【メキシコペソ】対ドルで11か月ぶり高値更新後、調整強まる
ドルメキシコペソは先週19.50台を付け、昨年3月にパンデミックでペソ売りが進んだ後の、ペソの最高値(ドル安ペソ高)を更新した。バイデン政権の誕生で今後の米国とメキシコとの関係改善が見込まれることが背景にある。
また、NY原油価格が高めの水準で推移しており、輸出品目の第4位が対米向けの原油であるメキシコにとっては好材料となっていることもペソ買いにつながっている。
ただ、安値を付けた後は、先週末あたりからドル買いペソ売りの動きが広がっている。新型コロナウイルス向けワクチンや厳しいロックダウンの影響もあって米国で新型コロナウイルスの新規感染者が抑制傾向にあるのに対して、メキシコでは感染者の拡大傾向が止まらず、一日当たりの新規感染者数は先週あたりから2万人を超える日が出てきた。人数的にも、人口当たりの数でも米国に比べるとまだ低いとはいえ、状況の改善が見られないという対照的な展開は警戒感からのペソ売りを誘っている。
バイデン米大統領の電気自動車への傾斜も警戒感につながっている。バイデン大統領は今週政府所有車両60万台を米国製の電気自動車に置き換えると発言した。メキシコは米国向けガソリン車及び同部品が最大の産業であり、輸出の1/4以上を占めている。バイデン大統領の環境を重視し、化石燃料を減らし、電気自動車などの普及に注力するという方針は、今後のメキシコ経済にとってかなり厳しい状況を呼ぶ可能性がある。
メキシコ中銀の追加緩和期待も徐々に広がっている。メキシコ中銀は昨年9月の会合まで11会合連続で利下げを実施し、19年8月から続く利下げサイクルでの累計利下げ幅は4%まで達した。しかし先行きのインフレへの警戒感もあり、11月の会合に据え置きに転じると、12月の会合でも二会合連続で据え置きとした。ただ、両会合とも理事会での投票は分かれている。12月会合は3対2での据え置きであった。メキシコの消費者物価指数は昨年8月にインフレターゲットである4%に達し、9月10月とターゲット近辺での推移となっていたが、12月に発表された11月分が3.33%と急低下。今月7日に発表された12月分は3.15%とさらに下げている。
こうした状況から2月12日の次回会合での利下げ期待が強まりつつある。利下げ期待の拡大がさらに強まるようだと、もう一段のペソ売りの進行もありそうだ。5円30銭台まで上昇した後、5円12銭前後を付けたペソ円は、5円の重要なポイントを目指す流れもありそう。
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。