為替相場まとめ9月13日から9月17日の週
13日からの週は、ドル相場が不安定に振れ、円相場は円高の動きが優勢だった。株式市場に調整色が広がっており、週を通して神経質に上下動。米株などは大崩れこそないものの、上値は抑えられていた。中国・香港株市場は中国恒大地産集団の債務問題への懸念が重石となった。ドル相場は米経済指標に敏感に反応した。米消費者物価指数の伸びがやや鈍化したことが、上昇がピークアウトしたと捉えられ、次週の米FOMC会合ではテーパリング開始が見送られるとのコンセンサスが広がっている。ただ、年内にはテーパリング開始としており、11月が有力な見方となっている。その一方で、ECBに関しては、直近理事会でのPEPPに関する債券購入ペース縮小について、ラガルドECB総裁が「あくまでも微調整であり、テーパリングではない」と主張したことが響いている。その後もラガルド総裁は金融緩和継続、財政政策との協調継続と、景気をサポートする姿勢を示している。これに比べると英中銀に対する市場の見方はタカ派だ。英消費者物価指数の伸びが足元で加速しており、市場関係者の中には来年の利上げ開始の見方が浸透してきている。リスク警戒の動きに各国中銀に対する思惑が交錯し、通貨ごとにスピード差はあるものの、やや円高・ドル高の動きが優勢だった。ドル円は110円台が重く、一時109円手前まで下落も、109円台割れは回避されて買い戻された。その後週末にかけてはドル買いの動きが優勢となり、一時110円台を回復する動きを見せたが、110円台での買いには慎重姿勢が見られ、109円90銭台で週の取引を終えた。
(13日)
東京市場は、ドル買いが優勢。ドル円は前週の後半の取引で上値抵抗となっていた110円手前の売りを消化して、110円ちょうど近辺に上昇。下値は109.80台でサポートされた。ユーロドルは1.18台を割り込み、1.1780前後まで下押しされた。規制強化への懸念で香港株が大幅安となっており、リスク警戒的なドル買いが強まった。一方、ドル円にとっては日経平均が底堅いことが下支えとなった面も。ユーロ円はユーロドルの売りに押されて、一時129.65近辺まで下落。買い戻しは129.80付近までの動き。
ロンドン市場は、ドル買い圧力が優勢。先週末のNY市場で見られたドル買いの動きが、週明けも継続。米10年債利回りはやや低下も反応薄。あすの8月米消費者物価指数の発表を控えた思惑買いの面も指摘された。事前予想ではいずれも前回7月並みの高い数字が想定されている。ドル円は110円台乗せから110.16レベルまで上昇し、その後も高止まり。ユーロドルは1.1775近辺へと下落。ユーロ円は129円台後半の取引で、一時129.65近辺まで安値を広げた。対ポンドでも下落しており、ユーロ売りの側面も。ただ、シュナーベルECB理事は、インフレ上昇の可能性を過小評価しないかしっかりと監視すると述べていた。ポンドドルは1.3798レベルまで下押しされたあとは1.38台前半へと下げ渋り。ポンド円は152円台前半で底堅く推移。欧州株や米株先物が反発、NY原油先物が70ドル台後半へ上昇するなどリスク動向は落ち着いた。
NY市場は、ドル売りの動きに転じた。米株式市場でダウ平均が一時300ドル高まで反発、リスク選好のドル売りの構図がみられた。ドル円は再び110円台を割り込み、109.90近辺まで反落。ユーロドルは買い戻しが入り、1.17台後半から1.18台を回復した。ポンドドルは1.38台割れ水準から1.38台半ばまで反発。市場は明日の8月の米CPIに注目している。総合指数で前年比5.3%、コア指数で4.2%が予想されているようだ。インフレ懸念はここ数カ月の市場の話題の中心であり、現在の高い数字が一時的なのか、それとも長期化するのか、行方を待っている状況。ポンド相場にとっては、今週は英雇用統計や英物価統計などが目白押し。週明けは、イベントを控えて方向性が錯そうする展開で始まっている。
(14日)
東京市場は、比較的小動き。ドル円は110円台を回復したが、上値追いには慎重で110.10付近までと限定的な動き。前日の109.90近辺から110.15近辺までのレンジ内にとどまった。ユーロドルは1.1810台での推移。前日のロンドン市場までは売りが優勢だったが、NY午前には買い戻しが入り、その後は揉み合いとなった経緯がある。その後の東京市場では動意薄となった。NY市場朝方には米消費者物価指数が発表される。今週で最も注目される材料であり、それを控えて積極的な売買は手控えられた。
