為替相場まとめ2月10日から2月14日の週
10日からの週は、ドル売りが優勢。トランプ関税関連の報道が続々と流れる週だったが、リスク回避反応はそれほど強まらなかった。週明けはトランプ大統領が鉄鋼・アルミに25%関税を課すと表明。日本もその例外ではないとされた。EUは対抗措置を取ると表明。ただ、米国の発動は3月12日からと猶予期間が設けられた。週後半には「相互課税」を課すことを決定した。しかし、事前に伝えられていた即時発動は回避され、4月からに先延ばしされた。トランプ流の交渉術を市場は学習したのか、いずれにも過敏なリスク回避のドル買い反応はみられなかった。ファンダメンタルズ面からは米インフレ指標も注目された。消費者物価指数、生産者物価指数いずれも予想を上回る伸びを示した。しかし、ドル買い反応は一時的にとどまった。週全体の流れとしてドル売りが優勢だった。トランプ関税にドル高反応をしなくなったことで、ドル売り方向へとポジション調整が入る面があったようだ。トランプ米大統領が提唱したウクライナ停戦に向けた動きがユーロ買いを中心としたドル売りにつながる面もあった。ドル円にとっては、日銀関連の新規報道に欠けたことが円安方向への調整につながった面も指摘される。
(10日)
東京市場では、ドル円が神経質に振幅。東京朝方にトランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課すと表明するとリスク回避の動きでドル買いと円買いが交錯し、151.20台から151.60台で振幅した。その後は、5・10日(ゴトー日)絡みの国内輸入企業からとみられる買いで152円台を回復し、朝方につけたこの日の安値から1円以上のドル高・円安水準となる152.21付近まで上昇した。午後は上げ一服となり、151円台後半まで伸び悩んだ。ユーロ円は朝方に155.61付近まで下げる場面があったが、その後は朝方の下げを帳消しにして、一時156.93付近まで上昇した。 ユーロドルは早朝のドル高局面で一時1.0280付近まで下落した。しかし、その後は下値は広がらず、1.0300台を回復。
ロンドン市場では、週明けのトランプ関税を受けたドル買いの動きが一服。東京市場後半の流れを受けてロンドン市場でもリスク警戒が後退し、ドル円は152円台半ば、ユーロ円は157円台前半、ポンド円は189円台乗せまで買われた。足元ではこの動きも一服しているが、引き続き円安圏で推移している。ユーロドルは1.02台後半から1.03台前半で、ポンドドルも1.23台後半から1.24台前半で下に往って来い。欧州株はEUに対するトランプ関税を警戒しつつも堅調に推移している。トランプ関税に対する市場反応は次第にこなれてきた感もある。
NY市場で、ドル円は152円を挟んで上下動。NY時間に入って戻り売りに押され、一時151.60円付近に伸び悩む場面が見られた。トランプ大統領が週末に本日10日に全ての鉄鋼とアルミ輸入への25%関税を発表すると言及。また、米国に関税を課している国々に対する相互関税も週内に発表する方針も表明した。インフレへの懸念からドルは買い戻され、ドル円もロンドン時間に152円台半ばに買い戻されていたが、NY時間にかけて151円台後半に伸び悩む展開となった。ドル自体は様子見の雰囲気が出ており、ドル円に関しては、円自体の動きが先導していたようだ。いまのところ短期金融市場では5月の日銀利上げの確率を25%程度しか織り込んでいない。ユーロドルは1.03台前半での推移。トランプ関税への警戒感からユーロドルは21日線の下での値動きが続いている。トランプ大統領はEUに間もなく関税を課すつもりだと発言している。それに対してEUは日本とは違い、対抗措置を検討しており、エスカレートしそうな様相を見せている。ポンドドルは1.23台で緩やかな戻り売りに押され、21日線に顔合わせした。トランプ関税への脅威が続いているが、EUに高関税を課した場合、ポンドはユーロに対して上昇する可能性があるとの見方が出ている。、明日のマン英中銀委員の講演も注目されている。
(11日)
東京市場は「建国記念日」の祝日で休場。
ロンドン市場は、やや円安・ドル安。アジア市場でドル円は151.70近辺から152円近辺で下に往って来いだった。ロンドン序盤には日本にも鉄鋼・アルミ関税がかけられるとの報道に円買いで反応。ドル円は151.65近辺に安値を広げた。しかし、欧州株など全般に売り圧力は限定的。米債利回りが上昇したことがドル円の下支えとなり152.40付近に高値を伸ばしてきている。クロス円も堅調に推移。ポンドは神経質な値動き。この日はマン英中銀委員の発言に神経質な動きをみせている。同委員はタカ派で知られるが、直近の英MPCで予想外に50bpの大幅利下げを提唱した。今日の発言では雇用が不規則な減少を示しており、消費が軟化と指摘。一方、大幅利下げについては「雑音を断ち切るため」と説明、将来の制限的な姿勢を継続、利下げの継続を意味せずとタカ派ぶりの一端を覗かせた。ポンドは売りが先行も買い戻されるなど神経質に振幅。また、EUは米国の関税に対抗措置を取るとしている。ただ、交渉の用意があるともしており、リスク警戒の動きは広がっていない。ベトナム通貨ドンが対ドルで最安値を更新との報道もあったが、主要通貨に関してはトランプ関税報道に対する反応は鈍ってきているようだ。
