ドル円が一時98年8月以来の143円台乗せ=NY為替概況
きょうのNY為替市場はドル買いが続く中で、ドル円は上値追いを加速させ、一時98年8月以来の143円台乗せた。143円付近にはオプション勢の防戦売りも観測されているようだが、ロング勢に後退する気配はない。
市場からは、インフレ抑制に強硬なFRBと米エネルギーの自給自足から、今年のドルは上昇が続く可能性が指摘されている。ドルは年内一杯は上昇が続き、ここからさらに5%上昇する可能性も否定できないという。政策金利を4%近辺で維持することを望んでいるタカ派なFRBと、欧州とは異なる米国のエネルギー独立性によってドルは支えられるほか、卓越した安全通貨でもあるという。
一部からは、1985年のプラザ合意に言及する人もいるが、それが有効であるためにはFRBが金融緩和を開始する必要があるとしている。少なくとも今年については、その可能性は極めて低いという。
この日の8月のISM非製造業景気指数が56.9と2カ月連続の上昇となったこともドル買いを加速させた。インフレ圧力は引き続き緩和傾向を示す一方で、新規受注や雇用が上昇。新規受注は今年最高となった。消費習慣の変化と堅調な賃金上昇を反映しているものと思われる。海外でも需要が堅調で、輸出は約1年ぶりの高水準となった。不調が予想されていた不動産や建設も堅調だった。今回の数字は個人消費が堅調であることを示しており、明らかにFRBのタカ派姿勢を裏付ける内容とも言え、米国債利回り上昇と伴にドル買いの反応を示していた。
ユーロドルは戻り売りが優勢となり、一時0.9865ドル付近まで下落する場面が見られた。依然として下値模索が続いている状況。ユーロにとって今週の最注目は8日木曜日のECB理事会であろう。市場では0.75%ポイントの利上げが有力視され始めている。0.50%ポイントの予想もなお見受けられるが、ECBがインフレ対策として決定的な利上げを躊躇するような態度を示せばユーロは下落との見方も出ている。
ECB理事会のメンバーは最近、インフレ抑制の決意を市場に納得させるために多大な努力を払って来た。そのため、木曜日の理事会での大幅利上げへの期待は高い。ECBはユーロドルをパリティ付近に維持するために、その期待に応える必要があるという。その意味でも、木曜日の利上げの程度と将来の利上げに関するシグナルは重要になるという。
ポンドドルはロンドン時間に1.16ドル台を回復していたものの、NY時間にかけて戻り売りが強まり、一時1.15ドルを割り込んだ。ただ、対ユーロや円では上昇し、先週までの軟調な動きは一服している模様。
正式に首相に就任したトラス新首相が、政府保証が付いたエネルギー業者への融資を活用した1300億ポンドのエネルギー料金凍結計画をまとめたと伝わった。それにより、同首相が公約に掲げている減税策が最終的にインフレを悪化させるとの懸念や、エネルギー料金高騰により英経済が深刻な不況に入るとの懸念も一服している。
ただ、同首相は北アイルランド議定書に関して、EUに厳しい態度を示していることもあり、減税策による財政赤字問題への指摘もある中で、なお不透明感は根強い。来週15日の英中銀の金融政策委員会(MPC)も近づく中で、ポンドは今後数日間、さらに不安定な展開になるとの指摘も出ている。
一方、エネルギー価格を4月の水準で凍結した場合、英インフレはすでにピークに達している可能性が高いとの試算も出ている。この措置により、10月からインフレが低下し、来年4月のインフレは5%となり、現在の予想よりも6.25%ポイント低下する可能性があるという。また、企業向け価格の凍結も考慮すれば、消費者物価への波及が抑制され、インフレはさらに低下する可能性があるとしている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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