為替相場まとめ2月6日から2月10日の週
6日からの週は、ドル買いが一服している。前週末の強い米雇用統計を受けたドル買いにやや調整が入る格好となった。パウエルFRB議長のその他米金融当局高官らの発言が相次いだが、いずれもインフレの持続性に警戒感を示していた。ただ、パウエル議長はディスインフレの兆候がある点も指摘しており、強弱感は混在した。来週の米消費者物価指数待ちの雰囲気もあった。また、円相場にとっては近々発表される次期日銀総裁人事への関心が高まった。黒田総裁に近いとされる雨宮副総裁が本線とみられているが、一部報道では白川前総裁に近い山口元副総裁についても言及があり、瞬時に円買いが入る場面があった。ユーロ対ポンド相場ではポンド買いが優勢だった。英経済については英中銀やIMFなどリセッションを警戒する論調が多かったが、英王立経済社会研究所はリセッションを回避できるとの見方を示していた。ドイツ消費者物価指数速報値の伸びは市場予想を下回った。スウェーデン中銀は予想通り50bp利上げを発表。声明では今後の追加利上げの可能性やQT開始についての言及があり、クローナ買いの反応がみられた。週末には市場のムードを一変させる報道が飛び込んだ。報道各社が日銀新総裁人事について政府は植田和男氏を起用する方針固めるとしている。黒田体制を踏襲するとみられた雨宮副総裁が総裁就任の打診を断ったとしており、市場は急速に円高方向に傾斜した。その後、植田氏の「日銀の金融政策は適切、緩和的な政策を継続する必要」との発言が報じられ、円高は一服した。
(6日)
東京市場では、日銀人事をめぐる報道で円相場が激しく振幅。ドル円は、先週末の米雇用統計が驚異的な好結果となったことを受けて131円台まで上昇して先週の取引を終えた。6日の午前2時ごろ、日経新聞がWEBサイトに政府・与党が雨宮副総裁に日銀の次期総裁就任を打診と報じたことで、一気に円売りが進んで週明け取引を開始。オセアニア市場で132.56レベルの高値を付けたドル円は、鈴木財務相が何も聞いていないと発言したことを受けて131.50台まで下落。その後132円台を回復し132.40前後まで上昇も、磯崎官房長官がそのような事実はないと否定したことで131.70台まで下落するなど不安定な値動きを見せた。その後再び132円台を回復の場面が見られたが、午後は調整もあって上値が重くなり131円台後半推移となった。ユーロ円も同様に143円手前まで値を飛ばしたあとは、乱高下している。午後には142円台前半に落ち着いた。ユーロドルは円相場の混乱を横目に先週末の下落した1.07台後半から1.08付近での揉み合い。
ロンドン市場は、根強いドル買いの動き。先週末の米雇用統計が予想を大きく超える強い結果となったことが背景。週明けのマーケットでも米10年債利回りが3.61%付近に一段と上昇、1月10日以来の高水準となっている。ドル円は日銀人事をめぐる報道で早朝に132.56近辺まで買われた後は、政府関係者らがこれを否定したことで131.52近辺まで反落する場面があった。しかし、ロンドン時間には再び132円台に乗せて132.20台へと上昇している。ユーロドルは1.08付近が重くなると1.0760近辺に安値を更新。ポンドドルは1.20台半ばから1.2022近辺に安値を更新。週明けはいずれも先週末よりもドル高水準を広げる動きとなっている。米金融当局の利上げ姿勢が長期化することが懸念されたことに加えて、トルコでは大規模地震が複数回にわたって発生、被害拡大が懸念されている。米株先物、欧州株は軟調に推移。ただ、ドル円の買いが目立つなかで、クロス円は先週末からの円安水準で推移し、ユーロ円は142円台前半、ポンド円は159円付近で揉み合っている。
NY市場では、ドルが一段と上昇。先週末の米雇用統計を受けたドルの見直し買いが続いた。ドル円は132.90付近まで一時上昇、21日線を上放れる動きとなった。米雇用統計を受けて市場では、FRBの利上げ継続観測が強まっており、米国債利回りはきょうも大幅に上昇しドル円をサポートしている。円安の動きもドル円の上げをフォロー。日本政府が日銀の黒田総裁の後任候補として雨宮副総裁に就任を打診したと報じられた。ユーロドルは1.07台前半まで下落、21日線を下放れる動きとなり昨年9月末マラの上昇トレンドに黄色信号が点灯し始めている。市場からは、「ラガルドECB総裁は先週木曜日の理事会後の会見で、ECBのインフレ対策への決意を市場に納得させることができず、そのためユーロは短期的に上昇に苦悩する可能性がある」との見方が出ている。ポンドドルは心理的節目の1.20ドルをうかがう展開。21日線を下放れており、目先は1.19台半ばの200日線を試すのかが注目されている。マン英中銀委員は「われわれは軌道を維持する必要がある」「インフレ期待に大幅な上昇リスクが依然として存在し、次の動きは据え置きよりも追加利上げになる可能性が高い」と述べていた。
