2021年のドル円見通し~当面はリスク選好の流れからのドル売りが優勢に
明けましておめでとうございます。
昨年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に振り回された歴史的な都市となりました。年が明けて今年はどんな1年になるでしょうか。年頭、今年のドル円の見通しについて見ていきたいと思います。
昨年のドル円は中国に端を発した新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に広がり、パンデミックを巻き起こす中で大混乱の相場展開となりました。
年明けから2月ごろまでは好調な米経済への期待感などが広がる中でドル高円安の動きとなり、ドル円は112円台に上昇。その後パンデミックの混乱の中でパニック相場となり101円台まで急激に下落。しかし安値を付けた後は一転してドル買いが進み111円台半ばまでと、ごく短期間に10円以上の値幅での振幅を見せました。2018年、2019年の一年の値幅が10円に届いていないことを考えると、どれだけ大きな動きだったかがわかります。振幅を経て111円台半ばを付けた後は、じりじりとドル安基調が進み、ある程度の振幅はありましたが。年末までドル安の流れが続いています。
2021年も当面はこうしたドル安の流れが続くと期待されます。新型コロナワクチンの接種が12月から英・米・ユーロ圏で始まり、アフターコロナに向けた期待感が広がっています。
日本でのワクチンの接種開始は3月ごろと予想され、新興国などではより遅くなる可能性があるなど、世界的にワクチンの供給が広がるのはまだ先。また、先月以降英国を中心に感染が広がる感染力が高い新型コロナの変異種の問題もあり、警戒感はまだ継続しています。
冬に入って感染拡大第3波の動きも世界的に深刻化しており、日本では年の瀬12月31日に新型コロナの新規感染者数が4520人と過去最大を大きく更新。世界的にも感染拡大の動きが強まっており、米国では12月に入って一日当たりの新規感染者数が20万人を連日のように超える日が続き、最大で25万人に迫る日も見られました。なお米国の感染者数は年末時点で1997万人と2千万人に迫っており1月初めの大台超えが確実となっています。
しかし、こうした状況にありながら世界的な株高が進むなど、リスク選好の流れが強まっています。
日本の株式市場も日経平均株価が29日に2万7602円52銭とバブル後の最高値を記録。大納会も2万7444円17銭と年末としてはバブル後の最高値で引けています。米国の株式市場もダウ平均株価が12月31日に3万606ドル48セントと史上最高値で引けるなど、株高の動きが鮮明となっています。
新型コロナワクチンの供給が医療者などを中心に米国や英国などで進んでおり、今後の状況の落ち着きが期待されていること、年末に成立した米追加経済対策など、世界的に政府・中銀当局者による経済再生に向けた積極的な対応がとられていることへの期待感などがリスク選好につながっています。
バイデン新政権下で、トランプ政権以上に経済対策に力が入ると期待されていることもリスク選好を支える格好となりました。
リスク選好の動きは円売りにも作用しますが、新型コロナ以降リスク選好はドル売りにより強く働いています。パンデミック下で流動性が高く信頼性もあるドルに世界中から資金が流れ込んだことにより、ドルに資金が集中しすぎており、リスク選好の動きが強まるとその調整からのドル売りが広がる展開となっています。また、米FRBの緩和政策により米短期金利はもとより、米国の長期金利も低迷。当面低い水準で推移すると見込まれている中、金利面での期待ができない米ドルは、リスク選好局面で収益を求める動きが強まると、ドル売り他通貨買いを誘いやすいという面もあります。
2021年に入っても当面は警戒と期待の交錯する展開が続くとみられますが、市場は現状の懸念よりも先行きの期待感で動くことが多いことを考えると、先進国で医療崩壊の動きが強まるなどのよほどの事態が生じない限りは、期待感からのドル売りが市場をリードすると見込まれるところです。
クロス円を中心にリスク選好の円売りも入るため、ドル円の下げはゆっくりとなりそうですが、今後100円割れが迫る展開が見込まれるところ。ここ5年の最安値である98円台を割り込む動きも十分に現実味があると見ています。
こうした流れが反転するのは、ワクチンの普及などで世界的に新型コロナの脅威が沈静化する目途がしっかりと見えたときだと思われます。状況がある程度正常化してくると、米国にしても現状の緩和策に対する調整の意識が広がっていきます。実際にFRBが行動に移すのは2022年以降になると思われます。ただ、市場の期待感が先行して広がると、米長期金利の上昇を伴ってのドル買いが強まると期待されるところです。夏以降の可能性が高いですが、アフターコロナの動きが本格化するタイミングを見極めたいところです。年末時点ではすでに反転が進みドル高円安となっている可能性は十分にあると考えています。
※山岡和雅個人の見解です。為替や、その他いかなる商品について売買を推奨するものではございません。
MINKABU PRESS FX情報担当編集長 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。