ドル円は24年ぶりに136円台に上昇 ドルは上げ一服も円安が押し上げる=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は上値追いが続き、24年ぶりに136円台に上昇した。136.70円付近まで上げ幅を拡大。日銀の緩和継続による各国との金融格差拡大観測が引き続きドル円をサポートしている模様。日本も物価が上昇しているが、海外と比較すれば低水準に抑制されており、来年は世界的にリセッション(景気後退)に陥るとの観測も広まる中、日銀は当面動きづらいとの見方も出ているようだ。
一方、ドルの方は上げが一服しているものの、ドル高期待はなお根強い。米国ではガソリン税が一時的に停止される可能性があり、それはドルを下支えする可能性があるとの指摘も聞かれる。イエレン米財務長官はきのう、ガソリン税の一時停止はインフレ対策として検討に値するとの見方を示した。調査に基づくと、連邦ガソリン税を引き下げるよりも、相対的に高い州の燃料税を引き下げた方が恩恵が波及しやすいとも説明した。高い燃料価格は米家計にとってかなりの重荷になっているとも語った。
ただ、ガソリン税減税がどのように展開され、どの程度の財政刺激策となるのかは未知数だがこの夏のドル高を支援する一つの要因になるはずとの声も市場から出ている。バイデン大統領は週内にもガソリン税減税を支持するかどうかを決定する見込み。
ユーロドルはNY時間に入って伸び悩んだものの、買い戻しの流れは続いており、一時1.05ドル台後半に上昇する場面も見られた。ユーロドルを買い戻す直接的な材料は見当たらないが、ECBの利上げに対する期待感の高まりがユーロドルの下値をサポートしている模様。ただ、前週は瞬間的に1.06ドル台に上昇する場面が見られたが、上値にはなお慎重な雰囲気もうかがえる。目先は21日線が1.06ドル台前半に来ており、その水準まで戻せるか注目される。
そのECBの利上げだが、市場では7月に0.25%ポイントで利上げを開始し、9月は0.50%ポイントの大幅利上げを見込む声も出ている。しかし、レーンECB理事はこの日の講演で、9月の利上げ幅はまだ決まっていないと発言。マイナス金利がもはや適切でないことは明確だが、景気が予想以上に減速すれば、金利の軌道もスローダウンすると語った。
ただ、市場からはユーロドルはパリティ(1.00ドル)まで下落するとの見方も少なくない。低成長下の高インフレ、いわゆるスタグフレーションが常態化した場合、今後数年でユーロドルはパリティを下回る可能性があると指摘している。2007-08年の金融危機以来、世界の投資環境は中程度の成長と低インフレを特徴としてきた。しかし、これが複数年に渡るスタグフレーションに移行する可能性があるという。その場合、特にユーロドルにおけるドルの優位性がしばらく続く可能性があり、0.80-1.00ドルの領域に向かって行く可能性もあるという。
ポンドドルも買い戻しの流れを堅持し、一時1.23ドル台まで戻す場面も見られた。ただ、こちらも上値には慎重な雰囲気もうかがえる。明日は5月の英消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、その結果を見極めたい雰囲気もあるようだ。総合指数で前年比9.1%の上昇が見込まれている。
市場からは、英中銀が市場の利上げ期待を容認する可能性があるとの指摘が出ている。前日の英中銀のマン委員の発言を指摘。マン委員は、「インフレを押し上げるポンド下落を食い止めるため、英中銀はより積極的に金利を引き上げる必要がある」と主張した。英中銀が利上げでFRBに遅れを取ると、ポンドドルが脆弱になり、英インフレ圧力に拍車をかける可能性があることを示唆している。
英中銀はインフレと為替レートを同時にターゲットにすることはできない。そのため、ポンドドルが1.20ドルを下回ればやみくもに利上げすることはない。しかし、マン委員の発言は、英中銀は沈黙を守り、英中銀の引き締め期待がFRBの引き締め期待に追随することを容認する可能性があるということだと指摘した。市場は現在、英中銀は政策金利を現行の1.25%から、年内に2.75%か3.00%程度まで引き上げると見込んでいる。年内の英中銀金融政策委員会(MPC)はあと4回予定されているが、すべてで利上げを実施し、そのうちの2回ないし3回は0.50%ポイントの大幅利上げを見込んでいる計算になる。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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