為替相場まとめ12月16日から12月20日の週
16日からの週は、日米英など主要中央銀行の年内最後の金融政策発表が注目された。米FOMCでは予想通り政策金利が25bp引き下げられた。来年の金利見通しで利下げ回数が従来の4回から2回へと減少。パウエル議長会見ではより慎重な利下げ姿勢が示された。これを受けてドル買いが強まった。日銀金融政策決定会合では利上げが見送られた。先週からの関係者リーク報道でかなり据え置きの見方が浸透していたが、一部には利上げ観測も残っており、市場は円安に反応。さらに、植田日銀総裁会見では次回1月会合での明確な利上げ示唆は行われず。トランプ政策や賃金動向の影響を確認したいとしたことが、市場では次回利上げは3・4月に持ち越されるとの思惑を広げた。ドル円は153円台から157円台へと急伸した。英中銀は金融政策委員会で政策金利を据え置いた。据え置き自体は想定内だったが、票割れが6対3と利下げ派が前回の1名から3名に増えた。これを受けてポンド売りの反応がみられた。市場に対するインパクトは、ドル高・円安・ポンド安の順番だった。ドル指数は年初来高値を更新。ドル円は介入危険水域まで上昇。ポンドは対ドルでは堅調、対円では軟調、対ユーロでは一時年初来高値を更新した。ユーロはECBの根強い緩和姿勢を受けて、ポンドと円の中間に位置する強弱感だった。
(16日)
東京市場で、ドル円が上昇。朝方には前週末の円安の反動から一時153.33付近まで軟化。昼前には一転して153.97近辺まで高値を伸ばした。11月26日以来およそ3週間ぶりの高値水準となった。今週の日銀金融政策決定会合での追加利上げ見送り観測などが支えとなった。ただ、154円台に乗せる勢いはみられず、午後は153円台半ばまで押し戻される場面があった。ユーロ円はドル円同様に午前に円売りが優勢となり、一時162円目前まで上昇したが、午後は上昇が続かず161円台半ばまで伸び悩んだ。ユーロドル午前に1.0523付近まで強含んだあとの押しは浅く、午後はこの日の高値圏で小動きとなった。
ロンドン市場は、根強いドル買いの動き。ただ、値幅は限定的となっており、週央から週後半にかけての米日英などの中銀金融政策発表待ちのムードも。そのなかでは、ポジション調整的にポンド買いの動きがやや目を引いた。ドル円は東京時間に153.33から153.97近辺まで買われたが、その後は154円手前の売りに上値を抑えられている。ただ、足元では153円台後半で底堅く推移している。ユーロドルは東京市場で1.0484近辺から1.05台乗せとなったあと、ロンドン序盤には1.0524近辺まで高値を伸ばした。その後は1.05台割れ水準へと押し戻されている。仏独ユーロ圏のPMI速報値は製造業が低迷も、非製造業には回復の動きがみられていた。ポンドは対ドル、対円、対ユーロなど各主要通貨に対して強含んでいる。英PMIもユーロ圏と同様に製造業が弱く、非製造業は改善した。ポンド買いの動きには先週後半のユーロ買い・ポンド売りに対する巻き返しの面が強かったようだ。ポンドドルは一時1.2672近辺、ポンド円は194.76近辺まで高値を伸ばした。ユーロポンドは反落し、0.82台へと再び軟化している。
NY市場で、、全体的に方向感のない中、ドル円は154円台を回復。、一時154.50円付近まで上昇する場面が見られた。154円台回復は11月26日以来。ただ、今週は18日に年内最後のFOMCの結果が発表され、それを前に結果待ちの雰囲気も強い。FOMCについては、今月始めの米雇用統計で失業率が4.2%に上昇していたこともあり、市場では25bpの利下げを確実視している状況。一方、11月の米消費者物価指数は予想通りではあったものの、根強いインフレ圧力も示されていた中で、市場は来年のヒントを探っている。ユーロドルは依然として上値が重く、一時1.04ドル台に下落する場面も見られた。ただ、その後は1.05ドル台をかろうじて維持している。FRBはECBよりもインフレとの厳しい闘いに直面しているため、来年もドルはユーロに対して強含みで推移する可能性が高いとの指摘が出ていた。FRBが今週利下げを実施し、その後はしばらく据え置きが継続されると予想。半面、先週に利下げを実施したECBは来年も利下げ継続を見込んでいるという。ラガルド総裁も利下げ継続の姿勢に言及していた。ポンドドルは買い戻しが優勢となり、本日1.2675ドル付近に来ていた21日線付近まで戻す展開。一部からは英消費者物価指数がポンドを上昇させる可能性があるとの指摘があった。
