為替相場まとめ7月17日から7月21日の週
17日からの週は、ドル買いが優勢。先週まで6営業日連続でドル安となった相場に調整が入った。また、側面からのドル高材料も多かった。ドル円にとっては、植田日銀総裁が緩和姿勢の維持を再確認し、市場の一部に高まるYCC修正観測に冷水を浴びせた。ポンドドルは、よりストレートだった。6月英消費者物価指数の伸びが予想以上に鈍化したことで、市場での英政策金利ターミナルレート観測が引き下げられている。ユーロドルにとっては、タカ派と目されているクノット・オランダ中銀総裁やナーゲル独連銀総裁らが9月の追加利上げについての明言を避けたことがユーロ相場の上値を抑える面もあった。木曜日のNY市場では米新規失業保険申請件数が低下したことに敏感に反応、ドル買いが強まる場面もあった。総じて、来週の日米欧中銀の金融政策発表を控えて、調整の動きが中心だった。週末にはドル円が急伸。関係者の発言として「日銀は現時点でYCC修正の必要性乏しいとみている」と報じられたことに鋭く反応。YCC修正観測に基づく市場の円買いポジションが急速に巻き返された。ドル指数は一段高となっている。
(17日)
東京市場は海の日の祝日で休場。
ロンドン市場は、円買いが優勢。東京不在のアジア時間に発表された第2四半期の中国GDPが前期比+0.8%と前回の+2.2%から減速したことが、リスク警戒の動きを広げた。上海株が下げたあと、欧州株や米株先物・時間外取引も軟調に推移している。特に国際的な高級ブランドメーカーを抱える仏CAC指数の下げが大きく。中国需要に対する懸念が広がっているもよう。米10年債利回りは3.82%台から一時3.76%台に低下。サウジの自主減産延長の一部報道で買われたNY原油先物も上値重く、再び安値を広げる動き。ドル円は138.75近辺で上値を抑えられると138.00レベルまで下落。ユーロ円は156円手前から155.10付近へ、ポンド円は181円台後半から180.50台まで下落。ドル相場は小安い。ただ、ユーロドルは1.12台前半、ポンドドルは1.30台後半から1.31台乗せ水準での振幅にとどまっており、ドル円の下落がドル指数は小幅に低下させるにとどまった。
NY市場は、方向感に欠ける展開。ドル円は一時139円台乗せとなったが、上値では戻り待ちの売りも多く再び138円台に値を落とした。ユーロドルは1.12台半ばへと上昇しているが、全体的には様子見気分が強まっていた。ポンドドルは1.30台後半での推移。一部からは、来週のFOMCでの利上げ決定前にドルが短期的に下支えされる可能性があるとの指摘も出ている。イベントを控えて投資家はより慎重姿勢で臨むことから、ドルは最近の下落分を取り戻す可能性があるという。市場は来週の利上げを確実視しているものの、9月以降については見方が分かれている。先週の米消費者物価指数(CPI)を受けて、市場にはFRBの利上げ打ち止め観測が高まっているが、FRBは9月以降も利上げを断念しない可能性もある。だた、9月FOMCまでに米雇用統計、米消費者物価指数(CPI)とも2回数字を確認できる。その結果を待ちたい雰囲気も。
(18日)
東京市場で、ドル円は振幅。朝方に138.92近辺の高値を付けた後は、売りに押される展開。中国売りの動きが目立ち、香港ハンセン指数、中国上海総合指数などがほぼ全面安になる中で、リスク警戒の円買いが強まり、午後に138.32近辺まで下落した。ユーロ円もリスク警戒の円買いに押されて、朝方の156.10台から155.70台まで下落。ポンド円は181.60台から181.10台まで下落。リスク警戒の動きから米債利回りの3.80%台から3.78%台へと低下、ユーロドルは昨日上値を抑えた1.1250手前の売りをこなし、1.1264近辺まで買われた。
ロンドン市場は、ドルが上値重く推移。米債利回りの低下とともにドル円は138円台半ばから138.09近辺まで下押しされた。ユーロドルは高値を1.1276近辺に伸ばした。しかし、クノット・オランダ中銀総裁が「7月より後の利上げはあり得るが、確実ではない」「コアインフレは横ばい状態になったもよう」と発言したことがややハト派的と捉えられ、独債利回り低下を誘った。ユーロドルは1.1230付近まで一時反落。取引中盤にかけて、イエレン米財務長官は米雇用需要の高まりが後退してきていると指摘した。ドル売りとの綱引きでユーロドルは1.12台半ばへと下げ渋っている。ポンドドルは1.30台後半での揉み合いを上抜けると1.3126近辺に高値を伸ばし、その後は1.31付近で推移。明日の英消費者物価指数発表を控えて、コア前年比が+7.1%に高止まりする予想となっている。欧州株や米株先物・時間外取引は売買が交錯しており、方向性は希薄。ユーロ円は156円付近が重く、一時155.30付近と軟調。一方、ポンド円は180.70付近に下押しされたあとは181円台を回復と反発している。ユーロ対ポンドではユーロ売りが優勢。
