ISM指数受けドル買い戻し加速 ドル円は134円台まで急上昇=NY為替概況
きょうNY為替市場でドル円は買い戻しが加速し、一時134.55円付近まで上昇する場面が見られた。この日発表になった7月のISM非製造業景気指数が4カ月ぶりに上昇に転じ、予想も上回った。それを受け米国債利回りの上昇と伴に為替市場もドル買い戻しが強まっている。ドル円は134円台を一気に回復し、前日安値の130.40円付近から400ポイント急反発した格好。
7月14日の直近高値139.40円付近から、前日の130.40円付近までの下落のフィボナッチ38.2%戻しが133.85円付近に来ており、現在はその水準で推移している。この水準を突破するようであれば、50%戻しの水準が来ている134.90円付近までの上昇の可能性も高まる。ドル円は100日線にサポートされ急反転した格好となっており、再び上昇トレンドに戻せるか注目の展開が見られている。
この日のISM指数については、高インフレで米消費者マインドの低下を示す指標も数多く発表されている中、サービス業の景況感も弱い数字が見込まれていた。しかし、今回は予想外の強さを示した格好。消費者マインドは低下しているものの、雇用がまだ堅調なこともあり、実際の家計の消費支出は力強さを温存している。ただ、これまではモノへの需要がメインだったが、パンデミックによる行動制限が緩和される中で次第にサービスにシフトしている。そのため、サービス業のセンチメントはまだ底堅さを維持しているのかもしれない。
市場ではFRBの積極利上げへの期待を後退させる動きが出ているが、きょうのISM指数の結果はその期待を覆す内容。次回9月のFOMCでは0.50%ポイントの利上げが有力視されているが、0.75%の期待も一時急速に復活していた。CMEのFEDウォッチでは0.75%ポイント利上げの確率が前日の41%から53.5%に一時上昇。0.50%の確率(46.5%)よりも若干高くなる場面が見られた。ただ、終盤には戻している。
ユーロドルは戻り売りを強め、一時1.0125ドル付近まで下げ幅を拡大。本日の21日線は1.0150ドル付近に来ており、その水準を再び下回っている。きのうはペロシ米下院議長の台湾訪問で市場には動揺が走ったが、きょうはその雰囲気も一服。ただ、これをきかっけに米中の緊張が再び激化するのではとの懸念も出ている。市場からは、米中関係に好ましくない進展があれば、ユーロドルはさらに下落する可能性があるとの指摘も出ている。安全資産であるドルの需要が高まり、ユーロ圏の輸出が中国の需要に大きく依存していることが理由だという。
また、ドル安の余地は縮小して来ているように見えるが、EUとロシア関係やユーロ圏の経済見通しは依然として不透明だとも付け加えた。
ポンドドルも戻り売りに押され、一時1.21ドルちょうど付近まで下落。目先は1.20ドル台前半に来ている21日線を試す展開になるか注目される。明日は英中銀金融政策委員会(MPC)が予定。市場では足元の高インフレから英中銀はタカ派姿勢を堅持し、0.50%ポイントの利上げを打ち出すと見られている。また、量的引き締め(QT)も発表し、10月から保有国債を四半期ごとに100億ポンドのペースでの縮小を発表するとの見方も出ているようだ。
今回は金融政策報告が公表され、英中銀はおそらく短期および中期のインフレ予想を上方修正する半面、2022年の成長見通しは下方修正が予想されている。英中銀は引き続きデータに依存し、高インフレが続く場合は積極的に行動する意向を示すものとみられている。
成長リスクはあるものの、秋には12%まで高まるとも予想されているインフレと労働市場のひっ迫が、今月のMPC以降の追加を利上げをサポートするものと思われているようだ。ただ、ポンドもかなり織り込んでいる節もある中、もし、政策委員の投票行動や、金融政策報告、そして、ベイリー英中銀総裁の会見などで、景気減速を懸念し、今後はあまり積極的に行動しないことを示唆した場合はポンド売りの反応も留意される状況。利上げサイクルの速度とピークの期待値が低下すれば、ポンドドルは1.20ドルを目指すという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。