(17日)
東京市場では、ドル円が振幅した。朝方に154.35近辺に上昇も、その後はドル安に押されて153.80近辺まで下落。今日、明日の米FOMCを前に行き過ぎた動きに警戒感が広がり、高値からの売りを誘った。しかし、昼以降は再びドル高となり154円台に戻した。ユーロドルが1.0534近辺から1.0498近辺に下落するなどドル買いが優勢だった。午後に入ると、米債利回りがやや上昇傾向となりドル高に寄与した。ポンドドルも1.2698近辺を高値に、1.2668近辺まで軟化した。ユーロ円は午前中に対ドルでのユーロ買いとドル円の堅調地合いに162.48近辺まで上昇。その後は一転して売りが強まり、161.72近辺に安値を広げた。やや不安定な動きだった。
ロンドン市場は、ドル高・円高の動きが優勢。原油や金相場が軟調に推移、米株先物・時間外取引がマイナス圏で推移するなどリスク警戒の動きが背景。米債利回りの上昇がドル高につながる面もあった。また、この日発表された英雇用統計で、賃金の伸びが予想以上に加速したことがポンド買い反応を広げた。一方で、独Ifo景況感指数が今年の最低水準となったことがユーロ売り圧力を広げた。レーン・フィンランド中銀総裁やカジミール・スロバキア中銀総裁が来年の利下げ継続姿勢を示したこともユーロを圧迫した。ドル円は154円台前半から153円台後半へと軟化。ユーロ円は162円付近から161円台前半に下落。一方、ポンド円は195円台後半に買われたあと、一時195円台割れも、その後は195円台前半に下げ渋る動き。ユーロドルは1.05台前半から1.04台後半へと軟調な流れ。ポンドドルは朝方に1.26台後半に下げたあと、強い英賃金統計で1.27台乗せ。その後は1.26台後半から1.27付近で売買が交錯している。豪ドルやカナダドルは原油や金が軟調なことで上値重く推移している。
NY市場では、ドル円が一時153円台前半まで下落。11月の米小売売上高の発表をきっかけに本日は戻り売りが強まったが、日米の金融政策を前にした持ち高調整が中心と思われる。市場にはFOMCを受けたドル高期待が広がり、ドル円も154円台半ばまで買い戻されていた。ただ、明日のFOMCでの反応についてアナリストからは、FRBが市場の期待通りに利下げペースを鈍化させるシグナルを送ったとしても、ドル相場はほとんど動かない可能性があるとの見方も出ていた。ユーロドルは1.05付近での狭い範囲での値動きに終始。上値は依然として重いものの、下値を試す動きも一服している。本日はECB理事のレーン・フィンランド中銀総裁の発言が伝わっていたが、インフレが目標とする2%付近で安定し始めているのに伴い、今後も利下げを継続するとの見解を示していた。「金融政策の方向性は今や明確だ。利下げの速度と規模は入手するデータと包括的な分析に基づき毎回の会合ごとに決定する」とも述べている。ポンドは買いが強まり、対ドル、ユーロで上昇。ポンドドルは1.27台を回復し、21日線を上抜く展開。この日の英雇用統計で賞与を除く週平均賃金が前年比5.2%上昇と前回から上昇幅が拡大し予想も上回ったことがポンドを支援した。
(18日)
東京市場は、米FOMC待ちで慎重な値動き。ドル円は153円台で推移。153.40台でスタートし、午前中は前日のドル安・円高に対する調整で153.79近辺まで反発。午後には153.30台へと軟化。前日安値には届かず、上限とも値動きは限定的だった。ユーロドルは1.0500を挟んで狭い水準での推移。FOMC前に様子見ムード。ユーロ円は対ドルでのユーロの動きが乏しくドル円に準じた動き。ポンドは16時の物価統計、明日の英中銀金融政策会合を前にやや上値が重い。ポンドドルは1.2695近辺まで軟化。今週は月曜日朝の1.2600付近から昨日海外市場で1.2730近くまで上昇を見せており、イベントを前に少し調整売りが入っている。
