ドル円は一本調子の上昇 今週のパウエル議長の演説に注目も=NY為替概況
きょうのNY為替市場でドル円は一本調子の上げを見せ、107.75円付近まで一時上昇。きょうの市場は経済再開後の感染第2波への不安が広がり、先週までのリスク選好の雰囲気は一服していた。為替市場ではドル買いの反応が優勢となったほか、円安の動きも見られた。
先週の米雇用統計は戦後最悪の内容となったものの、市場予想は上回っていた。ただ、既に織り込んでいたこともあり、為替市場はさほど大きな反応は見せなかった。先々週のFOMCから先週の米雇用統計まで一連の重要イベントを通過したことでポジション調整が出ているとの指摘も聞かれる。ドル円は瞬間的に105円台に下落する場面も見られたが、心理的節目の105円の水準を試す動きまでは見せず、106円台半ばの水準を維持していた。ショート勢も一旦巻き返しを入れていた可能性もありそうだ。
一部からは今週水曜日のパウエルFRB議長の演説を指摘する声も聞かれる。短期金融市場ではFRBがマイナス金利を採用するとの期待を織り込んでいる。ただ、それについてはFRB内では反対の意見も多く、きょうもエバンス・シカゴ連銀総裁やボスティック・アトランタ連銀総裁から否定的な見解が示されていた。パウエル議長も否定して来るのではとの思惑もあるようで、その場合、ドル買いの反応が出るとの期待もあるのかもしれない。ただ、ドルは既に十分高い。いずれにしろ、マイナス金利に関して何らかのヒントが出るか注目される。
ユーロドルは売りが強まり、1.08ドル台前半に下落。1.08ドルちょうど付近での買い圧力も強いようで、1.08ドル台は維持されている。ユーロに関しては二つのテーマが上値を重くしているようだ。
一つはECBの量的緩和を巡ってEU司法裁判所とドイツ憲法裁判所が対立していること。ドイツ憲法裁はECBが3ヵ月以内に政策の必要性を証明しなければ、ドイツ連銀に国債購入うプログラムへの参加を停止するよう命じている。一方、EU司法裁判所は、EU機関がEU法を守っているのか判断できるのは同裁判所だけだと主張。EU司法裁判所はECBの量的緩和は合法という立場だ。
もう一つはウイルス感染のパンデミックによって低迷している経済を支援するために総額5400億ユーロの対策を打ち出している。それは良いのだが、それと伴に債務も拡大することになり、ファイナンスへの懸念も指摘されている。
ポンドドルも売りが優勢となり、一時1.22ドル台に下落。ドル買いの動きがポンドドルを圧迫。ただ、ポンド自体にも弱気な見方は少なくない。EUとの貿易交渉や英政府によるウイルス感染の取り扱いを巡り不透明感が強いようだ。一部からは今後数ヵ月で1.19ドルまで下落する可能性も指摘されている。英国とEUの貿易協定の交渉が進展を見せておらず、一方、ジョンソン首相が回復に向けたロードマップを発表したが、対応が遅く、封鎖解除への計画もあいまいとの批判も多い。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。