上にブレイクする前の、振るい落としは終わったのか?
「静かな」SQ前の水曜日
昨日、日経平均がザラ場で大きく下げ幅を縮小したのに続いて、本日上昇転換することが期待されていましたが、寄り前の時点で日経CME先物や先物夜間取引は、たいした幅で上がってはいなかったことから、危ぶまれてはいました。
はたせるかな、本日、日経平均自体は伸びきれず、むしろ続落、ということになりました。4日続落です。
よく朝方の下落幅を引けまでには縮小したのですが、結局昨日が底入れとなるチャンスを逸しました。
ちなみに、グローベックス市場ではNYダウ工業株先物が130ドル安まで気配を切り下げていったので、これも指数の足を引っ張ったかもしれません。ダウ工業株の場合、昨晩311ドル高でしたから、このくらいの短期利益確定による反落はあったとしても、不思議ではありません。引け時点では77ドル安にまで改善しています。
本日は、通常であればSQ前の「荒れる水曜日」でしたが、先週から大荒れだったからでしょうか、「静かな水曜日」でした。
これで4日間、相場が崩れた期間の下落幅は1,022円。ほぼ1,000円安です。
明暗を分けた業種別騰落
その元凶、つまり指数を重くしていたのは、あろうことか半導体でした。信越化学<4063>、アドバンテスト<6857>、ひどいのはSUMCO<3436>でしょうか。このあたりが、どうしても指数を重くしていた観があります。
いささか今日の半導体の弱さにはがっかりさせられるものがありました。
OLC<4661>が高値更新しているのは、ディフェンシブということなのでしょうが、それ以上にやはり夏休みというシーズンストックとして買われている側面が強いのではないかと思います。それは、OLCにとって景気の取り込みの重要な時期であるということからすると、単純なディフェンシブとも言えない気がしています。
東証REIT指数が高値更新をしているというのは、まさに確定利回り商品ですから、半導体が弱いのと対照的に強いという点、これは理解できます。
確かに業種別騰落を見ますと、圧倒的に上昇はディフェンシブ・内需系、下落は景気敏感系とはっきりしています。
なお、中小型株が比較的強いと言う印象があります。東証マザーズは、そーせい<4565>が2%級の下げであったにもかかわらず、しっかりプラスで終わっているところを見ますと、全体的に堅調だったということになります。ただ、見ようによっては、新興銘柄の決算発表は大型株の後で、むしろこれからピークがやってくるということからしますと、単純にリスクを取る動きが始まっているのだとも言い難いものがあります。
シェイクアウト(振るい落とし)は終わったのか?
以前、解説したことですが、薄商いの膠着状態がずっと続いていた後に、この大きな相場滑落となりました。
当レポートでは、このシナリオについても想定していたのを覚えておいででしょうか。
得てして、膠着状態から上にブレイクするときには、相場は余計な買い手を振るい落とす「シェイクアウト」の相場が発生したりすることがある。
これは、一応警戒しておきましょう、ということで述べていたものです。
もし、これが景気終焉、相場終焉ということであれば、シェイクアウトで済むわけではありませんが、もし、シェイクアウトだとすれば、おのずと戻るはずです。中途半端な買い手が、恐怖感から投げ落とされて、コアな確信犯的な買い手だけが残るわけです。
需給は軽くなります。日柄も関係するでしょうが、このケースの場合は、底入れしさえすれば、早晩上昇相場に転換していくことも十分期待できるわけです。
みんなが「このへんくらいまでだろう」と思う日経の水準
なにが真実かはあまり重要ではありません。
運用で重要なのは、みんながどう思っているか、です。
たとえば、現在の日経平均がどこまで下がるかという点で言えば、よく言われているのはPBRが1倍を割れるのが、日経平均の2万円水準です。
したがって、これを割ることは無いだろうし、割っても一時的だろう、というのが、ごくごく一般的にある見方です。
市場が素直な場合には最大公約数の市場参加者がそう思う水準というのは、とても有効ですが、逆に(ここがむしろ重要です)、そのコンセンサスが破られた場合には、とんでもない下げになってしまうということです。総投げになるからです。
ここは注意いたしましょう。
8月の相場というのは、そもそも弱いというのが一般的なコンセンサスです。当レポートでもこの理由については、述べてきました。
ところが、逆に8月このコンセンサスが覆されたときには、(これを市場では「バスカヴィル家の犬」と呼びます)とんでもない上昇になってしまいます。
この夏、さて、皆が思うコンセンサスは、コンセンサス通りに素直に弱いのか。それともコンセンサスを覆す、とんでもない上昇に戻っていくか。
わたしは、近年の傾向としては、下ブレ(シェイクアウト)としての効果が今回の急落にあったとするなら、夏場から秋にかけて、相場がもしかしたらかなりの上昇になってくるのではないか、と期待しています。
戦略方針
日経ダブルインバースETF<1357>の買い持ち持続です。6週線、3週前の終値の二つを抜かない限り、日経レバレッジETF<1570>に入れ替えることはできません。
執筆者 : 松川行雄|有限会社増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
大和証券外国株式部勤務の後、投資顧問業を開業。2013年2月ヘッドハンティングにより増田経済研究所に入社。現在同社発行の「日刊チャート新聞」編集長。株式セミナーに於ける投資理論は個人投資家に満足度100%の人気を博す。