(7日)
東京市場では、ドル円の上値がやや重かった。朝方に132円台後半で取引を開始したが、その後は一転してドル安・円台の動きが優勢になり、昼過ぎには132.10台まで下落。その後の戻りは限定的。昨日のドル高で1.0710ドル前後まで下落したユーロドルは昼前に1.0740台を回復。ドル買いの過熱感が警戒されたもよう。ユーロ円はドル円とともに上値の重い展開となり、朝の142円台前半から午後には142円割れまで下落。 豪中銀金融政策会合は、市場予想通り9会合連続での利上げを決定した。声明で今後数回の利上げが必要になる旨を示し、豪ドル買いが優勢となった。市場では次回3月での利上げ打ち止めを見込んでいた。対ドルで0.6910ドル台から0.6950超えへ上昇。豪ドル円も91.50割れから91.90台に上昇。その後は少し調整が入ったが、発表前の水準には届かなかった。
ロンドン市場は、パウエル発言を控えて売買が交錯。ドル買い・円買いの動きで取引を開始。ドル円は132.30付近が重くなると132円台割れから一時131.70レベルまで安値を広げた。クロス円も軟調で、ユーロ円は142円近辺が重くなると一時141.17近辺まで下落。ポンド円は159.50付近が重くなると、一時158.13近辺まで下落。円買いとともにドル買いも先行。ユーロドルは1.0740付近から一時1.0697レベルまで下押し。ポンドドルは1.2050付近から一時1.1987レベルまで下押し。その後はユーロドルは1.0735近辺、ポンドドルは1.2040近辺まで反発した。ただ、反発力は限定的で、先週後半からのドル高の流れには目立った変化はみられていない。ロンドン時間には、NY午後のパウエル米FRB議長のインタビューを控えて神経質な値動きを示している。パウエル議長は、利上げの先行きが見えてきたとの印象を与えるのか。もしくは、米雇用統計の強さに警戒感を示すのか。市場では様々な思惑が交錯している。
NY市場は、ドル相場が上下動の末、売りに押された。午後にパウエルFRB議長のイベントでのパネル・ディスカッションが伝わった。序盤の議長発言は先週のFOMC後の会見と同様に追加利上げの必要性を示唆するなどタカ派な雰囲気ではあったが、先週末の米雇用統計を受けて市場が警戒していたほどはタカ派色が強まっていないとの印象だったようだ。「財のセクターでディスインフレが始まった。今年は大幅なインフレ低下の年になることを期待」などと述べていた。ドルは一旦戻り売り強まったが、今度は議長のタカ派な発言に敏感に反応し買い戻されている。議長は「強い雇用指標が続けば、ターミナルレートはもっと高くなる可能性。2%のインフレ達成には今後長い道のりがある」などと述べていた。ドル円は132円付近から一旦130円台半ばまで下落。その後の反発は131円台前半まで。ユーロドルは1.0765付近まで上昇したあと、1.07台前半に戻したがロンドン時間につけた1.06台までは届かず。ポンドドルは1.20台後半から1.20ちょうど付近で上下動。ポンドの上値は重い印象。 市場では英中銀の追加利上げ観測が根強い一方で、年内に英中銀が利下げに転じる可能性も指摘されている。英住宅市場の低迷が警戒されているもよう。
(8日)
