【来週の注目材料】前回はビッグサプライズとなった非農業部門雇用者数、さて今回は?<米雇用統計>
来週からは4月に入り2019年度がスタート。
5日金曜日は月一のビッグイベントである米雇用統計(3月)が発表されます。
前回2月の雇用統計は特に注目度が高い非農業部門雇用者数(NFP)が、前月比わずか
2万人の増加にとどまり、相当サプライズな結果になりました。
事前見通しの中央値は18万人増前後。NFPは結果にかなりぶれがある指標だけに、事前の専門家見通しにかなりの幅がありまし
たが、最も少ない予想でも8.5万人増と、さすがにここまで少ない増加幅を見越したものはありませんでした。
ハリケーンの影響で雇用が鈍った2017年9月以来の低い伸び。前々回1月の数字が31.1万人増とかなり強かった分の反動が出たという面はありますが、インパクトのある数字でした。
一方で失業率は予想の3.9%を下回る3.8%という強めの数字に。労働参加率は5年ぶりの高水準となった1月と同じ63.2%となりました。
個人消費との関連で注目される平均時給も前月比が予想の0.3%増を上回る0.4%増と、こちらも好結果となっており、非農業部門雇用者数を除くと強めの数字という結果になっています。
非農業部門雇用者数にしても、3か月平均では18.6万人増とまずまずの数字を記録しています。そのため、今回の数字が一気に改善し、堅調なものとなると、米雇用市場はまだまだ力強いという印象を与えそうです。一方で、2カ月連続して弱めの結果に終わると、これまで米景気拡大を支えてきた堅調な雇用市場に変化が生じているという印象が強まりそうです。そうした意味でも、今回の数字にはかなりの注目が集まります。
まずは前回の弱かった非農業部門雇用者数(NFP)の数字について、分野ごとに確認してみましょう。
NFPは(広義の)製造業、民間非製造業、政府・公共部門の大きく3つに分けられます。
(広義の)製造業は1月の8.1万人増から2月は3.2万人減と、大きく減少しています。鉱業、建設業、製造業全てが冴えない数字となりましたが、特に目立ったのが建設業の弱さ。1月の5.3万人増から2月は3.1万人減と実にその差が8.4万人もあり、全体を押し下げる大きな要因となりました。
堅調な住宅市場動向などから、建設業は2018年いちどもマイナスとなっていなかった分野だけにサプライズ要因となっています。
製造業では耐久財の製造が弱かったです。1月の2.3万人増から2月は0.5万人増と2017年4月以来のわずかな増加となりました。日本でもそうですが、耐久財の製造(工場など)は、他の部門(付随するサービス業)への波及効果が大きい分野だけに、厳しい結果となっています。
民間非製造業では、小売、倉庫・運輸、医療・教育、レジャー・接客の4分野の弱さが目立っています。
お店が新しく出来たり、つぶれたりは日本でもよくあることで、小売業という業態自体が雇用の出入りの激しいところがありますが、1月の1.37万人増から2月は0.61万人減と、その差は2万人近くあり、全体を押し下げました。
倉庫・運輸は宅配便・メッセンジャー部門の雇用が減少し、1月の2.96万人増から2月は0.3万人減と、その差は3万人を超えており、こちらも全体を大きく押し下げました。
12月の6.7万人増、1月の6.4万人増と2カ月続けて6万人以上の雇用増を記録していた医療・教育分野が、2月はわずか0.4万人の増加にとどまったこともサプライズとなりました。日本でも介護部門などは慢性的に人手不足ですが、米国でもヘルスケア&ソーシャルアシスタント部門は雇用を支える分野。2月も決して弱かったというほどではないのですが、教育部門の雇用減もあり、分野全体では厳しい数字となりました。
レジャー・接客は1月の8.9万人増から2月は増減なしと、この分野だけで8.9万人の差がでています。10月からの4か月間、毎月6.8万人増平均で伸びていた分野だけに、こちらもサプライズとなっています。
政府部門は1月の0.3万人増から2月は0.5万人減。冴えないですが、全体が少ないのであまり気にしなくてもよい水準です。
と、このように分野ごとに確認していきますと、一つの仮説が見えてきます。天候要因の大きさです。建設、レジャー、運輸など悪天候に弱いところでの雇用が冴えなかったのです。1月末から米国は北部を中心に歴史的な寒波に見舞われましたが、その影響が残っていた可能性があります。これは単月での特殊要因ですから、この影響がもし大きかった場合は3月の数字で反動が出る可能性があります。
こうした状況を踏まえて今回の予想は17.5万人増。前回からは大幅改善も、直近3カ月平均の18.6万人増よりは少し弱め。
比較的穏当な予想で、予想前後の数字は十分に期待できそうです。
前回からの反動という意味では予想以上の数字も十分に期待されるところで、専門家予想の中には25万人を超える増加を見込むものも見られます。予想中央値から上振れし、20万人を超えてくるようだと、ドル買いの動きにつながると期待されます。
minkabuPRESS編集部山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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