ドル円は98年8月以来の140円台に上昇 ISM指数受けドル買い加速=NY為替概況
きょうも為替市場はドル買いが加速し、ドル円は1998年8月以来の140円台に上昇した。この日発表の8月のISM製造業景気指数が52.8と前回と変わらずだったものの、予想を上回ったことがドル買いを誘発。
ここ数カ月冴えなかった新規受注や雇用指数が一気に50を回復し、総合指数は前回と変わらずだったものの、詳細は強い内容だったと言える。ただ、140円台に入ると、輸出企業などの実需筋やオプション絡みの売りオーダーも並んでいるようだ。明日の東京市場でも話題となりそうで、財務省の動きも警戒されるが、介入は口先だけに留まるものとみられる。
明日は8月の米雇用統計が発表される。非農業部門雇用者数(NFP)は30万人増が見込まれ、強かった前回からは軟化が予想されている。しかし、弱い結果だったとしても、ドルを傷つけることはないとの見方もあるようだ。今回の米利上げサイクルのピークに対するして市場は、来春に3.95%に達し、来年後半の利下げのシナリオを織り込んでいる。
8月の値動きと先週のパウエルFRB議長の非常にタカ派なスピーチを考慮すると、明日の米雇用統計が軟化しても、FRBの利上げ予想やドルを後退させる材料としては不十分だという。
ユーロドルは戻り売りが強まり0.99ドル台に下落。前日は一時1.0080ドル付近まで買い戻され、21日線が控える1.01ドルちょうど付近を試す動きも見られていた。しかし、きょうはその動きが失速している格好。目先は8月23日の安値0.99ドルちょうど付近が下値メドとして意識される。
ECBは来週9月8日の理事会でより積極的な利上げに踏み切る可能性が高い。しかし、その場合でもユーロはそれほど上昇しない可能性があるとの指摘も出ている。最近のECB理事の発言や、きのうの8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)から、ECBは0.75%ポイントの利上げを実施する可能性がある。しかし、天然ガスやエネルギーの危機にポジティブなニュースが出ない限り、ECBの利上げだけでユーロが大きく上昇する可能性は低いという。
ポンドドルも売りが加速し、瞬間的に1.15ドルを割り込む場面も見られた。2020年3月以来の安値。他のG10通貨と比較しても弱い値動きが続いているポンドだが、最近のポンド下落は英経済が直面する逆風への懸念を反映している可能性があるという。
この1週間はマクロ経済に関する大きなニュースもない中、ポンドは低調に推移している。しかし、市場はリセッション(景気後退)と高インフレが同時に起こる、いわゆるスタグフレーションへの脅威や、来週の月曜日にトラス外相が次期首相に指名される可能性が高まっているが、新政権の下での政策変更の可能性をめぐる不確実性など、他通貨と比較すると、ポンドは金利のみならず、それ以上に先行きに対する不確定要因が多い。
ISM製造業景気指数(8月)23:00
結果 52.8
予想 52.0 前回 52.8
ISM製造業景気指数(8月)
景気指数 52.8(52.8)
新規受注 51.3(48.0)
生産 50.4(53.5)
雇用 54.2(49.9)
入荷遅延 55.1(55.2)
在庫 53.1(57.3)
仕入価格 52.5(60.0)
輸出 49.4(52.6)
()は前回
米雇用統計
非農業部門雇用者数(8月)2日21:30
予想 30.0万人 前回 52.8万人
失業率(8月)2日21:30
予想 3.5% 前回 3.5%
平均時給(8月)2日21:30
予想 0.4% 前回 0.5%(前月比)
予想 5.2% 前回 5.2%(前年比)
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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