第1段階の合意は年内はない可能性との報道 議事録の反応は限定的=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は買戻しが見られ、21日線が控える108.75円付近をうかがう動きを見せていた。NY時間に入って米国債利回りの下げが緩んでいたことも買い戻しに繋がっていたものと思われる。
ただ、依然として米中貿易協議の動向に関心が集中する中、早期に合意できるのか、市場には不透明感が高まっている。 ロイター通信が米当局者の話として、米中貿易協議での第1段階の合意は年内はない可能性があると伝えたことで一気に戻り売りが強まる場面も見られた。
また、悪化する香港情勢に関して米上院がきのう、香港人権法案を全会一致で可決した。一国二制度が機能しているかどうか米政府に毎年の検証を義務付け、人権を侵した中国政府関係者らに制裁を科す内容。これに対して中国からも反発の声が高まっており、貿易協議に影響が出ないか不安視しているようだ。
きょうは夕方に下院でも投票が行われる予定となっており、こちらも全会一致であれば、中国との貿易協議を考慮し、トランプ大統領が拒否権を発動しても、議会の3分の2以上が再可決し拒否権を覆せば法案は成立する。中国の強硬な反発は必至。
午後になって本日注目のFOMC議事録が公表され、「10月の利下げ後、金利は適切と大半が判断」と報告。10月のFOMC以降のパウエルFRB議長や、そのほかのFOMCメンバーが講演などから、既に市場が得ている見方とほぼ相違はなく、無難な通過となった。市場も2020年9月の1回の利下げを織り込む動きで変化はない。
ユーロドルは1.1070ドル付近での推移。NY時間に入って強含む場面が見られ、21日線が控える1.1080ドル近辺まで上昇したものの上値を抑えられている。ドルロングの調整が見られる中、ユーロドルも買い戻しが優勢となっているが、1.11ドル台には依然として慎重。直近の指標からは下げ止まりの兆候も見せているものの、ユーロ圏の景気の先行きへの不安感は根強く、ECBの追加緩和への期待感も強い。
ただ、一部からは来年末までにユーロドルは1.19ドルまで上昇する可能性も指摘されている。近年の米金利上昇や貿易問題からのリスク回避、そして、本国回帰の動きがドルを支えていたが、来年の米成長率と金利水準は他国と接近し、大統領選と関税の影響が弱まる前の不確実性を考慮すれば、ドル安の可能性も高いという。
目先は1.1080ドル付近の21日線と1.1090ドル付近の100日線を突破し、1.11ドル台を回復できるか注目される。
ポンドドルは1.29ドル台前半での推移。ロンドン時間には1.28ドル台まで下落していたが、NY時間に入って1.29ドル台に戻している。前日に総選挙に向けた最初のTV討論会が行われた。ジョンソン首相と野党・労働党のコービン党首のどちらが勝利したかの世論調査は五分五分といった状況。保守党が第1党にはなるものの、単独過半数には届かない可能性も示唆しているとしてポンドは売りが出ていた。
ただ、秩序あるEU離脱への期待感は根強く、ポンドをサポートしており、ポンドドルの21日線は1.2880ドル付近に来ているが、その水準は維持されている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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