深堀は選択肢の一つと発言したことで円売りが入った。ただ、高値は107.10レベルまでと限定的な値動き。今晩の米雇用統計発表を前に、慎重な取引姿勢がみられた。ユーロドルは1.10台前半での揉み合い。ポンドドルは1.23台前半と、前日の上昇した高値付近での推移。
ロンドン市場は、ポンドが軟調。米雇用統計の発表を控えて、前日までの大幅上昇に調整売りが入った格好。ポンドドルは1.23台前半から一時大台割れ、ポンド円は132円ちょうど付近から131円台半ばへと反落。中国が預金準備率の引き下げを発表し、豪ドルは買いで反応したが、ユーロや円は反応薄だった。欧州株や米株先物の上昇反応は小幅にとどまっている。ドル円は107円を挟む水準での揉み合い。ユーロドルは1.10台前半でやや上値重く推移、ユーロ円は118円台前半から118円近辺へと小幅に軟化。豪ドル円は73円台前半、豪ドル/ドルは0.68台前半で高値を伸ばしている。ユーロ圏GDP確報値は前年比+1.2%と小幅に上方改定されたが、ユーロ相場は反応せず。様子見ムードが広がっている。
NY市場ではドル円は上げが一服し106円台に下落。朝方発表された8月の米雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回ったことから、米国債利回りと伴に売りが優勢となった。利益確定売りも出て一時106.60近辺まで値を落とした。昼にはパウエルFRB議長のスイスのチューリッヒでの講演が伝わり、ややドル買いの反応を見せたものの、大きな動きには至っていない。
執筆者 : MINKABU PRESS
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