NY市場では、ドル円が152円台半ばに上昇。ただ、全体的には方向感のない雰囲気に変化はない。本日はパウエルFRB議長の議会証言が行われたが、「金利調整を急ぐ必要ない」と改めて表明した。予想通りの内容ではあったが、ドル自体は下落した。ただ、明日の米消費者物価指数(CPI)の発表前に円安がさらに進み、ドル円は上昇した格好。全体的に関税のニュースへの市場の反応は以前ほどは敏感に反応していない。関税についてのパウエル議長の発言も注目されたが、目立った言及はなかった。実際にマクロ経済への影響を見極めたいとの雰囲気があるのかもしれない。ユーロドルは1.03台後半まで一時上昇。21日線で上値を止められている。ユーロドルに関しては弱気な見方が根強い。トランプ関税はもちろんのこと、ドルとユーロの金利差がユーロドルを圧迫する可能性があるという。ポンドドルは1.24台半ばに買い戻された。マン英中銀委員がインフレ抑制に向けた引き締めの必要性を強調したことで、市場は英中銀の3月利下げの期待を若干後退させている。
(12日)
東京市場では、円売りが続いた。ドル円は前日海外市場から一段と上昇、午前中に153.50前後まで上昇。午後に入っても流れが継続し153.73を付けている。かなりの円売りフローが持ち込まれているようだ。昨日のパウエル議会証言で利下げを急がない姿勢を改めて示したことなどがドル高につながった面も。高値をつけたあとも153.50付近がしっかりとしている。ユーロ円はドル円の上昇とともに、158円台から159.31近辺まで上昇している。ユーロドルは1.0354-68レンジで揉み合い。円相場主導の展開となっている。
ロンドン市場は、値動きが落ち着いた。東京市場で進行した円安水準での揉み合いが継続。日本時間午後10時30分の米消費者物価指数発表を控えて、模様眺めムードが広がっている。ドル円は東京市場で152円台前半から153円台に乗せた後、ロンドン朝方には153.90近くまで高値を伸ばした。その後の調整は153.40付近までにとどまり、概ね153円台半ばから後半で推移している。クロス円も同様。ユーロ円は東京市場で158円割れ水準から159円台乗せとなった後、ロンドン朝方に159.67近辺に高値を伸ばした。その後は159円台前半を中心に推移している。ポンド円も189円台半ばから191円台後半まで買われああとは191円台前半に落ち着きどころを見出している。欧州株はやや買いが優勢も、値幅は限定的。米債利回りは前日終値付近で推移。トランプ関税関連の新たな情報も出ていない。ユーロドルは1.03台後半、ポンドドルは1.24台半ばでの揉み合い。ドル指数は前日終値付近で推移している。原油先物や金先物は調整売りに上値重く推移している。
NY市場では、ドル買いが強まった。ドル円は一気に154円台半ばへと上昇、その後も買われ154.80付近に高値を伸ばしている。この日の米消費者物価指数(CPI)が前年比+3.0%など予想を上回ったことに反応。米CPIはディスインフレが進んでいない状況を明らかに示しており、FRBの追加利下げへの期待もさらに後退している。短期金融市場では次回の利下げは9月から12月まで後退している状況。一部からは、年内は据え置きとの観測も出ている。インフレの動向次第では利上げの選択肢も指摘されているようだ。トランプ関税のニュースは続いているが、実際にマクロ経済への影響を見極めたい雰囲気もある。影響を正確に見通せないとの声が多い中、それが個人投資家中心に円安を促しているとの指摘も出ていた。本日もパウエル議長の下院での議会証言が行われていたが、当面は様子を見る姿勢を強調していた。ユーロドルは上下動。米CPIを受けてドル買いが強まり、1.03台前半に急速に下落していたが、売りが一巡すると、一時1.04台に戻した。ホルツマン・オーストリア中銀総裁は、50bpの大幅利下げは「良い判断ではない」、「関税によりインフレは引き続き脅威」などと述べた。ポンドドルも1.23台に下落したあと1.24台半ばに上昇と振幅。英景気見通しが悪化しても、ポンドはユーロをアウトパフォームするとの見方が一部から出ていた。
(13日)
