為替相場まとめ11月7日から11月11日の週
7日からの週は、ドル相場が大幅に下落した。米消費者物価指数が予想以上の伸び鈍化となったことが背景。前週には米利上げペースの鈍化観測やターミナルレートの引き上げなど今後の米金融政策について様々な見方が交錯した。前週末の米雇用統計では、雇用者数がしっかりと伸びる一方で、失業率が予想外に悪化したことに市場はドル売り反応を示していた。そして、次の焦点は10日発表の米消費者物価指数となった。事前のマーケットはドル売りに対する調整でややドル高方向に振れた。しかし、結果は前年比+7.7%、コア前年比+6.3%とそろって予想以上に伸びが鈍化した。ドル相場は急落。特に、ドル円は146円台から140円台まで、約6円幅の大幅下落となった。米債利回りは急低下、ユーロドルやポンドドルなど各主要通貨でドルが売られた。短期金融市場では12月FOMCでの50bp利上げを織り込む動きが強まった。利上げぺース鈍化期待が好感されて、10日のNY株式市場ではダウ平均が1200ドル高となった。ただ、ドル円の下落スピードは速く、クロス円は円高方向に押されている。金曜日にはさらにドル安が進行。ロンドン時間にドル円はあっさりと140円の大台を割り込むと138円台へと下落。ユーロドルは1.03台、ポンドドルは1.18台へと上昇してこの週の取引を終えた。米中間選挙は話題にはなったものの、相場への影響は限定的だった。上院で勢力が拮抗、下院では共和党が優勢となっているが、まだ議席数は定まっていない。
(7日)
東京市場は、ドル買いの動き。週明けオセアニア市場でドル高方向にマド空けして取引を開始した。ドル円は146.60前後から一気に147.20台へと上昇。中国政府がゼロコロナ政策を堅持すると5日に表明したことに反応した。先週末のドル売りへの反動もあったようだ。ただ、買い一巡後は146.70台まで押し戻される場面があった。その後は再び147.30台に上昇。週明けの香港株式市場が堅調な動きとなり、リスク警戒の動きが後退した。ユーロドルは0.9900付近まで値を落として取引を開始。その後は0.9950付近まで反発。午後も底堅く推移した。ユーロ円は早朝に146円付近から145.50近くまで下落したあとは、146.40近辺へと反発した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。先週末の米雇用統計後の流れを引き継ぐ形。欧州株は売りが先行して取引を開始したが、米株先物のプラス圏回復とともに下げを消している。特に、独DAX指数は1%超高と堅調。先週末の米雇用統計では雇用者数が予想以上に上昇したが、失業率が悪化しており、市場には米利上げペース鈍化観測が再燃した経緯があった。12月米FOMCでは50bp利上げが6割程度織り込まれている。米債利回りが小幅上昇から低下に転じる動きもあって、ロンドン時間はドル売りが広がっている。ドル円は147円台半ばまで買われたあとは146.40台まで下落。ユーロドルは0.9920台まで小安く推移したあとは上昇に転じ、一時1.0007近辺まで買われた。ポンドドルは1.13台割れとなったあと、買いが強まり1.1470近辺まで高値を伸ばした。ポンドは対円や対ユーロでも堅調。ポンド円は166円台後半から168円台乗せ。ユーロポンドは0.8790付近から0.8710付近へと下落。この日は目立った新規材料はみられず。
NY市場は、ドル売りが優勢。ドル円は一時146円台前半に値を落とした。先週末の米雇用統計は強い内容だったものの、市場はリスク選好の雰囲気を強めた。週明けもその流れが続いている。ユーロドルはパリティ(1.00ドル)付近まで上昇。目先は、パリティが維持できるか否かと、100日線が来ている1.00台半ばが上値メドとして意識される。ポンドドルは買い戻しが続き、一時1.14台後半まで戻した。きょうの上げで21日線を再び回復している。今週は明日の米中間選挙と木曜日の米消費者物価指数(CPI)に注目が集まっている。米中間選挙はドルに下降リスクをもたらすとの指摘がある。下院は共和党が勝利しそうな気配だが、上院は世論調査が拮抗している。下院での共和党の勝利だけであれば、市場も織り込んでおり、ドルへの影響は比較的限定的になるが、上下両院とも共和党となれば、ボラティリティが高まる可能性も。