NY市場では、ドル円が139円台まで上昇。一時137円台に下落する場面があったが、米株式市場が大幅高となり、リスク回避ムードが一服する中で、G20に出席している植田日銀総裁発言に敏感に反応したようだ。総裁は「日銀が目指す持続的・安定的な2%の物価目標までに距離があるとの認識に変化がなければ、粘り強く金融緩和を続ける姿勢も変わらない」との見解を示した。日銀が来週の決定会合で発表する展望レポートで、2023年度のインフレ見通しを上方修正するとの一部報道もあり、日銀は来週の決定会合でYCCの許容変動幅を拡大してくるのではとの期待も高まっている。しかし、上記の発言はその期待を後押しする内容ではない。本日は6月の米小売売上高が発表され、前月比0.2%増と予想を下回る内容となった。ただ、GDPの算出に使用される飲食店、自動車、建材、ガソリンを除いた売上高は前月比0.6%増と予想を上回っていた。なお力強い労働市場とインフレ圧力の緩和が引き続き消費を支えている。ユーロドルは1.12台前半に値を落とした。ポンドドルはNY時間に入ると戻り売りに押されて一時1.30台前半に下落した。
(19日)
東京市場では、ドル高・円安の流れが強まった。朝方に138.77近辺まで調整売りが入ったが、すぐに139円台を回復。139円を挟んで売買が交錯したあと、午後には139.42レベルまで高値を伸ばした。海外勢を中心とした今月の日銀会合でのYCC修正の期待が、昨日の植田総裁発言で後退しており、円売りが入りやすい地合いとなっている。ユーロ円は朝方に155.80台まで軟化したあと、156.49近辺まで上昇した。ユーロドルは昨日のドル高局面で1.1200台まで軟化も、大台は維持していた。東京市場では1.12台前半で底堅く推移している。英消費者物価指数の発表を控えたポンドドルは1.30台前半で揉み合っている。
ロンドン市場は、ポンド相場が急落した。日本時間午後3時に発表された6月英消費者物価指数で前年比が+7.9%と前回の+8.7%から伸び鈍化、市場予想+8.2%も下回ったことが背景。ポンドドルは1.30台前半から一気に1.29台前半へと下落。ポンド円は181円台半ばから180円台前半へ急落。対ユーロでもポンド売りが強まった。インフレ鈍化で欧州株は堅調に推移。ドル円はポンドドル下落がドル買い圧力となったことや、欧州株高、前日の植田日銀総裁の緩和継続姿勢の確認などで139.90台へと上昇している。ユーロドルはポンドドル急落につれて安値を1.12台割れ水準に広げたが、対ポンドでのユーロ買いが下支えとなって1.12台前半に戻している。ユーロ円はユーロ買いと円売りの双方で上昇、一時157円台に乗せた。足元ではドル買い圧力が継続しており、ポンドドル1.2910台、豪ドル/ドル0.6750台へと安値を広げてきている。ポンド安や円安の材料で相対的にドルが買われている印象。
NY市場は、ドル買いが強まった。ドル円は一時140円寸前まで買われた。下げて始まった米国債利回りがNY時間に入って前日付近まで戻していることがドルの買い戻しを誘った。米株式市場が強い動きを見せており、米経済のソフトランディングへの期待がドルを後押ししている。円安の動きもドル円をサポート。ただ、節目の140円に接近すると、オプション勢の防戦売りや戻り待ちの売りオーダーも多数観測され、いまのところ大台は回復できていない。ユーロドルは一時1.11台へと反落。ユーロドルは前日に15カ月ぶりの高値をつけたが、ここからは苦戦する可能性もあるとの指摘が出ていた。いくつかのテクニカル指標に買われ過ぎのサインが示現しているという。ECB理事の中でもタカ派として知られるナーゲル独連銀総裁のインタビューが伝わっていたが、来週の利上げはほぼ確実だが、その先の金融政策については、今後発表される経済指標次第と述べていた。前日のクノット・オランダ中銀と同様に、これまでのタカ派色が若干緩んでいる印象もある。ポンドドルは1.28台後半まで一段安となったあとは、1.29台前半に下げ渋り。英インフレではサービスインフレの底堅さが指摘されていた。
(20日)
東京市場で、ドル円は下げ一服。ドル円は前日海外市場で140円寸前まで買われたが、大台に乗せきれず反落した経緯があった。東京市場では139.11近辺まで一段と軟化。ただ、その後は下げ一服となり、午後には139円台半ばまで戻した。ユーロドルは午前のドル安局面で1.1229近辺まで買われたが、その後は伸び悩んだ。ユーロ円は156円台前半で小動き。豪ドルが買われた。6月の豪雇用統計の好調な結果を受けて豪中銀による追加利上げ観測が強まり、豪ドル/ドルは0.6840付近、豪ドル円は14日以来およそ1週間ぶりの高値となる95.24付近まで一時水準を切り上げた。