東京市場は、リスク選好的な円売り・ドル売りの動き。トランプ米大統領は12日にロシアのプーチン大統領と電話会談しウクライナ戦争の終結に向けた交渉開始で合意した。また、東京中盤には中国がウクライナ戦争の停戦に向けてトランプ米大統領を支援する提案をしたと一部で報じられたことから、地政学リスクが後退するとの見方が強まりドルと円が売られた。ドル円は154円台前半で揉み合ったあと、東京終盤はややドル売りが優勢となり一時154円割れに沈んだ。ユーロドルは、午後に1.0440付近まで上昇、およそ1週間ぶりの高値水準に。ユーロ円は161.19近辺、ポンド円は193円目前まで買われたあと、上昇一服。
ロンドン市場では、ドル円が153円台に軟化。この日は米債利回りが低下しており、ドル売り圧力が優勢になっている。東京時間にはウクライナ停戦交渉への期待もあってユーロドルやポンドドルが買われた。ユーロ円などクロス円もリスク選好的な動きで上昇。ドル円は154円台での上下動が続いた。しかし、ロンドン時間に入ると一転してドル円が下方向に動意付いた。154円台割れから153円台後半へと安値を広げている。クロス円も東京市場での上げを消す動きとなっている。ユーロドルは1.04付近から1.04台前半、ポンドドルは1.25を挟んでの振幅と前日比ドル安水準で売買が交錯している。米債利回りは前日の米CPIの上振れを受けて急上昇していたが、その後は調整の動きで低下している。ドル円にとっては今週の上昇の流れに調整が入る面も指摘される。ポンドは英月次および四半期GDPが予想を上回ったことが好感されて買いが先行したが、一時的な動きにとどまっている。
NY市場では、ドル売りが優勢。本日は米生産者物価指数(PPI)が発表になっていたが、前日のCPIと合わせてFRBの利下げへの慎重姿勢を正当化する内容ではあった。短期金融市場は前日と変わらず、次回の利下げは12月まで後退している状況。ただ、為替市場は発表直後こそ売買が交錯したものの、前日のCPIである程度消化した面もあり、それ自体は無難な通過となった。午後になってトランプ大統領が相互関税に関する措置に署名した。今回の措置では、国ごとに新たな課税を提案するよう指示。手続きは広範囲に渡るため、完了には数週間から数カ月を要する可能性があるとも伝わっている。そのため発動の明確な日程は決まっていない。なお、この計画にラトニック商務長官候補が任命された。ラトニック氏は相互関税計画は4月2日までに開始可能だと述べていた。一旦ドルは急速に買い戻しが強まったものの、直ぐに売り戻されている。逆に署名前以上に下落。ドル円は153円台後半から一時153円割れまで下落。ユーロドルは1.04台後半へと水準を上げだ。ポンドドルも1.25台後半へと上昇。
(14日)
東京市場では、前日海外市場で進んだドル安の動きが一服。前日にはウクライナ情勢の進展期待、トランプ大統領が相互関税の即時発動を見送ったことなどがドル売りを誘っていた。きょうは値動きが落ち着いており、ドル円は152円台半ばから153円台乗せでの上下動。ユーロドルは1.04台半ばから後半、ポンドドルは1.25台半ばから後半での小動きが続いた。ユーロ円も159円台半ばから160円台乗せ、ポンド円は191円台後半から192円台前半での取引に終始している。いずれも前日NY終値からは離れずの推移となった。
ロンドン市場では、主要通貨の値動きが停滞し模様眺めとなっている。ドル円は152円台半ばから後半、ユーロ円は159円台半ばから160円台乗せ水準、ポンド円は191円台半ばから192円台前半などで売買が交錯している。前日の流れを受けてドルの上値は重いが、ユーロドルは1.04台後半、ポンドドルは1.25台後半を中心に比較的小幅の推移にとどまっている。今週はトランプ米大統領の言動を中心に動いた。週明けの鉄鋼・アルミへの25%関税、週後半には相互関税などのポールが各国に向けて投げかけられた。鉄鋼・アルミは1カ月程度、相互関税については4月までと交渉期間が設けられている。また、トランプ大統領はウクライナ停戦に向けてロシアとの電話会談を行った。ただ、ウクライナのNATO加盟や領土保全について否定的な見解を示しており、今後物議を醸すこととなろう。ミュンヘンで安全保障会議が開催されており米副大統領とEU・ウクライナとの協議が行われる予定。トランプ大統領が投げかけられたボールがどのように返されてくるのか。市場は固唾をのんで見守っている状況だ。
NY市場でドル円は一時152円ちょうど付近まで下落する場面が見られた。ただ、152円台はかろうじて維持している。きょうの下げで200日線を再び割り込んでおり、1月中旬以降の下向きの流れは継続されている。早期に200日線の水準を回復できるか、それとも150円に向かって下値を掘り下げるか、来週以降、注目の局面に入る。
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執筆者 : MINKABU PRESS
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