(8日)
東京市場で、ドル円は146円台での取引が続いた。朝方には円買いが優勢となり、146.32近辺まで下落。その後はすぐに買い戻されて下げを解消。146円台半ばから後半で揉み合った。午後には146.81近辺まで買われた。昨日大きく上昇したクロス円は高値圏もみ合い。NY市場午後に147円ちょうど前後を付けたユーロ円は147円付近では上値が重くなり、午後に至るまで146円台後半推移が続いた。ユーロドルは前日海外市場で1.0030台まで買われたが、東京市場では1.00台前半から上値重く推移し、午後には一時1.0000割れとなる場面があった。全般に動意薄の展開となっていた。
ロンドン市場は、円買いが優勢。このところ連騰していた香港株がこの日は反落。中国で再び新型コロナ感染が拡大していることが重石。また、米中間選挙の結果を見極めたいとのムードや、10日の米消費者物価指数を控えたポジション調整の動きも指摘された。ドル円は146.93近辺まで買われたあとは、売りに転じて安値を146.15近辺まで広げた。ユーロ円は146円台後半から前半へと下げ、安値を146.13近辺に更新。ポンド円も168円台半ばから167.50付近へと下押しされている。ただ、欧州株や米株先物は売り先行も、次第に下げ渋っており、リスク回避の動きは一服。デギンドスECB副総裁やナーゲル独連銀総裁は、第4四半期や来年第1四半期の経済鈍化を示唆しつつも、利上げ継続姿勢を堅持していた。また、ピル英中銀チーフエコノミストは、利上げの必要性を示しつつも、前倒しについては懐疑的。トラス前政権時の混乱を受けて、今後のある時点で、より広範な経済見通しについて考慮する必要性を指摘した。ドル相場は東京市場からの調整的なドル高の動きが先行。ユーロドルは0.9973近辺まで下押しされたが、足元では下げ一服。一方、ポンドドルは1.1445近辺まで下押しされた後の反発は限定的で、再び下値を試している。
NY市場では、リスク選好の動きでドル売りが加速した。ドル円は戻り売りが加速し、ストップを巻き込んで145.30円付近まで下落する場面があった。21日線を下回っている。ユーロドルは1.00台後半へと上昇。10月には上値を抑えていた100日線に到達している。ポンドドルも買い戻しが強まり、節目の1.15ドルを一気に回復。ストップを巻き込んで1.16付近まで急上昇した。再び21日線を上放れている。米中間選挙待ちとなるなかで、市場では共和党が圧勝した場合、民主党バイデン政権の政策実行が今後難航することが予想されている。将来的には米経済の急減速とともに、FRBには金融緩和圧力がかかることが警戒されるという。きょうは英中銀のピル・チーフエコノミストの講演が伝わっていた。英経済はリセッション(景気後退)に向かっているとの認識を示していたが、労働市場は依然としてタイトが状況が続いていると言及。パンデミックで60万人以上の人々が労働市場を一旦脱却したが、完全に戻り切ってはおらず、雇用主も賃金を上げざるを得なくなっているという。それは追加利上げの必要性を示唆するとみられているもよう。現在のところ、次回12月の英中銀金融政策委員会(MPC)では0.50%ポイントの利上げ期待が有力。
(9日)
