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金利差と投資フローから読み解く香港ドル切り上げの可能性「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

マネ育チャンネル 

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

香港シリーズ、第6回目は「金利差と投資フローから読み解く香港ドル切り上げの可能性 」でお届けいたします。現在の金利差や経済状況を改めて整理し、今後の香港ドルの想定シナリオを作成してまいります。

投資やビジネスのご参考にして頂ければ幸いです。

目次

1.HIBOR vs LIBOR スプレッド
2.香港が抱える問題
3.今後のシナリオ

1.HIBOR vs LIBOR スプレッド

まず本日注目したいのが、香港ドル金利と米ドル金利の差、すなわちスプレッドです。ここでは市場で取引が多いと想定される3Mの金利を比較しました。

3Mの金利を比較

青いライン:3Mの香港ドル金利から3Mの米ドル金利を減算した数値
黄色いライン:USD/HKDのレート推移
青い丸:スプレッドの最小値と最大値をハイライトしたもの

米中貿易摩擦が始まった2018年から現在まで、香港と米国の金利差は▲1%から+1%へと推移しています。その間、為替レートは、1USD=7.85HKDから1USD=7.75HKDへと香港ドル高が進みました。

考えてみれば当然ですが、USD/HKDは7.75―7.85で安定して推移するので、投機マネーは必然的に比較的に高金利の通貨へと流れます。香港ドルの金利が米ドル金利よりも高く推移している現在、投機マネーは香港ドルへと流れています

これを香港ドル売り、米ドル買いのオペレーションを通じて7.75レベルで買い支えているのが香港中銀と言うことになります。

一体これは何を意味しているのでしょうか?以下でいくつかの可能性を指摘していきます。

2.香港が抱える問題

一つ目は不動産価格の高騰が止まらないことです。以下は1999年の居住用の不動産価格を100と仮定し、現在までの推移を表したチャートです。

香港居住用住宅価格指数

20年間で居住用の不動産価格は約4倍に上昇していることがわかります。これを抑制するために、融資を抑制する必要があり、そのため高金利を維持しておきたい可能性があります。

二つ目は、一つ目に関連しますが、市中の融資残高を圧縮したいのではないかと言うことです。2019年末時点、香港の融資残高は香港経済規模(G D P)の約3倍となっています。これは日本と米国の融資残高がそれぞれ自国経済規模の約1.5倍であることを考えると香港の潜在的な金融リスクは日米より大きいと言えます。融資残高を圧縮したいので高金利を導入している可能性があります。

三つ目が、中国本土からの資金流入です。ミクロ的なアプローチになりますが、筆者が中国の日系銀行で勤務していた際、香港に口座を持っている中国人の同僚は多かったです。それは中国人からみて香港に魅力的な運用商品が多いことや、税制が優遇されていること、資金逃避ニーズが混在しているのだと思います。この本土からの香港ドル買いフローが、米中貿易摩擦を通じて加速し、香港ドルの流動性が干上がり、結果として金利上昇に繋がっていると言う可能性があります。

これらを総合的に判断すると、香港には過度に投資フローが流れ込んでおり、これを抑制するために、香港ドル切り上げを行うのかもしれません。

3.今後のシナリオ

このような状況下で、米国が香港への金融制裁を行うことがほぼ確実視されています。現在想定されるのが、香港への米ドルローンの制限です。これが制限されると、おそらく香港の米ドル資金調達コストが上昇します。

米ドル資金調達コストが上昇すると、実質的に米ドルに担保されている香港ドルの調達コストも上昇すると推測します。すると、つれて香港ドルの市中金利も上昇すると推測します。

そうすると最悪の場合には、不動産融資が焦げ付きはじめ、不動産バブル崩壊が意識される局面へと突入します。香港ドル高、不動産価格暴落となると、どこかでみた構図ですね。まさに1990年代の日本のバブル崩壊と、そこから始まる30年間のデフレとイメージが被るわけです。

いやまさか、こんなことが現実になるのか、筆者も断言できないところはありますが、米国の政策アドバイザーがここまで考えて、制裁を検討している可能性もあると指摘しておきます。

なお蛇足ですが、米政策アドバイザーがポンペオ国務長官に対し香港ドルの米ドルペッグを外すための構想について報告したとの関係者談が報じられるなど、本シリーズ第3回目で想定していた動きが徐々に表面化してまいりました。

米国の香港への制裁について引き続き注視が必要です。

さて本日はここまでとさせて頂きます。筆者の推測が行きすぎているところもあると思いますが、香港ドル高への切り上げ可能性、低くないのではないかと考えはじめています。香港ドルをショートされている方、気をつけてください

引き続き、中国本土・香港の情報について皆様にシェアさせて頂きたいと思っておりますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

それでは、またの機会にお会いしましょう。

戸田裕大

【過去記事】

<参考文献・ご留意事項>
HIBOR及びLIBOR、並びにUSD/HKDのレートはInvesting.comよりデータを取得し、筆者作成。

香港居住者用不動産価格の推移グラフ、並びに香港の融資残高/G D P比率はBISよりデータを取得し筆者作成。

Trump Aides Weigh Proposals to Undermine Hong Kong’s Dollar Peg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-07-07/trump-aides-weigh-proposals-to-undermine-hong-kong-s-dollar-peg

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若竹コンサルティング 創業者戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部法律学科卒業後、(株)三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務(FX Spot, Forward, Option, e-Commerce, Analyst, Sales, China Sales and Trading 等)を担当。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にてGlobal Executive MBA取得。2009年~2013年まで銀行間為替取引を担当し、所謂ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行。2014年~2015年為替専門のセールスとして主に京都を中心に西日本のグローバル製造業約300社へ相場情報提供やリスク管理コンサルティングを実施。2016年~2018年上海にて、中国銀行間取引を行う傍、華南・華北を含む在中国日系グローバル企業450社の為替リスク相談実施。為替相場講演会を中国全土にて10回以上実施。
●免責事項本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、当社は一切の責任を負いかねますことをご了承ください。

マネ育チャンネル:外為どっとコム

執筆者 マネ育チャンネル

執筆者 : マネ育チャンネル|外為どっとコム

マネーを育てよう!をテーマに、外為どっとコム総合研究所に所属する研究員が執筆するオリジナルレポートのほか豪華講師陣の貴重なFXレポート、個人投資家や著名投資家のインタビュー記事など、バラエティ豊かな情報を配信しています。為替トレンドに合わせた特集記事やFX初心者でも安心の学習コンテンツを用意しており、個人投資家の取引技能の向上に寄与すべく活動しています。

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