【来週の注目材料】米小売売上高は3カ月ぶりプラス圏回復へ
16日に4月の米小売売上高が発表されます。前回、前々回と前月比マイナスとなっていますが、今回はプラス圏の回復が期待されます。
米国は個人消費がGDP全体に占める割合が7割弱(2022年GDPで68.2%)と、他の先進国(日本は55%前後)よりも高くなっており、個人消費が経済を支える構造となっています。それだけに個人消費動向を示す小売売上高は注目を集める指標になっています。
前回3月の小売売上高は全13業種中8業種がマイナスと、幅広く売り上げの低下が見られました。特に厳しい減少となったのがガソリンスタンド売上の前月比-5.5%です。小売売上高全体に与えた影響(寄与度)は-0.46ポイントと、同項目だけで0.5%近く押し下げた形です。総合小売、自動車及び同部品などの下げも目立ちました。
ただ、これらの売り上げの減少は消費の減退とは言い切れません。ガソリンスタンド売上に関しては、ガソリン価格の下落の影響が大きいと見られます。2月から3月にかけてのガソリン価格は消費者物価指数(CPI)ベースで前月比-4.6%となっています。米国ではNY市内などごく一部を除いて車が生活必需品であり、ガソリンは価格の変化に対する消費の変化が起きにくい商品だけに、価格の低下が売り上げの低下につながります。
自動車及び同部品に関しても、サプライチェーン問題の後退を受けた半導体価格の下落と供給増による自動車価格の下落が影響していると見られます。2月から3月の中古車価格は同じくCPIベースで-0.9%となっています。
両項目は3月から4月にかけてプラス圏を回復しており、今回の小売売上高を押し上げてくると期待されます。その為、今回の予想は前月比+0.8%、自動車を除くコアが+0.4%となっています。
今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、利上げ打ち止めが示唆されたことにより、6月のFOMCでの利上げ期待が大きく後退。その後、米雇用統計の好結果で利上げ期待が少し強まりましたが、米消費者物価指数(CPI)が予想を下回る伸びに留まったことで、再び利上げ期待が低下しています。30日物金利先物価格動向から計算された政策金利見通しを示したCMEのFedWatchツールでは、FOMC前に25%を超えていた6月の追加利上げは、FOMC後に8%台へ低下。米雇用統計を受けて再び20%を超えてきましたが、CPI後はほぼ0%に近いところまで低下しました。
ただ、12日に発表された米ミシガン大学消費者態度調査における1年先及び5-10年先インフレ見通しは市場予想を超える強さを見せました。特に5-10年先の長期見通しは3.2%と、2011年3月以来12年超ぶりの高水準となっています。
こうしたインフレ期待の高まりは追加利上げへの期待につながります。FedWatchツールでは16%程度まで利上げ期待が強まってきました。
米FRBに課せられた2大命題の内、雇用の最大化については今月の雇用統計にみられるように、かなりのところまで成功している状況。一方で物価の安定については、グールズビー・シカゴ連銀総裁が金曜日にうまくいっていないと発言しているように、依然厳しい状況です。
こうした状況で個人消費を示す小売売上高が強く出ると、雇用の強さとも合わせ、もう少し利上げしても大丈夫ではとの市場の期待につながり、ドル高になると期待されます。
その他、米債務上限問題や米地銀の経営に関する問題などのリスク材料の状況にも要注意です。
債務上限問題に関しては、来週も引き続き行われるバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長らとの債務上限問題に関する協議が注目されます。
地銀の問題については、3月のシリコンバレーバンク等に続いて今月1日に破綻したファーストリパブリックバンク(FRC)の件、さらには複数の米地銀で起きている預金流出などの問題もあって、16日に下院金融サービス委員会、17日に上院銀行委員会で、バーFRB副議長や規制当局トップ、破綻銀行前経営者らを呼んでの公聴会が開催されます。こちらに要注意です。
MINKABU PRESS 山岡和雅

執筆者 : MINKABU PRESS
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