ドル円は一時150.30円近辺まで上げ幅を伸ばす=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は150.30円近辺まで上げ幅を伸ばした。序盤は株高・ドル売りの動きが先行したものの、米株が伸び悩んだことで、後半にドル買いの動きが復活した。財務省による介入への警戒感も強くある中で、149円台半ばまで下落する場面も見られていたが、買い戻しが強まり、150円を突破している。
財務省の方針はあくまで急激な変動には対応するという姿勢で、ドル円を押し下げようという意図はない。それが米国とのお約束でもあろう。そのような中で、タカ派なFRBと慎重な日銀との格差拡大を材料に、もう一段の上げを期待した買い意欲は強い。
ただ、米大手金融からは、米インフレ圧力はすでに緩やかになりつつあり、インフレは短期的に低下する可能性があるとの見方も出ている。米インフレは9月の8.2%から12月には6.8%まで低下し、来年の9月には3.2%まで低下が予想されるという。
インフレ鈍化期待の背景として、主に2つの力が働くと指摘。第1に、パンデミックによる歪みが緩和されつつあること、第2に、FRBの引き締めによる大幅なドル高と住宅ローン金利上昇が物価を押し下げるという。そのほか、FRBが来年初めにかけて、さらに政策を引き締めようとする中、現在のタイトな状況にある労働市場も緩むと見込んでいるようだ。
ユーロドルも伸び悩んだものの、序盤は買い戻しが優勢となっていた。21日線がサポートされる格好となっているが、下げトレンドの転換には遠く及ばず、上値には慎重な声が多い。
ECBが来週に理事会を開催するが、利上げのほかに、量的引き締め(QT)を議論する可能性が高い。金利については、0.75%ポイントの利上げが有力視されている。一方、QTについては今回よりも12月のほうがより可能性が高いとの見方も出ている。ECBは来年初めから資産買入プログラムの保有額を毎月約100億-200億ユーロのペースで減少させる可能性があるという。
ポンドドルも一時1.13ドル台まで上昇する場面が見られたものの、後半になった戻り売りが強まり、1.12ドルちょうど付近まで下落。きょうはトラス首相の辞任が発表された。経済対策にまつわる混乱の責任を取った格好。一部報道ではジョンソン前首相が立候補を表明すると伝わっていた。
英政府が大型減税を含む経済対策を後退させて以来、英国債市場は回復している。それにもかかわらず、ポンドは脆弱なままだとの見方も出ている。英財政への信頼回復だけでは、ポンドがより持続的に反発するきっかけにはならないという。財政引き締めによる景気へのリスクや、英中銀の大幅利上げへの圧力の低下を考えると、ポンドはさらに売られやすいという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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