為替相場まとめ8月8日から8月12日の週
8日からの週は、ドルが売られた。前週末に発表された米雇用統計が予想以上の強い内容となったことでドル買いが広がって週明けを迎えた。注目は水曜日の米消費者物価指数(CPI)に集まった。週前半はドル高水準を維持しつつも、やや調整が入る展開だった。ただ、米CPI待ちのムードも強く、大きな値動きはみられず。米CPIは前年比+8.5%と前回の+9.1%から大幅に鈍化した。市場予想+8.7%を下回ったことで、市場では米債利回りが急落、ドル売りが殺到した。ドル円は135円付近から132円付近へと急落。戻りは133円付近までだった。木曜日の米生産者物価指数(PPI)も同様に伸びが鈍化した。ドル円は131円台後半までもう一段の下落。しかし、その後は下げ渋り133円台を回復する流れとなった。短期金融市場では次回9月FOMCでの利上げ幅観測が0.75%から0.50%へと傾いている。ただ、米金融当局者からは積極利上げ路線に変更を加えるような内容はみられず。0.75%利上げ観測も4割前後と根強い。米株式市場はインフレ緩和を好感して上昇。ドル円の下支えとなる面もあった。リスク動向に敏感な豪ドルの堅調さが目立っている。8月後半のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長講演が次の注目イベントとなっている。
(8日)
東京市場は、ドル円が底堅く推移。先週末の米雇用統計の強さを受けて、ドル円は135円台半ば近くまで上値を伸ばした。その後135円割れまで調整が入って週の取引を終え、週明けは同水準でスタート。早朝の市場で134.86レベルまで一時反落。しかし、東京勢の本格参加とともに上値をトライする動きを見せ、135.58近辺まで上昇、先週末の高値をわずかに超える場面が見られた。その後は135円台前半での推移。すでに大きく上昇した後ということや、10日の米消費者物価指数を控えて、135円台半ばからを積極的に買い上げる流れにはならず。もっとも下値もしっかり。 ユーロドルは1.01台後半推移。こちらも比較的しっかりの展開。ユーロ円は一時137.80台まで上昇。ドル円同様に先週末の高値をわずかに超えた。もっとも値幅自体は限定的。
ロンドン市場は、ドルが軟調。週明けのロンドン市場では主要な経済指標発表や金融当局者らの講演予定などは見られず、材料難。水曜日の米消費者物価指数の発表待ちとなっている。新たな手掛かりに欠けるなかで、先週末の強い米雇用統計結果を受けたドル買いの動きに調整が入る格好となっている。また、8月第2週に入って、海外勢がサマーバケーションをとっていることも動意薄につながっているようだ。ドル円は米債利回りの低下とともに上値重く推移。135円台前半から134.60付近へと軟化、この日の安値を広げている。週明けの欧州株が堅調に推移しており序盤は買われたクロス円も、次第に上値が重くなっている。ユーロ円は137円台後半から前半へ、ポンド円は163円台後半から163円台割れ水準へと反落。ユーロドルやポンドドルは売買が交錯しているが、ややドル売りの動き。ユーロドルは1.02を挟んで、ポンドドルは1.21を挟んで振幅も底堅く推移している。
NY市場では、ドル相場が上下動。ドル円は売りが先行。序盤には134.30台まで下押しされた。その後は再び135円台を回復と振幅。先週末の強い米雇用統計結果を受けて市場には米金融当局の積極利上げへの期待が高まっている。その反面、景気後退への懸念も高まっており、ドル相場は不安定に推移している。短期金融市場では、FF金利は2023年初頭に3.25-3.50%でピークを迎え、その後すぐに利下げ開始のシナリオを織り込んでいる。ただ、先週末の米雇用統計を受けてピークアウト水準が高まるとの見方もでている。米株は伸びを欠いた。ユーロドルは1.02台に乗せたが、終盤には1.01台へと反落。欧州経済の不確実性を背景にユーロに弱気な見方は根強い。エネルギー供給、景気後退の可能性、イタリアの政治不安などが重石に。ポンドドルは1.21台まで上昇する場面があったが、その後は1.20台後半と上に往って来いだった。
(9日)
東京市場は、全般に小動き。ドル円は午前中には134.67近辺まで軟化。日経平均の下げが重石となった。その後昼にかけては135円台まで買い戻されて、午後には揉み合いとなった。ユーロ円はドル円の調整売りに合わせて朝方には137.27近辺まで軟化したが、その後は137.70台まで買い戻された。ユーロドルは1.02ちょうど付近での小動きに終始。あすの米消費者物価指数の発表を前に、上下いずれもに大きな動きには慎重姿勢だった。