東京市場は、比較的落ち着いた値動き。ドル円は131円挟みの展開。朝方には130.72近辺まで軟化も、その後は131.38近辺まで上昇。前日のパウエル議長の発言内容はFOMC後から特に変わっておらず、5月までの利上げを示唆するものであって、ドル買いの流れは変わらずとの見方が広がった。また、財務相や官房副長官がまだ決まっていないと否定したとはいえ、雨宮副総裁が新総裁に就任するとの見方が依然強い中で、円売りが入りやすい地合いにもなっていた。ユーロ円はドル円に準じた動き、朝の円高進行で140.29近辺まで軟化したあと、一気の円売りに140.90台まで反発。その後はレンジ内で推移した。ユーロドルは1.07台前半で12ポイントレンジと膠着した。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。前日のNY市場後半のパウエル米FRB議長発言は、インフレ抑制姿勢や強い米雇用統計を受けたターミナルレート水準上昇の可能性が指摘されたが、市場では財(モノ)のセクターにディスインフレの兆候がみられるとの内容に飛びついていた。株式やドル相場は神経質に振れつつも、ドル安・株高で取引を終えた経緯があった。きょうのロンドン市場でも欧州株が買われ、市場は好ムードとなっている。為替市場では再びドルが軟調に推移し、ドル円は131円台前半から一時130.60付近まで下落。ユーロドルは1.07台前半から1.0761近辺まで買われた。ただ、いずれも前日NY市場でのドル安値水準には届かず。一方、ポンドドルは1.20台半ばから1.2110近辺まで買われ、前日高値を更新した。英国立経済社会研究所(NIESR)は、英国は2023年にテクニカル・リセッションを回避する可能性が高いとの見方を示しており、英中銀よりも楽観的な内容が示されていた。ユーロ円が140円台後半から半ばでやや上値重く推移する一方、ポンド円は158円付近から一時158.40台に高値を伸ばしている。対ユーロでもポンド買いが優勢だった。
NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は131円台に戻している。ユーロドルは1.07台での上下動。ポンドドルはロンドン時間に1.21台を回復していたが、NY時間には維持できずに1.20台へと伸び悩んだ。この日伝わったFOMC委員の発言はタカ派色が強く、市場の想定以上の利上げ及び高金利維持に言及していた。想定以上の利上げへの警戒感や、景気の先行きに対するリスクも意識される中でドル買いが根強く出ていた。一部からは、今回のFRBの利上げサイクルのターミナルレート(最終到達点)は6.00%超になる可能性も指摘されていた。ただ、先週の米雇用統計は予想外の強さを示したものの、市場の年内利下げ期待はなお温存されている状況。いまのところ市場のコンセンサスは5.00%-5.25%との見方で概ね変化はない。来週の米消費者物価指数(CPI)など次の材料を確認したい意向も見られる。
(9日)
東京市場は、ドル円が振幅。午前に国内輸入企業からとみられる買いで上値を広げ、前日高値を上回る131.83付近まで一時上昇したものの、その後は上げを帳消しにして、131円半ばまで押し戻された。午後に入り、近日発表予定の日銀次期総裁人事について、自民党議員が山口元副総裁の場合だと党内がまとまらないと発言したという一部報道を受け急落。この日の高値から1円以上のドル安・円高水準となる130.80付近まで下落した。その後、すぐに131円台後半まで値を戻した。ユーロ円は、午前の円売り局面で141円台に乗せたあと、上げ一服となっていたが、午後に入り、140円台半ばから141円台前半で振幅。その後は、141円ちょうど付近で推移している。ユーロドルは強含み。午後にこの日の高値を更新し、一時1.0738付近まで上昇した。
ロンドン市場は、ドル売りが継続。米債利回りがやや低下、欧州株や米株先物・時間外取引が堅調など前日NY市場でのドル高・株安・債券利回り上昇などの反動がでている。ロンドン朝方にはドル円が波乱の展開となった。日銀人事関連の報道を受けて131円台前半から130.80近辺まで急落後、すぐに131.70近辺に反発を荒っぽい値動きを示した。ロンドン時間に入ると全般的なドル売りの流れに押されて130.75近辺に安値を広げている。ユーロドルは東京市場で1.07台前半でじり高の動きを示したが、ロンドン市場でも買いが広がり、高値を1.0778近辺に伸ばしている。1月ドイツ消費者物価指数は前年比+8.7%、EU基準前年比+9.2%といずれも市場予想を下回ったが、ユーロ売り反応は限定的だった。ポンドドルは1.21台乗せから一時1.2159近辺まで高値を更新した。先週の英経済報告の証拠を示す目的でベイリー英中銀総裁らが議会証言を行っている。インフレに関する認識は硬軟両面が示されているが、ポンドは底堅く推移しており、インフレが予想以上に持続するリスクを警戒していたようだ。また、スウェーデン中銀は予想通り50bp利上げを実施した。声明で今後の追加利上げやQT開始について言及されたことでクローナ買いの反応が広がっていた。ドル安圧力となる一因ともなったようだ。
