米PPI受けドル売り加速も後半に戻す ロシアのロケット弾がポーランドに着弾=NY為替概況
きょうのNY為替市場、ドルは下に往って来いの展開が見られた。序盤はリスク選好の雰囲気が広がり、米株高、米国債利回り低下の中、ドルは戻り売りが再び強まった。この日発表の10月の米生産者物価指数(PPI)が予想を下回ったことで、ドル売りの動きが加速し、ドル円は137円台に急落する展開が見られた。ただ、急ピッチな下落に過熱感も出ており、その後は139円に急速に戻す展開。
ロシアのロケット弾がNATO加盟国のポーランドに着弾し、2人が死亡したと伝わった。ポーランドのモラウィエツキ首相は、臨時の国家安全保障会議を招集。このニュースをきっかけに一気に市場はリスク選好の雰囲気を後退させたことも、ドル買い戻しを誘った。
ただ、ドル円は100日線を下放れる動きとなり、その水準を完全にブレイクして、133円ちょうど付近に来ている200日線を目指す展開になるか注目される。
市場からは、ドルは世界的なセンチメント改善と、前日のブレイナードFRB副議長の発言に反応しているとの指摘が出ている。副議長は「FRBが来月の利上げペースを減速させる可能性が高い。先週の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことは引き締めペースを緩めるのに十分」と述べていた。
また、中国の動向も市場のセンチメント改善に寄与しているという。前日の米中首脳会談で両首脳が、両国間の緊張緩和を呼び掛けたことや、中国政府がゼロコロナ規制を緩和方向へ傾けようとしているほか、不動産セクターへの支援などもあり、市場には中国経済に対する楽観論が広がっており、リスク選好のドル安に有利に働いていると指摘している。
ユーロドルは一時1.0480ドル近辺まで上昇する場面が見られたものの、後半になって戻り売りが強まり、一時1.02ドル台に下落する場面が見られた。
ロンドン時間に11月調査のドイツZEW景況感指数が発表され、マイナスではあったものの、予想ほどの落ち込みはなかった。前回からも大幅な改善を見せていた。
これを受け市場からは、ユーロドルは目先、さらに上昇の可能性があるとの声も聞かれる。ZEW指数の堅調な回復はECBがこれまで示してきた利上げの根拠となる。そのため、現在のドル安を背景に、ユーロドルにさらなる支援を与える可能性があるという。
ドイツZEW景況感指数(11月)8日19:00
結果 -36.7
予想 -52.2 前回 -59.2
ポンドドルも序盤は買い戻しが加速し、心理的節目の1.20ドル台を付ける場面が見られた。ただ、短期的な過熱感は否めず、その後は1.18ドル台に急速に伸び悩んでいる。1.17ドル台を付ける場面も見られた。
ロンドン時間に英雇用統計が発表されたが、労働需要の鈍化傾向が確認され、英労働市場が明らかにピークを過ぎたことを示唆していた。市場からは、現段階で問題なのは、冬に経済が後退するにつれて大幅な悪化が見られるかどうかということだとの指摘も聞かれる。
労働者への需要は間違いなく減少しており、求人率も明らかに減少傾向を示している。ただ、いまのところは人員削減というよりは採用凍結が中心。現状では企業の余剰人員が増える気配はないが、今後、この状況がかなり早期に変化し始めると可能性はあるとしている。その場合、英中銀の利上げへの期待は後退し、ポンドを圧迫する可能性もある。ただし、市場のリスクへのセンチメント次第のところもありそうだ。
なお、明日は10月の英消費者物価指数(CPI)が発表され、前回よりも高い水準が見込まれている。
英ILO失業率(7-9月)8日16:00
結果 3.6%
予想 3.5% 前回 3.5%
英消費者物価指数(10月)9日16:00
予想 1.6% 前回 0.5%(前月比)
予想 10.6% 前回 10.1%(前年比)
予想 6.3% 前回 6.5%(コア・前年比)
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
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