ロンドン市場は、ポンドが堅調。英雇用統計が失業率低下、雇用者数増加、求人者数初の100万人超え、賃金高止まりなど強い内容だったことが背景。ただ、景気回復のほかに、EU離脱にともなう東欧からの労働力が減少していることなど人手不足の面があることも指摘されていた。また、あす発表される英物価統計で、消費者物価指数などが一段と上昇する予想となっており、ポンド買いを誘った面も。ポンドドルは1.38台後半、ポンド円は152円台後半へと上昇。対ユーロでのポンド買い圧力も続いた。その他主要通貨は、ややドル売りが先行したあとは、ドル買いに方向転換と落ち着かない。ドル円は110円台割れから110.10台へと上昇、前日高値に並んだ。ユーロドルは1.1830近辺まで買われたあとは1.18近辺へと反落。クロス円はまちまち。ポンド円が強い一方、豪中銀のハト派発言を受けた豪ドル円は引き続き上値が重い。ユーロ円は130円付近に高止まり。この後の米消費者物価指数の発表待ちに。
NY市場では、米消費者物価指数を受けてドル円が下落した。朝方発表の8月米消費者物価指数(CPI)が予想を下回る内容となり、市場にはインフレ上昇のピークアウト感が広がった。今回の米CPIの結果と先日の米雇用統計から、少なくとも来週のFOMCでの資産購入ペース縮小開始のアナウンスは消えた可能性が高い。ドル円は一時109.55近辺まで下落。ユーロドルは一時1.18台半ばまで上昇。その後は1.18台前半に押し戻された。先週来、1.18台半ばで上値を抑えられている。ポンドドルは一時1.39台に乗せた。ロンドン朝方の英雇用統計の好調とともに、米CPIによるドル売りもポンドドルを押し上げた。しかし、その後は一気に1.38手前水準まで反落した。神経質な上下動だった。
(15日)
東京市場は、前日NY市場からの水準を踏襲。ドル円は朝方に109.74レベルの高値をつけたあとは、前日NY安値109.53レベルに迫る109.55近辺まで再び軟化した。狭いレンジながら前日からのドル安・円高圏で推移した。米10年債利回りは、前日の米消費者物価指数後の1.37%近辺から1.27%近辺まで低下した。東京市場では1.28%台で揉み合った。ユーロドルは1.18ちょうど付近での推移。ユーロ円は上値重く、午後に129.33レベルまで軟化。
ロンドン市場は、円高とドル安が交錯。ドル円は109円台前半へと下落。序盤はドル安の面が強く、強い英消費者物価指数の結果を受けたポンドドルの買いや、それに追随するユーロドルの上昇の動きが目立った。ポンドドルは1.3840台、ユーロドルは1.1830近辺へと上昇。欧州株が売りに押され、米株先物が前日の下げからの反発力が鈍く、上値を抑えられる展開となると、次第に円買いの動きが前面に押し出されている。やや買い戻しがみられたクロス円が再び下げており、ユーロ円は129.20近辺、ポンド円は151円台割れへと下落。それに伴ってドル円も109.22レベルまで安値を広げ、約1か月ぶりの安値水準となった。NY原油先物が71ドル台後半へと一段高となっているが、豪ドルは対ドルでは0.73台前半で小高く推移も、対円では80円近辺へと軟化。円高圧力の強さが示される動きになっている。
NY市場では、ドル円が下値を試した。ドル売りが優勢となるなかで、一時109.10近辺まで下落。強いサポートとなっていた109.60水準をブレイクしたことで見切り売りがでていたようだ。ただ、109円の大台割れには至らず、109.40台まで反発した。ユーロドルは1.18台を堅持し、底堅い推移が継続。ポンドドルはNY時間朝方に1.3855近辺まで上昇。その後は1.38台前半に落ち着いた。前日の米消費者物価指数(CPI)が高インフレのピークアウトの兆候を示したことで、FRBの慎重姿勢は続くとの見方につながっている。来週はFOMCが予定されているが、資産購入ペース縮小は議論されるものの、アナウンスはないとの見方が確実視されているようだ。FOMCはドルにほとんど影響を与えず、新たに為替市場のボラティリティを刺激する可能性は低く、狭い範囲の反応に留まるとの見方も。
(16日)
東京市場では、豪ドルが軟調。東京午前の発表された8月豪州雇用統計で雇用者数が予想以上の減少となったことが背景。また、中国最大規模の不動産会社恒大集団の過剰債務問題が警戒感を誘っておりリスク警戒からの円買いが強まる面も加わった。豪ドル円は80.30台から79.90近辺へと下落。豪ドル/ドルも0.73台前半でジリ安となった。クロス円は軒並みの下げ。ユーロ円は129.30台から129円台割れへ、ポンド円は151円台半ばから151円割れを試す動きに。ドル円は朝方に109.46レベルまで買われたあとは、109.20近辺まで上値重く推移した。
