様子見気分が広がり、ドル円は１３８円台前半で上下動＝ＮＹ為替概況

　きょうのＮＹ為替市場は様子見の雰囲気が見られる中で、ドル円は１３８円台前半での上下動が続いている。これまでのリスク回避の雰囲気は一服しており、ドルも上げを一服させているものの、米株式市場に買い戻しが強まっていることもあり、リスク選好の円安がドル円の下値をサポートしているようだ。どちらのシナリオでも円は売られやすい。

　明日の東京時間に日銀決定会合の結果発表が予定されているが、現行の金融緩和維持が確実視されている。一方で明日は展望レポートも公表されるが、インフレ見通しは４月時点から上方修正が予想される一方で、成長見通しは下方修正が見込まれている。

　米経済へのリセッション（景気後退）への警戒感は根強い。米経済が今後１年間にリセッション（景気後退）に陥るリスクは４５％だという。米ＧＤＰは通年で２２年は２．０％増、２３年は０．９％増が見込まれるという。高インフレとＦＲＢの積極引き締めが経済活動を圧迫すると見ているようだ。

　ただ、景気後退は緩やかなものとなり、四半期ごとに僅かに縮小する程度だという。健全な民間部門のバランスシートが金融引き締めの影響を部分的に相殺する可能性があるとしている。一方、高水準の債務と財政支援の縮小は回復の重荷となる可能性も指摘した。２０２３年は経済活動が弱体化し、景気後退のリスクが高まるという証拠は増えている半面、ＦＲＢの引き締め政策は緩やかになる可能性が高いという。

　ユーロドルは午後に１．０１ドル台に再び下落。一時１．０１６０ドル付近まで下落した。イタリアで政権崩壊の危機が伝えられた。複数の政党がドラギ首相の支持を拒否すると報じられている。中道右派のリーグ党はきょう、ベルルスコーニ元首相率いるフォルツァ・イタリアと共にドラギ首相の政権に対する信任投票を見送る意向を示した。早ければ秋にも政権は崩壊し、臨時選挙が行われるとの見通しを明らかにした。

　市場は明日のＥＣＢ理事会に注目している。断片化（フラグメンテーション）の詳細も気になるところではあるが、政策金利についても１１年ぶりの利上げが見込まれている。ただ、理事会の１日前にもかかわらず、０．２５％ポイントまたは０．５０％ポイントで市場の見通しは分かれている状態。０．２５％ポイント利上げのほうが若干期待が高いようだが、ＥＣＢは未発表のインフレ期待のデータを背景に０．５０％ポイントの利上げを選択する可能性があるほか、大幅な利上げのほうが強力な断片化（フラグメンテーション）防止ツールに役立つかもしれないとの声も出ている。

　しかし、いずれにしても、ＥＣＢはよりタカ派なトーンになる可能性が高いという。０．２５％ポイントの利上げであれば、今後のより大きな引き上げを示唆するようなトーンになり、０．５０％ポイントであれば、１回限りの引き上げである可能性は低いというトーンが必要になるという。

　ポンドドルは緩やかな売りに押され、１．１９ドル台に値を落としている。１．２０ドル台を回復していたが、その水準では戻り売り圧力も強いようだ。本日の２１日線は１．２０４５ドル付近に来ているが、その水準に上値を拒まれている格好となっており、下向きトレンドは続いている。

　きょうは６月の英消費者物価指数（ＣＰＩ）が発表になっていた。総合指数は前年比９．４％とインフレは悪化が続いているが、食品とエネルギー除くコア指数は僅かに低下していた。これを受けて市場の一部からは、前途に明るい兆しとの見解も出ている。財・サービス価格上昇の基礎データは、英国内で発生するインフレに問題がないことを示唆しており、コア指数は今後数カ月間、緩和が続くことが予想されるとしている。

　一方、それにもかかわらず、ポンドがさらに下落したり、英中銀が今後のいずれかの政策委員会（ＭＰＣ）で０．５０％ポイントの利上げを余儀なくされる可能性は依然として残っているという。

英消費者物価指数（6月）15:00
結果　0.8%
予想　0.5%　前回　0.7%（前月比)
結果　9.4%
予想　9.3%　前回　9.1%（前年比)
結果　5.8%
予想　5.8%　前回　5.9%（コア・前年比)

MINKABU PRESS編集部　野沢卓美