【今週の注目材料】米国の利下げ開始見通しや年内利下げ回数見通しにも影響=米雇用統計
【今週の注目材料】米国の利下げ開始見通しや年内利下げ回数見通しにも影響=米雇用統計
米国の利下げ開始時期と年内利下げ回数について市場の注目が集まる中、カギを握る需要指標の一つである米雇用統計(3月)が5日に発表されます。
前回2月の雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+27.5万人と、市場予想の+19.8万人を大きく上回りました。しかし、1月のNFPが+35.3万人から+22.9万人に大きく下方修正されており、ならすとやや微妙な数字です。また失業率が1月と同じ3.7%の予想に対して3.9%に悪化しています。
NFPの内訳を見ますと、1月速報時点で+2.3万人と力強さを見せた製造業は、1月の数字が+0.8万人に下方修正された上に-0.4万人と昨年10月以来のマイナス圏。
景気に敏感で雇用の流動性も高く、前回強く出たことが好感された商業・運輸・倉庫業は、小売業が1月分が+4.5万人から+1.5万人に下方修正、2月は+1.9万人とまずまずの伸び、運輸倉庫業は1月速報時点で+1.6万人と好調でしたが、-2.9万人とマイナス圏に下方修正され、2月は+2.0万人とまずまずの伸びという結果でした。
関連指標を見てみましょう。
週間ベースの新規失業保険申請件数は、調査対象期間の重なる基準日12日を含む週の比較で、2月は20.2万件、3月は21.2万件と若干の悪化です。
3月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は104.7と2月の104.8から小幅悪化。2月は106.7から下方修正、3月の予想は107.0でしたが、大きく下回りました。もっとも雇用部門に関しては現状についてはそれほど弱くなく、雇用が十分にあるという回答は43.1と2月の42.8を上回り、職を得るのが困難との回答は10.9と2月の12.7から減少しています。
今後出る関連指標も予想値などを確認してみましょう。
1日発表の3月米ISM製造業景気指数の予想は48.4と2月の47.8から小幅改善見込みです。前回は49.5と1月の49.1から改善見込みが、47.5と悪化しました。2022年11月から50割れが続いており、今回予想通り50を下回ると17カ月連続。これはリーマンショック時を超えて、2000年8月からの18カ月連続以来となります。内訳を見ますと、拡大縮小判断の境である50を上回っていた新規受注と生産が悪化し、縮小圏に陥りました。特に新規受注は52.5から49.2へ3.3ポイントの大きな悪化でした。もともと弱かった雇用も47.1から45.9に悪化しました。
2日発表の2月の米雇用動態調査(求人件数)の予想は877万件と1月の886.3万件から小幅悪化見込みです。アフターコロナで一時1100万件を超えていた米国の求人件数は、昨年10月に879万件まで減少。12月は900万件超えまで回復も、前回再びの悪化でした。今回悪化が続くようだと、米国の求人状況への警戒感につながります。
3日発表の3月米ADP雇用者数の予想は前月比+15万件と2月の14万件から小幅増加見込み。
同じく3日発表の3月米ISM非製造業景気指数の予想は52.8と前回の52.6から小幅上昇見込み。前回2月は製造業の生産にあたるビジネスアクティビティや新規受注が好調でした。ただ前回は雇用が50.5から悪化し、節目も割り込んで48.0まで低下しています。
こうした状況を踏まえ、今回の雇用統計です。
非農業部門雇用者数の予想は前月比+20.3万人と、前回から伸びが鈍化見込みです。ただ水準的には節目の20万人をクリアしており、まずまずという印象です。失業率は前回と同じ3.9%見込みです。
平均時給は前月比+0.3%、前年比+4.1%。前月比は前回より強く、前年比は前回から弱めです。
総じてまずまずという印象。雇用部門の悪化などによる早期の利下げ開始期待などは予想前後では起きないと見込まれます。6月の利下げ開始期待がやや後退するようだと、ドル買いにつながる可能性があります。
MINKABU PRESS 山岡和雅

執筆者 : MINKABU PRESS
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