ロンドン市場は、ドル買いが優勢。米債利回りの上昇が手掛かりとなっている。米10年債利回りは3.76%付近から3.79%台へと上昇。ドル円は序盤に139.70近辺まで買われ、東京午前の下げを帳消しとした。その後は139円台半ば付近での揉み合いに。ユーロドルは1.1197近辺まで一時下落。その後の戻りは1.1210台までと限定的で、再び1.12ちょうど付近に下げている。ポンドドルは上値が重く、1.29台割れから安値を1.2889近辺に広げた。一方で、豪ドル/ドルは雇用統計の強さを受けて買い圧力が継続、高値を0.6847近辺まで伸ばした。前日の英インフレ鈍化の余波を受けて、欧州株や米株先物・時間外取引は堅調に推移。ただ、クロス円はまちまち。ユーロ円は156円台前半から半ばで揉み合う一方で、ポンド円は180円台前半から179円台に下落している。豪ドル円は買いが継続しており、95.40台に高値を伸ばしている。トルコ中銀は政策金利を15.0%から17.5%に引き上げた。大方の市場予想18.5%を下回ったがリラ売りの反応は限定的。
NY市場では、一段とドル買いが進行。ドル円は140円台を回復すると、140.50付近まで上昇。140円ちょうど付近には売り注文が多数観測されていたが、ストップを巻き込んで一気に駆け上がった。ドル全般に買い戻しが波及した。米新規失業保険申請件数が強い米労働市場を示唆したことがきっかけとなった。来週のFOMCやECB、日銀決定会合のイベントを前にドルショートを解消しておきたいムードも強まった。FRBは来週のFOMCでの利上げが確実視されている。ただ、9月以降については未知数の部分が多く、追加利上げ、据え置き、どちらにも可能性をオープンにして置くのではと見られている。ユーロドルは1.11台前半まで下落。短期のフェアバリューモデルによると、ユーロドルは依然として2.5%程度の割高感があるとみられた。ポンドドルは一時1.2840付近まで下落。前日の英消費者物価指数は総合、コア指数とも予想を下回り、インフレ鈍化の兆候が示されていた。ただ、英中銀が注視しているサービスインフレは依然として高水準が続いており、市場も8月3日の金融政策委員会(MPC)での0.50%ポイントの大幅利上げの可能性は温存。
(21日)
東京市場は、来週の中銀イベントを前に様子見ムードが広がった。ドル円は、朝方に6月の日本消費者物価指数(CPI)の総合と生鮮食品を除くコアが前月を上回ったことから、日銀の緩和修正観測を背景に円が買われ、一時139.75付近まで弱含んだ。しかし、その後は下げを帳消しにして、午後には140.33付近まで上昇。来週の日米中銀イベントを前に方向感に欠けた展開となった。ユーロ円も朝方に155.59付近まで下落した後は午後に156.29付近まで反発。ユーロドルは前日の下落の動きにやや調整が入っているが、1.1129から1.1145までの狭いレンジでの取引にとどまっている。
ロンドン市場は、円相場が急落している。関係者発言として「日銀は現時点でYCC修正の必要性乏しいとみている」と報じられたことに反応した。ドル円は140円台前半での揉み合いを上放れると一気に141.96近辺まで買われ、142円に迫った。その後、神田財務官が「為替相場、過度の変動は望ましくない」と定番の円安けん制発言を行ったが、一瞬141.50を割り込んだ後は再び141.80付近に買い戻されている。円が全面安となるなかでユーロ円は156円台前半から158.05近辺まで急伸。ポンド円は180円台後半から一時182.52近辺まで、豪ドル円は95円台前半から95.79近辺まで高値を伸ばした。ドル円の上昇がややドル買いの動きを広げたが、ユーロドルは1.11台前半での取引にとどまっている。ポンドドルは1.29付近で上値を抑えられると一時1.2840近辺まで下落。豪ドル/ドルは0.6780台から0.6744近辺まで下げた。ドル円の急伸を受けてドル指数は10日線を明確に上回っており、7月12日以来のドル高水準に反発している。
NY市場は落ち着いた動きとなった。ロンドン市場での円安進行の後、いったん調整が入る場面が見られたが、141円20銭台までの押し目にとどまり、午前中に141円台後半を回復。午後は141円台後半で膠着した。来週の市場で米FOMC、ECB理事会、日銀金融政策決定会合と主要通貨の中銀会合が相次ぐなどイベントを控える中で、ドルの上値追いに慎重姿勢が見られる一方、下値もしっかりで動意に欠ける展開となった。ユーロドルは東京市場からの1.11台前半推移の中で、レンジの中心付近でもみ合いとなっており、こちらも動意に欠ける展開。
執筆者 : MINKABU PRESS
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