当然の調整。しばらく米国も頭を冷やす
日経平均、5日線割れ
日経平均は92円安の21,193円。一時は21,114円まで下げています。
全体に、押した一日という印象が強いです。日本通信<9424>が材料で、壱番屋<7630>は値上げでむしろ成長という点を好感して、いずれも高騰していますが、前場段階で早くも大きな陰線になるくらいですから、およそ上がっても押され、下手をすればのっけから下がるというものが多発。
物色もはっきりしません。強いて言えば、大三元点灯の常習銘柄であるニチイ学館<9792>などが一貫右肩上がりを維持しているので、ディフェンシブ系にまた物色が戻ってきているのかと思いきや、必ずしもそうとは言えません。
業種別の上昇率ランキングでも、上位10業種には、海運、非鉄、鉄鋼など景気敏感セクターが食い込んでいることから、物色も色合いがはっきりしません。
ただ、米国株市場がFOMC以降、暴走気味に上昇していたことを考えれば、ここは多少調整があっても当然のところです。なにしろ、4-6月決算控えて、プレアナウンスメント期間は調整して当たり前のタイミングです。しばらくおとなしくしいたほうが良いでしょう。
グローベックス市場は、NYダウ工業株が30-55ドル安の気配でおおむね推移していました。さほど弱いということはありませんでした。
イラン問題~為替106円台、リスクオフムード
後場、東京市場が下げ幅拡大となったのは、ドル円が106.77円まで一時円高に振れたためでした。
もとより、米国長期金利が低下してきた流れの中で、にわかにイラン情勢が緊迫化している、とおそらく投機筋が相場を撹乱しているのでしょう。
そんなものは、ありません。
一方国内では、トランプ大統領が側近に、不公平な日米安保条約破棄という案件の相談をしたというテロップが流れたこともあります。
これで、逆に軍事関連が上昇するという、一過性の相場が発生しています。
日立造船<7004>が200日線突破。三菱重工<7011>が5月22日以来の高原状態から、高値更新をトライし始めるような動きもそうでしょう。
小型では石川製作所<6208>、細谷化工<4274>がそうです。
いわゆる相場のスキを狙った幕間つなぎの物色でしかないでしょう。
G20に続くイベント~OPEC、原油価格動向
(G20のイベント通過)
今週末はG20(大阪サミット)です。ここでまた政治的なイベントを通過します。
米中協議の再開はほぼ決まりであろうと推察されるわけですが、問題は関税です。一説には協議再開ということで、G20後にアメリカは関税引き上げをいったん延期するのではないかという観測もあります。
私見では、そうではなく、協議再開はする、しかし関税は予定通り、G20後に引き上げる、というのが一番中国を追い詰める効果があるわけです。それなら習近平主席のメンツ丸つぶれになるからです。米国の恫喝政治は持続することになるわけです。これに香港カードをアメリカは握り続けるわけですから、強力な中国への圧力になります。
(原油価格を決定しているもの~最大消費者と生産者)
かねてから、アメリカはOPECに対して、原油価格引き下げを要求しており、圧力をかけています。
サウジは単年度の国家財政が赤字ですし、長期的にも資源一本槍の国情から、新産業分野の創出が必要なところ、膨大な資金が必要です。そのため、原油価格を引き締め気味にしないとその原資が得られません。
両者痛み分けで、このOPECは恐らく協調減産の現状維持で表面的には決まるかもしれませんが、おのずと来年の大統領選挙をにらんで、アメリカが原油価格の上昇を当面容認することはありません。それでなくとも、ここから夏場に向けて、アメリカはドライブシーズンですから、ガソリン需要は増大し、放っておいても原油価格上昇の季節的変動要因があるところです。サウジとしても無理に協調減産する必要もないはずです。
一般的には、メディア報道によりますと、今回のOPECは協調減産の方向だという見方が多いようですが、わたしは個人的にはむしろ実質的に、協調減産は終了する方向になるのではないかと思っています。
(ヘッジファンドのポジション~原油縮小一巡、金買い積み上げも一巡)
シカゴの投機筋のポジションを見る限り、直近まで原油ロングを縮小し、金ロングを増大させてきていたわけですが(原油価格下落、金上昇)、ここへきて金先物のロングポジションは、昨年1月時点の規模にほぼ到達してきていることから、ここから金ポジションの積み上げは、あれが彼らの信用余力の限界だとすれば、目先これ以上の積み上げは難しいかもしれません。逆に言えば、原油ポジションの縮小も収まるはずで、現に足元では原油価格はやや復調気味です。
(トランプ大統領は、すべてを来年の選挙のために政策を発動する)
結局、トランプ大統領にしてみれば、来年の大統領選挙に勝つことだけが政治目的化していると推察されます。
つまり、株高、景気拡大、不動産市場活況です。
従って、その必要すらないにもかかわらず、連銀に利下げ圧力をかけ続けています。
また、国民の消費活動を押し上げるために、原油価格の低迷という圧力をOPECにかけています。
さらに、国威発揚と米国企業に有利な貿易環境を作り出すために(もちろん国際競争力で中国を脱落させる戦略でもあります)、中国という最大の難敵を関税で締め出し、回答を得ようとしています。できれば中国を財政難に陥らせ、ひざまずかせるところまで行きたいはずです。
これらはすべては、大統領選に勝つという一点に集約した政策方針です。
これは長丁場です。来年初めのスーパーチューズデーまでは少なくとも続くアメリカのスタンスでしょう。
戦略方針
日経平均レバレッジ<1570>の持続です。
執筆者 : 松川行雄|有限会社増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
大和証券外国株式部勤務の後、投資顧問業を開業。2013年2月ヘッドハンティングにより増田経済研究所に入社。現在同社発行の「日刊チャート新聞」編集長。株式セミナーに於ける投資理論は個人投資家に満足度100%の人気を博す。