【来週の注目材料】米CPIは伸び鈍化見込み
14日に10月の米消費者物価指数(CPI)が発表されます。前回9月のCPIは前年比+3.7%と8月と同水準の伸びとなりました。米CPIは2022年6月の前年比+9.1%をピークとして伸びが鈍化し、今年6月+3.0%を付けました。もっともこの時はエネルギー価格が前年比-16.7%、中でもガソリン価格が-26.5%と大きく低下したことが要因でした。2021年のエネルギー価格が同年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受けて急騰したことで、その急騰した時の価格との比較となった2022年の前年比が大きく鈍化した形です。その後エネルギー価格の低下が落ち着くと、全体の伸びがいったん強まる形となりました。
一方、住居費の伸びが鈍化を続けていることで、食品とエネルギーを除いたコア指数は順調に鈍化を続けていました。消費者物価指数全体を100としたとき、その34.8%を占める住居費は、家賃が基本的に更新時のみの変更になるといった事情から全体の変化に対して遅行する特徴があり、今年3月の前年比+8.2%がピークとなっています。その後はゆっくりと鈍化しており、全体の伸びを抑える要因となっています。
前回の消費者物価指数の内訳を確認すると、エネルギー価格は前年比-0.5%とマイナス圏も小幅なものになっています。ガソリン価格が+3.0%と今年1月以来のプラス圏となったことが要因です。
順調な鈍化を見せたのが、今年に入って鈍化を続ける食料品で、前年比+3.7%と8月の+4.3%からしっかりと鈍化しました。
コア指数では住居費が前年比+7.2%と8月の+7.3%から鈍化いたものの、小幅にとどまっています。その他、医療費が前年比-2.6%と5カ月連続でのマイナス圏となり、マイナス幅も大きなものとなっています。中古車価格は前年比-8.0%となり、11カ月連続でのマイナス圏。マイナス幅も今年3月以来の大きなものとなりました。
全体に鈍化が目立っていましたが、エネルギー価格のマイナスが8月の-3.6%から大きく縮んだこと、住居費の鈍化が穏やかなものに留まったことから、8月と同水準の前年比+3.7%に留まったといったところです。
こうした状況を受けて今回10月のCPIですが、前年比+3.3%と大きく伸びが鈍化する見込みです。エネルギー価格の鈍化が見込まれており、全体を押し下げると見られます。EIA(米エネルギー情報局)による全米全種平均のガソリン価格はNY原油先物価格の低下もあって、9月の1ガロン当たり3.958ドルから3.742ドルへ、5.46%の低下となっています。CPIは都市部のみのデータでEIA調査と全く同じではありませんが、同程度の低下が見込まれ、全体を押し下げると見られます。
一方、これまで順調に低下してきたコア指数は前年比+4.1%と9月と同水準が見込まれています。9月は前年比-2.6%となった医療費と、前年比-8.0%となった中古車が持ち直すと見られ、全体を支えてきそうです。比較対象元である2022年の数字が、医療費は9月の+6.5%から10月は+5.4%へ、中古車は9月の+7.2%から+2.0%へ、大きな伸びの鈍化が見られたことが背景にあります。比較対象元の数字が低下したことで、見かけ上の伸びが強まっているように見えるベース効果が働きます。
予想前後の結果が出てくると、全体の伸び鈍化も、コアの伸びが横ばいとなることで、相場への影響が抑えられそうです。コアの強さも、上述通りベース効果による部分が大きいとすると、追加利上げ期待の拡大にもつながりにくく、一方で利下げ期待が生じるわけではないという状況で、反応を難しくさせています。
米長期債利回りの上昇が一服する中でも、日米金利差を狙った取引の継続期待が根強く、ドル円がしっかりという状況が続いています。今回の米消費者物価指数はそうした流れを変化させるものではなく、流れを支えるものとなりそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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