ロンドン市場は、ドル買いとユーロ売りの動きが優勢。前日の米株の上昇を受けて、今日の欧州株も反発、NY原油先物は72ドル台で高止まり。リスク警戒の動きは後退している。しかし、為替市場ではドル買いが優勢。加えて、ユーロ売りの動きも広がっている。前日の値動きに調整が入る形になっており、リスク動向とはかみ合わない動き。レーン・フィンランド中銀総裁は、成長は強さを増してきているが、引き続き支援が必要と慎重姿勢を示した。一方で、将来の利上げについては備えておくべきとも述べていた。ユーロドルは1.18台割れから1.1760台へ下落、ユーロ円は129円台割れから128.60近辺まで下落。対ポンドでもユーロは軟調。ドル円は109.20台で下げ止まると、109.40台へと再び上昇。東京市場での下げを戻した。ポンドドルは1.38台前半で、ポンド円は151円台前半で上値重く推移も、値動きは限定的。ポンドに関しては、来年前半にも英中銀が利上げを開始するとの見通しが複数の金融機関・報道機関などから示されていた。
NY市場では、ドル買いが強まった。8月米小売売上高が前月比+0.7%と予想外の増加となったことに、米債利回りが上昇、ドル買いを誘った。軟調に推移した米株式市場が終盤には下げを消す場面があったこともフォローとなった。ドル円は109円台前半から一時109.80台まで上伸。ただ、110円台回復を目指す動きまでは見られなかった。ユーロドルは売りが加速、1.17台半ばまで下落した。21日線を下回った。ポンドドルは1.38台割れから1.3760台まで下落した。米小売売上高の予想外の増加については、新学期に向けた購入や子育て世帯への給付金などが下支えし、商品への需要の強さが示された。一方、デルタ株の感染拡大の影響も見られ、旅行や娯楽などのサービス需要は抑制されている。飲食店は前月比横ばいとなった。自動車や家電製品はサプライチェーンや半導体不足の影響もあって依然として弱い。ただ、今回の小売売上高をもって、FRBの姿勢に変化があるとみている向きも少なく、来週のFOMCでの資産購入ペース縮小のアナウンスはないとの見方は依然多い。
(17日)
東京市場は、円売りが優勢。午前は対ドルや欧州通貨で円安が進んだが、午後に入ると対オセアニア通貨でも円安傾向となり、円は全面安となった。ドル円は実質5・10日(ゴトウビ)に伴う実需のドル買いで東京序盤から強含み、日経平均株価の堅調地合いも受け、昼前に109.92レベルまで上昇。ユーロ円は129円台前半、ポンド円は151円台後半へと上昇。香港株が下落スタート後にプラスに浮上したことなどが好感され、午後にはリスク選好のドル安も進んだ。ユーロドルは1.1774近辺、ポンドドルは1.3810近辺まで上昇。中国の不動産開発大手「中国恒大集団」は連日で株価が急落しているが、本日の上海株価指数が小幅な下げにとどまっており、マーケット全体の安心感につながっていた。
ロンドン市場は、円売りが優勢。ドル円が東京午前の高値を上回り109.99レベルまで高値を伸ばした。ユーロ円も129円台前半から129.60近辺へとじり高。ポンド円は151円台後半、豪ドル円は80円台半ばへと高値を伸ばした。ただ、欧州株が序盤を上げを消し、マイナスに転換。米株先物もマイナスに転じている。NY原油は72ドル近辺へと反落。全般に調整ムードが広がっているものの、リスク回避的な円高の動きは限定的。実需などフロー主導の展開となっているもよう。デコス・スペイン中銀総裁は、現状では2023年の利上げは容認されない、と述べており、一部で報じられた早期利上げ観測を否定した。一方、カザークス・ラトビア中銀総裁は、インフレ見通しが上昇修正される可能性と指摘した。
NY市場はドル買いの動きが優勢となった。朝方に米債利回りの上昇が見られ、ドルは全面高に。ドル円は110円08銭を付ける動きを見せた。注目されたミシガン大学消費者信頼感指数が前回からは改善も、事前予想に届かない小幅な回復となったこともあり、その後はドル買い円売りの動きが失速。109円90銭台を中心としたもみ合いとなった。ユーロドルが1.1720台まで、ポンドドルが1.3720台まで値を落とすなど、ドルは全面高基調。ユーロドルはほぼ安値引けとなっており、上値の重さが意識された。クロス円はドル円の下げもあって軟調地合い。ユーロ円は129円60銭台から129円割れまで。NY午後は安値圏もみ合いに。
執筆者 : MINKABU PRESS
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