東京市場で、ドル円は145円台での振幅が続いた。米中間選挙で予想外に民主党が健闘しており、散発的なドル買いを誘っていた。朝方はドルが軟調で145.20付近まで下落。開票作業が続くなかで、民主党優勢の州の報道で145.80台まで買われた。共和党優勢の報道では再び145.20割れまで反落。午後には再びドル買いが優勢に。共和党の圧勝ムードが広がっていた下院で、意外にも接戦となっている。上演は互角の戦いが続いている。ユーロドルも方向感がなく、1.00台後半での推移が続いた。ユーロ円は146円台でドル円とともに振幅した。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。明日の米消費者物価指数の発表を控えて、調整の動きが入っている。株式市場でも欧州株や米株先物が反落。中国での新型コロナ感染拡大を受けて上海・香港株が下げたことも調整ムードを誘った。注目の米中間選挙では共和党が早くも下院での勝利を宣言。一方、上院では依然として民主党との勢力が拮抗している。民主党の善戦も伝えられているが、バイデン政権と米議会とのネジレ現象となる公算が高まっているようだ。ドル円は前日のドル売りを受けて安値を145.18近辺まで広げたが下値は堅く、145.90近辺まで反発した。ただ、145円台からは離れず神経質な振幅を繰り返している。ユーロドルは1.00台後半から前半へと軟化、ユーロ円は146円台後半から前半へと軟化。ポンド売りが目立っており、ポンドドルは1.15台割れから1.14台前半へ、ポンド円は168円付近から166円台半ばまで下落。ポンドは対ユーロでも売られている。豪ドルなどオセアニア通貨も安く、リスク動向に敏感な通貨に弱い動きがみられた。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は146円台を回復している。午後には146.80近辺まで買い戻された。この時間になっても米中間選挙の結果は未だ確定していない。上院は拮抗しており、下院は予想通りに共和党が優勢となっているが、民主党も善戦しており、予想ほどの差は拡大していないようだ。市場からは、米中間選挙の結果が米財政政策や金融政策に重大な影響を与えることはないとの見解も出ている。市場の関心はむしろ、明日の10月の米消費者物価指数(CPI)に移っているのかもしれない。12月FOMCでの利上げ幅に対する見方にとって重要な指標となる。ユーロドルは戻り売りに押された。パリティ(1.00ドル)付近まで下落している。ロシアのショイグ国防相がロシア軍に対して、ウクライナ南部の都市ヘルソン市からの撤退を命令したと伝わり、買いが強まる場面が見られたものの、一時的な動きに留まった。ポンドドルは1.13台へと急速に下落。21日線を下回った。 市場からは、英労働市場は依然としてタイトな状況だが、労働者需要の鈍化に伴い2023年には緩むとの声がでていた。ここ数カ月の求人数の減少で労働市場の圧迫感がすでに小さくなっていることを示す兆候があるという。
(10日)
東京市場は、ややドル売りの動き。前日海外市場で進行したドル高に対する調整が入っている。ドル円は146円台半ば付近からじりじりを値を下げた。午後には146円割れ目前まで軟化。中国での感染者拡大報道が、同国のゼロコロナ政策緩和期待が後退。リスク警戒の中国株・香港株売りが優勢となった。ユーロ円は前日NY市場で一時147円台をつけたが、その後は上値を抑えられている。東京市場では146円台前半まで軟化している。ユーロドルは0.99台後半から1.00台前半へとじり高。総じてドル売り優勢となったが、新規材料はみあたらず、米雇用統計待ちとなるなかで、ポジション調整が入る形となっていた。
ロンドン市場は、米消費者物価指数発表を控えてドル買いが優勢。米10年債利回りは4.06%付近に低下したあとは、4.11%付近へと上昇、前日終値水準を上回った。ユーロドルの下げが主導し1.0043近辺を高値に、パリティ(1.00)を割り込むと、0.9937近辺まで安値を広げている。ドル円は連れ高となって146.59近辺に高値を伸ばしている。ポンドドルは1.14台が重くなっており、1.1360台から1.1390台での揉み合い。ドル指数は前日から一段と上昇。また、ユーロ売りの面も。ユーロ円は146円台後半から145円台後半へと下落。ユーロポンドは0.88台乗せに買われたあとは、売りに転じて0.87台前半に下押しされている。この日公表された最新のECB経済報告では、インフレ抑制のために今後も利上げする必要性が示された。ただ、欧州経済が第3四半期以降、来年初頭まで弱体化することも指摘されていた。エストニアの首相は、ECBは利上げに関して過度な行動を控えるべきだ、と経済状況に対するいら立ちを隠せなかった。