NY市場は、ドルが下に往って来いとなった。序盤はドル売りが優勢となり、ドル円は130円台前半まで下落していたが、後半になって131円台半ばまで買い戻された。ドル円は日銀総裁人事のニュースで上下に振らされているが、基本的にはFOMC、米雇用統計を通過して、来週の米消費者物価指数(CPI)など次の材料待ちの雰囲気が強く、131円を挟んで方向感のない展開が続いている。ユーロドルは上に往って来いの展開。一時1.07台後半まで上昇していたが、後半になって1.07台前半に伸び悩んだ。ポンドドルは一時1.21台後半まで上昇後、1.21台前半に伸び悩んだ。ここ数日のFOMC委員のタカ派な発言もあり、FRBが予想以上の利上げを実施し、高金利の状態を長期させるのではとの見方も出ている。米国債市場では政策金利に敏感な米2年債利回りが昨年11月以来の4.50%を一時突破した。この日の30年債入札が不調だったこともあり、10年債や30年債といった長期ゾーンの利回りも上昇し、ドルの買い戻しをサポート。また、米株式市場が下げに転じたことも、リスク回避のドル買いを呼び込んだようだ。
(10日)
東京市場は、落ち着いた値動きだった。ドル円は午前に131.88近辺まで買われたあと131.50割れ水準まで一時下落。前日海外市場での上昇を受けた円安・ドル高水準に高止まりしている。一方向の動きにならず、様子見ムードが広がっている。14日の日銀正副総裁の指名と米消費者物価指数待ちの展開。週末日銀正副総裁に関する報道などが出た場合に週明け大きく動いて始まるリスクがあるだけに、週末越えのポジション維持に慎重姿勢がみられた。黒田日銀総裁、雨宮副総裁が議会で発言していたが、従来の主張と目立って変わった部分がなく、相場への影響は限定的なものに留まった。ユーロ円は141円ちょうどから半ばでの推移。日経平均はプラスもアジア株が全般に下げておりリスク警戒ムードも、円相場は静か。ユーロドルは1.07台前半での揉み合い。
ロンドン市場は、日銀総裁人事報道でドル円が乱高下した。東京市場でドル円は131円台半ばから後半で高止まりしていた。ロンドン早朝に、突然円が急伸した。 日経が「政府、日銀新総裁に植田和男氏を起用する人事固める」と報じたことに鋭く反応している。市場では次期総裁候補として黒田日銀総裁に最も近いとされる雨宮副総裁が指名されるとの見方が濃厚だっただけに、植田氏という未知の総裁候補が浮上したことで反射的な円買い反応につながった。ドル円は一気に129.81近辺まで下落、高値から2円超の下げとなった。その後、売り一服となったあと、再び131.40付近まで急反発。植田氏に報道各局がインタビューし、「日銀の金融政策は適切、緩和的な政策を継続する必要」と述べたことが円売り反応につながった。その後は131円を挟んだ取引へと一服している。クロス円も激しく振幅。ユーロ円は141円台前半から139円台半ばへ下落したあと140円台後半まで反発、その後は140円台前半で推移している。ドル円、クロス円ともに日銀人事報道前の円安水準には戻しきれていない。米株先物や欧州株が軟調に推移しており、週末を控えた調整ムードも加わったようだ。ユーロドルは1.07台半ばから1.07台割れ、ポンドドルは1.21台前半から1.20台後半まで一時軟化した。円相場は荒い値動きとなったが、ドル相場全般には前日からのドル高圧力は緩やかに続いている。
NY市場はドル買いが続き、ドル円は131円台半ばに戻した。一部からは、昨年10月頃からのドル安トレンドは一時的に止まる可能性があるとの指摘が出ている。市場がFRBに対する見方を見直しており、景気の不透明感による逃避買いにも支えられ、ドル安トレンドが一時的に止まる可能性があるという。1月末に比べ、ターミナルレート(最終到達点)が想定よりも高くなるのではとの見方が市場に増えつつあり、今年後半の利下げに対する期待も縮小している。

執筆者 : MINKABU PRESS
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