ロンドン市場は、対欧州通貨でドル売りが優勢。ユーロドルは一時1.0247近辺まで買われた。前日高値を上回ったが、先週末高値には届かず。その後は1.02台前半で上昇一服。ポンドドルはロンドン朝方に1.2066近辺まで軟化したあとは、1.2130近辺まで反発。その後は1.21ちょうど近辺まで押し戻された。序盤にユーロ買い・ポンド売りが入った分、ポンドの上値は抑えらえた。ラムスデン英中銀副総裁は、「政策金利をさらに引き上げなければならない公算高い、ある時点からは政策金利をかなり早く引き下げ始める必要ある事否定せず、今後、利下げと資産売却を同時に行う状況となる可能性も」などと述べた。「先週のMPCではインフレの定着を阻止するために強硬策をとらざるを得なかった」とも述べていた。利下げに関する言及があったことがポンド売りを誘っていた。ドル円は東京午後に135.16近辺まで買われたあとは、上値を抑えられている。ロンドン序盤に134.70近辺まで軟化する場面があった。クロス円は振幅もやや円安方向への動き。ユーロ円は137円台半ばから138.30付近へ、ポンド円は162円台後半から163.67近辺まで一時上昇した。欧州株、米株先物・時間外取引はいずれも上値重く推移。NY原油先物は92ドル台へと上昇。ロシア南部経由の石油供給停止が報じられていた。
NY市場は、あすの米消費者物価指数の発表待ちのムード。ドル円は135円ちょうど付近での値動きに終始した。先週の強い米雇用統計からFRBの積極利上げへの期待は強く、9月のFOMCでの0.75%ポイントの利上げの確率は70%程度で推移している。一方、米国債の逆イールドが拡大するなど、リセッション(景気後退)への警戒感も高まっている状況。そのような中で明日は米消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、その結果待ちの雰囲気も強い。ユーロドルは1.02台での推移。21日線が1.0170付近となっているが、その上の水準をしっかりと堅持し、リバウンド相場の流れを維持している。ポンドドルは1.21台に上昇してNY時間が始まったが、戻り売りに押されて1.20台へと下落。「英政府が英企業・家庭への電力供給で1月に計画停電を検討」とブルームバーグが関係者の話として報じたことがポンド売りを誘った。
(10日)
東京市場は、落ち着いた値動き。日本時間午後9時30分の米消費者物価指数(CPI)待ちとなっている。ドル円は135.30近辺まで買われたあとは、売りに転じて135円台割れとなった。午後には134.89近辺まで一段安となった。その後は135円挟みでの揉み合いとなった。ユーロ円は朝方のドル円の上昇がドル高主導だったこともあり、上値が重く138.00台から137.70台まで下げた。午後には下げも一服した。ユーロドルは1.0203-1.0219と16ポイントレンジにとどまった。米CPIの結果次第では大きな値動きとなる可能性があり、事前にポジションを傾けにくい面が指摘された。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米消費者物価指数の発表を控えて、前日海外市場でのドル買いの動きに調整が入っている。なかでもユーロドルの上昇が目立っており、1.02ちょうど手前でサポートされたあとは1.0240近辺へと上昇。ポンドドルは1.2060台から一時1.21台乗せ、豪ドル/ドルは0.6950割れ水準から0.6980付近へ、NZドル/ドルは0.6280付近から0.8320近辺まで買われた。そのなかで、ドル円は135円を挟んで売買が交錯するなかで、一時134.84近辺まで下押しされた。米10年債利回りは前日終値水準をはさんで2.76%台から2.80%付近で方向感に欠ける動き。足元ではユーロ買いの動きも入っている。ロシアが中欧への原油供給パイプラインの再開を準備しているとの報道が好感された。ユーロドルは1.0245近辺、ユーロ円は138.30近辺、ユーロポンドは0.8470近辺へと一段高となっている。
NY市場では、米消費者物価指数(CPI)の結果を受けてドル売りが強まった。ドル円は一時132円ちょうど付近まで急落。本日の高値135.30付近からは一時300ポイント超下落した。7月の米CPIは総合指数で前年比8.5%となった。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比5.9%と予想を下回っている。市場は、FRBが9月FOMCで0.75%の利上げを行うと見ているものの、その期待値は緩んでいるもよう。ただ、FRBがタカ派姿勢を変更するまではみていないようだ。米CPI発表後にエバンス・シカゴ連銀総裁やカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁の発言が伝わっていたが、いずれもこれまでのタカ派姿勢を堅持している。終盤にはドル円も133円付近まで買い戻された。ユーロドルは一時1.0370近辺まで上昇。21日線を上放れている。ただ、ユーロ自体を積極的に買い上げる説得力はないようだ。欧州は米国よりも地政学リスクにさらされている点が指摘された。ポンドドルは一時1.2275近辺まで上昇。ユーロドルと同様に21日線から上放れた。ただ、ポンドは8月に入り、G10通貨の中で2番目にパフォーマンスが悪い。
