【来週の注目材料】政策金利見通しなどに注目集まる~米FOMC
15日、16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。政策金利と量的緩和策については現状維持が見込まれています。物価の上昇傾向もあり、一時は今回のFOMCでのテーパリング開始示唆などが期待されていましたが、雇用統計の厳しい数字などもあり、こうした見方は後退しています。
とはいえ、物価上昇が続く中、将来的な利上げについて期待感も広がるところに。声明やパウエルFRB議長の会見に注目が集まります。また、今回のFOMCでは四半期に一度発表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP:Summary of Economic Projections)が発表される回にあたっており、こちらにも注目が集まっています。
今月4日に発表された米雇用統計、非農業部門雇用者数が2か月連続で事前予想を下回る弱い結果となったことで、今後への警戒感がやや強まっています。FRBはイエレン前議長(現財務長官)時代から雇用と物価の二大命題のうち、雇用問題を重視するハト派な姿勢を維持しており、声明やパウエルFRB議長の会見も、慎重姿勢を崩さないとみられます。
ただ、10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+5.0%と事前予想の+4.7%、4月分の+4.2%を超えるかなり高い水準なりました。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア部分の前年比も事前予想の+3.5%、4月分の+3.0%を超える+3.8%となっています。米国のインフレターゲットの対象はPCEデフレータであってCPIではありませんが、同様の指標だけに変化の傾向は似ており、4月のPCEデフレータは前年比+3.6%、コアPCEデフレータは+3.1%と高い数純を示しました。5月のPCEデフレータ(発表は6月25日)もかなり強くなると見込まれます。米FRBは直近の物価上昇について一時的なものという姿勢を基本的には維持しています。ただ、地区連銀総裁などからこうした姿勢に対する懸念も示されているなかで、今回の消費者物価指数がかなり強く出たことが市場の警戒感を誘っています。
前回3月に示されたSEPでは今年年末時点での物価見通しについて、PCEデフレータが+2.4%(前々回12月時点で+1.8%)、コアPCEデフレータが+2.2%(同じく+1.8%)と、大きく上方修正され、米国のインフレターゲットである+2.0%を超えてくるという見通しが示されました。今回さらに大きく上方修正されるような状況が見られると、市場のテーパリング開始期待は相当強まると予想されます。
また、SEPで示される政策金利見通しにもかなりの注目が集まりそうです。政策金利に関しては全体の見通しだけでなく、各メンバーの見通しをドットで示したドットプロットが同時に示されます。前回3月のドットプロットでは2023年末までの金利据え置き見通しが大勢となりました。ただ、内訳を見ると18名中4名が2022年中の、18名中7名が2023年末までの利上げを見込んでいます。2023年まで金利据え置きを見込むメンバーから、数名が利上げ見通しに転じると、利上げ派が大勢になる状況。これはかなりのインパクトでドル買いにつながる可能性があります。
なお、堅調な景気回復動向を受けて、3月のSEPでは6.5%とされた今年の経済成長見通し(12月時点では4.2%)の上方修正などもドル買い材料となります。
経済成長見通し、物価見通しが引き上げられ、利上げ見通しが前倒しされてくるようだと、一時は後退した8月後半のジャクソンホールシンポジウムでのテーパリング開始示唆という市場の期待が再び強まってくる可能性も。発表直後だけでなく、中長期的なドル買いにも要注意です。
一方で、ここにきて厳しい状況を見せる雇用情勢に関しては、3月SEPで示された年末時点での失業率4.5%(12月時点では5.0%)見通しがどうなるかが気になるところ。
5月の雇用統計では非農業部門雇用者数が冴えない一方で失業率は4月の6.1%、事前予想の5.9%を下回る5.8%となりました。ただ、この数字は労働参加率が61.6%まで低下した影響が指摘されています。非農業部門雇用者数が期待ほど増えない背景として、感染リスクが高い接客業などが敬遠されていること、学校のオンライン授業などが増えることで外に働きに出ることが出来ない親が増加していること、手厚い失業給付などの影響で無理に働かない人が増えていることなどが指摘されており、こうした状況が労働参加率の低下にも寄与していると見込まれています。労働参加率が低下する中での失業率の低下は、長期の低下傾向にはつながらず、反動で将来の失業率悪化を招く可能性が高いだけに、失業率予想も悪化してくる可能性があります。この場合、イエレン財務長官をはじめとする米政府当局と連携して米FRBは景気のサポートを強化する方向に動くとみられますので、緩和姿勢の長期化見通しを支え、ドル売りの材料となります。
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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