パンデミック後の人員削減に変化 真っ先にホワイトカラーが標的
景気後退への懸念で企業の人員削減の発表が相次いでいる。ただ、今回は通常のパターンとは異なる様相を見せているという。それは、ホワイトカラー労働者が真っ先に打撃を受けている点。ITや法律、科学、金融などの分野での専門職の需要が急減しており、パンデミック下でスタッフを増員したIT企業はプロジェクト終了や縮小に伴い人員削減に踏み切っている。
アマゾン<AMZN>は1万人削減を発表したが、数十万人に上る倉庫作業員は対象外。メタ<FB>も約1万1000人を削減するが、対象は人材採用チームとビジネスチームに集中している。フォード<F>やウォルマート<WMT>も現場スタッフではなく、オフィス勤務者が標的になっている。
これまでの景気後退局面では、鉱業、製造業、建設業などがまず人員削減に踏み切り、その後に航空やホスピタリティーが続く。景気後退がさらに深刻になれば、ようやくホワイトカラーを減らし始める。
だが、今回は違う。求人件数が最も減速しているのは、ホワイトカラーを主体とする業界。FRBが利上げを加速し、景気への懸念が高まった6月以降、IT分野の求人件数は36%減少。ビジネスサービスは32%減、科学・法律は約31%減となっている。一方、旅行業界の求人件数は僅かだが増加し、食品と小売りは4-5%の減少に留まった。
ホワイトカラーの人員削減はまだ数字に反映されておらず、米雇用指標は好調な数字が続いている。求人件数は相変わらず多く、この日の米雇用統計も非農業部門雇用者数が26万人増と予想を上回った。雇用者数の伸びは徐々に鈍化しているものの、歴史的な水準からすると依然として高い水準。
パウエルFRB議長は先日の講演で、賃金の伸びはFRBの2%のインフレ目標に見合う水準を上回っていると述べていた。求人数が就労可能労働者を約400万人分上回っており、求人倍率は約1.7倍だと指摘。
「多くの企業が前のめりになっていた分、調整が必要だ」といった声も聞かれる。パンデミックは信じられないほど厄介な力学をもたらした。IT企業は価値や需要を大きく膨らませ、生産性や、生産に対する論理的な消費率を遥かに超えるスピードで人材を採用してしまった。
いずれ製造業や建設、小売りなどに波及する公算は大きい。しかし、それでも、ひっ迫した労働市場の余波は残り、企業は人員削減の標的をより正確に見定め始める可能性が高く、優秀な人材は引き留めようとする段階に入って行くという。
執筆者 : MINKABU PRESS
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