(11日)
東京市場は山の日の祝日のため休場。
ロンドン市場は、再びドル売りが優勢。ドル円はロンドン時間に入ると132.43近辺まで下押しされた。その後も上値重く揉み合っている。きょうはこのあとに米生産者物価指数が発表される。前日の消費者物価指数と同様に伸びの鈍化が予想されている。ユーロドルが堅調。前日の1.02台前半から1.03台後半まで急伸から1.0276近辺まで反落してロンドン時間に入ったが、再び買いが強まると1.0343近辺まで上昇している。足元でも高値付近から離れていない。一方、ポンドドルもロンドン序盤は買いが先行して1.21台後半から1.2246近辺まで上昇も、その後は1.22ちょうど付近へと押し戻されている。ユーロポンドに買いが入っており、ポンドの上値を抑えた格好。ユーロ円は136円台後半での揉み合いが続くなかで、一時137.14レベルまで買われる場面があった。ポンド円は162.50手前が重くなると161.72近辺まで下押しされている。ロンドン時間には目立った材料はでていないが、アジア朝方に発表された7月英RICS住宅価格が63%と予想を上回ったものの、3か月連続での低下となっていた。
NY市場で、ドル円は下に往って来いの展開。朝方発表になった米生産者物価指数(PPI)が、前日の米消費者物価指数(CPI)に引き続き、インフレの鈍化傾向を示したことで、序盤はドル売りが加速した。ドル円はストップを巻き込んで一時131円台後半まで下落したが、売りが一巡すると次第に買い戻しが膨らみ、下げを取り戻している。米国債利回りが上昇に転じたこともドル円をサポート、133円台に戻した。ユーロドルは米PPIを受けて1.0365近辺まで上昇したあと、1.03台前半へと値を落とした。1.03台は維持されており、このところの底堅い流れは維持されている。ポンドドルは米PPIを受けて1.2250付近まで買われたが、その後は1.21台へと反落。21日線を上放れる動きに変化はみられていない。米インフレ鈍化を示す新たな証拠により、市場はFRBの利上げ幅が縮小するとの期待を高めている。ただ、「高インフレは若干緩やかになったものの、問題はまだ消えていない」との慎重な声も聞かれる状況。この2日間のインフレ指標に過度に反応し過ぎで、下値ではドルの見直し買いが出たのかもしれない。
(12日)
東京市場は、ドル買いの動きが先行した。前日のNY市場後半のドル買いが再燃した格好。ドル円は午前に133.49近辺まで高値を伸ばした。その後は、米債利回りの低下をにらみながら上昇一服。133円台前半での揉み合いとなっている。ユーロドルは1.03台での取引が続いている。午前のドル買い局面で1.0305近辺まで下押しされたが、大台割れには至らず揉み合っている。ポンドドルは1.2180付近から1.22ちょうど付近で下に往って来い。いずれも前日からのドル高水準を維持しつつも、調整を交えた値動きだった。今週の米インフレ市場は伸び鈍化が示されたが、米金融当局者からは積極的な利上げ姿勢に目立った変化はみられていない。ドル相場をめぐる強弱感が対立している。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米消費者物価指数や生産者物価指数の伸び鈍化を受けたドル売りに、週末を控えて調整が入っている。東京時間にデイリー・サンフランシスコ連銀総裁が、9月会合で50bp利上げが妥当としながらも、75bp利上げの必要性についてオープンとの姿勢を示していた。市場は米金融当局者の積極利上げ姿勢に変化はないとの印象を受けていた。ただ、東京市場での値動きは限定的。ロンドン時間に入るとまずユーロドルやポンドドルに売りが入った。米債利回りが一時上昇したことに反応していた。この日発表された第2四半期の英GDP速報値は前期比マイナス0.1%とパンデミック時以来のマイナス成長となった。ポンドドルは1.22付近から1.21台前半へと下落している。ユーロドルも連れ安となり1.03台前半から1.02台後半へと軟化。ただ、ユーロ買い・ポンド売りが強まったことでユーロの下げ幅は限定的。ポンド円が162円台後半から161円台割れまで下落する一方で、ユーロ円は137円台半ばから前半で下に往って来いとなっている。その他通貨にも次第にドル買いの動きが波及。ドル円は133円台前半での揉み合いを上放れて133.70台に上昇。東京市場では堅調だった豪ドル/ドルは0.7120付近から0.7080台へと反落している。
NY市場はドル買いが強まり、ドル円も買いが優勢となった。一時133.90円付近まで上昇する場面が見られている。ただ、100日線と21日線の間での上下動に終始しており、次第に三角保ち合いに入りつつある雰囲気も出ている。
執筆者 : MINKABU PRESS
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