NY市場では、ドルが急落。10月の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことで、FRBの利上げペース縮小期待が一気に高まった。米CPIは総合指数が前年比で7.7%に低下したほか、特に市場が注目しているコア指数が前年比6.3%に低下していたことは市場に驚きを与えたようだ。米CPIを受けて短期金融市場は、12月FOMCでの0.75%ポイントの利上げ期待を大きく後退させ、0.50%ポイントの利上げ期待が大きく上昇。ドル円は指標発表後に節目の145円をブレイクし、ロング勢の見切り売りが加速。モデル系の売りも巻き込んで、取引終盤には140円台前半まで急落した。ユーロドルは買い戻しが強まり、1.02台まで上昇、100日線を上放れた。ポンドドルも1.17台まで急伸し、100日線に顔合わせした。ドル相場は米インフレのピークアウト観測を受けて下落したが、欧州や英国ではインフレが高止まりしており、今後の動向が注目される。
(11日)
東京市場では、前日のドル急落に対する調整が入った。ドル円は前日の米CPIの伸びが予想を下回ったことで、146円付近から140円台前半まで急落した。きょうは買戻しの動きが入り、午前中に142.50手前まで反発。しかし、その後は再び上値を抑えられて141円台半ばへと沈んでいる。クロス円も同様に買戻しが入り、ユーロ円は145円ちょうど付近、ポンド円は166円台乗せ水準まで反発した。午後にはそれぞれ144円台、165円台へと再び軟化している。日経平均は前日の米株急騰を受けて買われ、817円高で取引を終了した。ユーロドルは1.01台へ小緩んだあとは再び1.02台乗せ。ポンドドルも1.16台前半まで軟化したあとは1.17台を回復。ドル売り基調は維持されている。
ロンドン市場では、ドル円が再び急落している。東京市場で142円台半ばまで反発したあとは、再び売りが強まっている。前日安値140.20付近を割り込むと、一気に売りが加速。139円台割れから138.78近辺まで安値を広げた。前日の米消費者物価指数の伸び鈍化を受けたドル売り圧力は幅広く観察されており、ユーロドルは1.0280近辺、ポンド円は1.1774近辺まで高値を伸ばしている。ただ、ドル円ほどのドル売りスピードはみられず、クロス円が急落。ユーロ円は144円台から一時142.57近辺、ポンド円は166円付近から一時163.07近辺まで下落した。売り一巡後は売買が交錯する神経質な展開となっている。米株先物や欧州株は引き続き堅調だが、上げ幅を縮めるなど週末を控えた調整の動きも散見される。このあとのNY市場はベテランズデーのため米債券市場は休場となる。前日からの勢いでドルは売られているが、やや手掛かり難の面もある。英第3四半期GDPは前期比-0.2%とマイナス成長に陥ったが、市場予想は上回った。欧州委の秋季経済予測では、来年の成長を大幅に下方修正してわずか0.3%とした。
NY市場は、ベテランズデーのため米債券市場は休場、銀行は休業日。手掛かり難となるなかで、前日からのドル売りの流れが継続した。ドル円は138円台半ばへと下落。ユーロドルは1.03台後半、ポンドドルは1.18台半ばへと買われた。ミシガン大学消費者信頼感は予想以上に低下した。1年先のインフレ期待が一段と上昇したことが背景。
執筆者 : MINKABU PRESS
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