ロンドン市場は、ややドル買いの動き。ただ、NY後半には米FOMCの結果発表、金利見通し、パウエル議長会見などを控えており、全般的に模様眺めムードが広がっている。ロンドン序盤は米債利回りの上昇とともにドル買いが先行。ドル円は153円台前半から153円台後半へと買い戻された。ユーロドルは1.05台乗せから1.04台後半へと下押し。ポンドドルはロンドン早朝に発表された英消費者物価指数でコア前年比とサービスCPI前年比が予想を若干下回ったことで1.27台前半から1.26台後半へと下落した。しかし、いずれも動きも続かずドル円は153円台後半での揉み合い、ユーロドルは1.04台後半、ポンドドルは1.27台を回復とレンジ取引にとどまっている。ユーロ圏消費者物価指数確報値は予想外に小幅の下方改定となったがユーロ相場は反応薄だった。英製造業受注指数は大幅に悪化も、販売価格指数の上昇でポンドはやや買いの反応を示していた。
NY市場では、午後のFOMCの結果を受けてドル買いが強まり、ドル円は154円台後半に一時上昇した。FOMCは大方の予想通りに25bpの利下げを実施。ただ、注目のFOMC委員の金利見通し(ドット・プロット)では、来年の利下げは2回のみを想定。1回・0回の予想も19名の委員のうち4名いた。また、経済見通しでも、来年のPCEデフレータの見通しを従来の2.1%から2.5%に大きく上方修正している。FRBは完全にタカ派な利下げ姿勢にシフトした印象が強い。パウエル議長の会見でも「追加調整を検討する上で慎重姿勢を強める可能性。金利調整プロセスは新たな段階に入った」などと述べた一方、「政策はなおも有意に抑制的」とも述べていた。方向感は利下げではあるものの、慎重にアプローチして行く姿勢を滲ませている。市場は1月の据え置き観測を強め、短期金融市場では1月の据え置きの確率を90%に高めている。ユーロドルは1.03ドル台に急落。ポンドは対ドルでは下落したものの、対ユーロでは上昇。ただ、ポンド円はFOMCを受けて急速に下落した。本日のFOMCを受けて、日銀が明日の決定会合でサプライズ利上げを実施するのではとの観測から、対クロスで円高の動きが出ていたようだ。
(19日)
東京市場では、円安が進行。日銀はきょう政策金利を市場予想通り0.25%で据え置くことを決定したが、一部で追加利上げ観測があったこともあり、円売りが優勢となった。ドル円は、11月20日以来およそ1カ月ぶりの高値水準となる155.47付近まで一時上昇した。上げ一服後は植田日銀総裁の会見を前に様子見ムードが広がり、155円台前半で小動きとなった。クロス円も軒並み円売り優勢。ユーロ円は一時161.40付近まで、ポンド円は一時195.72付近まで上昇した。日本時間午後9時には英中銀政策金利が発表予定となっており、注目が集まっている。ユーロドルは対円での上昇もあって一時1.0391付近まで水準を切り上げた。
ロンドン市場は、円相場がさらに急落。この日の日銀決定会合では大方の予想通り利上げが見送られた。一部には利上げ期待も残っていたことで円売りに反応。さらに円売りに火をつけたのが植田日銀総裁の会見だ。次回利上げについて明言しなかったことに市場は強く反応した。ドル円は155円台前半から買われ、ロンドン序盤には157.14近辺まで高値を伸ばした。植田総裁は1月会合までに支店長会議などである程度の情報を参考にする、総合判断にならざるを得ない、と歯切れ悪い発言内容。米次期政権の政策をめぐる不確実性大きい状況続く、来年の春闘などの情報も必要、などとして3月・4月以降となる印象を市場に与えた。ドル円急伸とともにクロス円も大幅高。ユーロ円は161円付近から163円台後半まで、ポンド円は195円台から199円手前水準まで買われた。ユーロドルは1.04台乗せ、ポンドドルは1.26台後半とクロス円に連れ高となった。続く英中銀の金融政策発表では、大方の予想通り金利が据え置かれた。ただ、票割れが6対3となり、3名が利下げを主張した。これを受けてポンド売りの反応が広がっている。ポンドドルは1.26台割れ、ポンド円は197円台へと反落。ユーロポンドは反発している。ただ、円安の強さと比較するとポンド売りの動きは限定的。
NY市場で、ドル円は一段高。さらに上値を伸ばし、一時157円台後半まで上昇した。前日のFOMCを受けたドル買いは一服していたものの、今度は日銀決定会合を受けた円安がドル円を押し上げた。ドル円はきょうの上げで11月高値を上抜いており、再び155-160円のゾーンにレベルを戻している。ショート勢も巻き戻しを余儀なくされたようだ。財務省による口先介入への警戒感も高まりそうな水準に入って来ており、明日以降の動向が注目される。前日のFRBと日銀の姿勢の違いから、日米の金利差は拡大したままの状態も想定され、円キャリー取引が再び活発化しそうな気配は否めない。ユーロドルは一旦1.04台まで買い戻されていたものの、前日の急落で上値がこれまで以上に重くなっている印象もある中、再び1.03台に値を落とした。FRBとECBの差がさらに鮮明になる中で、ユーロドルは下向きの流れを加速させている。再び21日線を下放れしている。ドイツの消費者信頼感指数が発表になっていたが、若干回復を見せたものの、ショルツ政権崩壊を受けて来年に選挙が予定される中、比較的低水準に留まっていた。ポンドは売りが強まり、ポンドドルは1.25ちょうど付近まで下落。本日の英中銀の金融政策委員会(MPC)がポンド売りを誘発。政策金利は予想通りに据え置かれたが、委員の投票行動は6対3で、3名が利下げを主張していた。ベイリー英中銀総裁も「金利の方向性は下方で、市場の次回2月の利下げの織り込みは合理的な出発点」と述べていた。短期金融市場では2月の追加利下げの確率を70%程度で織り込んでいる。
(20日)
東京市場は、ドル円主導の展開。朝方に157.93近辺まで上昇、前日高値を更新し、7月17日以来のドル高・円安水準となった。前日の米FOMCの153円台からはかなり短い時間で4円強の大幅高となった。米FOMCでの利下げペース鈍化見込みと、日銀会合及びその後の植田総裁会見を受けての追加利上げ期待の後退がドル買い・円売りを誘った経緯がある。こうした動きに対して、日本の当局は「投機的な動き含め為替市場の動向を憂慮している、行き過ぎた動きには適切に対応」と加藤財務相、三村財務官によるけん制発言を行った。介入警戒感が広がり、売りに転じた。ロンドン早朝にかけては156円台まで反落。ユーロ円も163.66近辺まで買われたあとは、162.35近辺へと反落した。ユーロドルはレンジ推移もやや上値は重く、1.0350レベルを試す場面がみられた。
ロンドン市場は、円買いとともにドル売りの動きとなっている。ドル円は東京市場で158円手前まで買われた後、軟調な流れに転じた。財務相や財務官などから円安けん制発言があったことが上値を抑えた面が指摘される。クロス円も下げて円買い優勢となった。ロンドン時間に入るとユーロドルが1.04手前まで上昇、ポンドドルも1.25台を回復するなどドル安の動きが加わっている。米FOMC後のドル高の動きに、週末を控えて調整が入る格好となっている。株式市場も欧州株や米株先物・時間外取引が売りに押されている。一連の主要中銀金融政策発表を終えて、来週はクリスマス週となる。週末にかけてのポジション調整の動きが中心となっているようだ。
NY市場はドル売りが強まり、ドル円も一時156円を割り込む場面も見られた。来週にクリスマス休暇を控える中、本日は今週のFOMCを受けた急速なドル高の調整が強まった。この日発表のPCEデフレータが予想を下回っていたことも、その動きに拍車をかけていたようだ。FOMCを受けたドルの反応は少し過剰との声も多く聞かれてはいた。

執筆者 : MINKABU PRESS
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