今週のまとめ6月17日から6月21日の週
17日からの週は、ドル売りが強まった。米FOMCで「辛抱強く」の文言が削除されたことで、利下げなど緩和方向へのアクションがとりやすくなった。米債利回りが大幅に低下、米株をはじめとした世界の株式市場が上昇する流れが示現している。米S&P500指数が史上最高値を更新した。米10年債利回りは節目の2%を一時下回った。ただ、米FOMCのハト派転換の背景には、米中貿易戦争などを背景とした世界景気鈍化への警戒感があることは否めない。また、中東やトルコなど米国をめぐる政治的な緊張も影を落としている。ドル円は107円台に下落。ユーロドルは1.13台、ポンドドルは1.27台などに乗せる動き。クロス円は株式市場の大幅高には反応しにくく、やや上値重く推移した。米FOMCに先立ってECBのドラギ総裁が追加緩和を示唆したことでユーロ売りが強まる場面があった。日銀は長期金利操作の運用に柔軟性をもたせるとしたが、市場は反応薄だった。英中銀は政策金利据え置きも、成長見通し引き下げや合意なき離脱リスクの指摘などハト派の印象だった。豪中銀総裁は追加緩和示唆を繰り返した。各国中銀の緩和姿勢が確認された一週間だった。
(17日)
東京市場で、ドル円は底堅い動き。先週末の米小売売上高が好結果だったことを受けて市場では今週の米FOMCにの利下げが見送られるとの観測が広がり、ドル買いを誘った。週末に大規模デモが報じられた香港では、ハンセン指数が大幅高となっており、懸念が後退したこともドル円およびクロス円の上昇につながった。ドル円は一時108.70台まで買われた。ユーロ円は一時122円台手前までの上昇。ユーロ円は1.12台前半で小高い動き。
ロンドン市場は、値幅は限定的も前週末からのドル高水準を維持。米債利回りの小幅上昇とともにドル円は108.72レべルまでじり高。ユーロドルやポンドドルは序盤に小幅軟化も欧州株や米株先物が比較的底堅く推移しており、クロス円の上昇が欧州通貨の下支えとなっている。ユーロドルは1.12台割れを回避している。ユーロ円は122円手前へ、ポンド円は137円手前へと水準を上げている。目立った経済統計発表はなかった。英国での調査ではジョンソン氏の保守党での支持が高まっていた。一方、欧州関連は景気鈍化への警戒感が根強い。長期インフレ期待が一段と低下。独連銀月報では、第2四半期は若干のマイナス成長になると予測した。クーレECB理事やデコス・スペイン中銀総裁は追加緩和のを検討、金利階層化などに含みを持たせている。
NY市場は、小動き。ドル円は108円台半ばでの推移。ドル売り先行も買い戻しと方向性に欠けた。FOMC会合を控えて動きにくい状況。市場では年内2-3回の利下げを織り込む動き。ただ、過度な織り込みとの見方もあった。米株は堅調に推移しているが、ドル円は上値を攻め切れない。ユーロドルは1.12台前半で買戻しが先行も動きは限定的。ポンドドルは1.25台半ばまで水準を下げた。市場は英保守党の党首選に注目しているが、EU離脱強硬派のボリス・ジョンソン前外相がトップを走っている。同氏は合意無き離脱の準備も必要との姿勢を示しており、市場は不透明感を強めているようだ。
(18日)
東京市場では、豪ドル売りが広がり、円高の動きに波及。豪中銀議事要旨で追加緩和の必要性が指摘されたことが背景。豪ドル円は1月3日以来の74円台割れを示現した。対ドルでも0.68台後半から前半へ下落。豪10年債利回りは史上最低水準を更新。ドル円は108.20台まで下落した。米10年債利回りの低下も重石となった。ユーロドルは1.12台前半で1.1240近辺まで上昇。豪ドル以外の通貨ではドル売り圧力もみられた。
ロンドン市場は、ユーロが下落。ドラギECB総裁が講演で、見通しが改善しなければ、追加緩和が必要にと述べたことが背景。ユーロドルは1.1240台まで買われていたが、一気に1.12台割れへと下落。ユーロ円も121円台後半から前半へと売られた。加えて、この日発表された独ZEW景況感指数が大きく落ち込んだほか、月次のユーロ圏消費者物価指数の伸びが予想を下回ったこともユーロを圧迫。その後、トランプ米大統領が、ECBの刺激策について米国との競争にアンフェアだと批判、ユーロ買いに反応したが、動きは限定的。その他主要通貨は比較的小動き。ドル円は108.20近辺まで軟化していたが、ドラギ発言後は欧州株が上昇に転換、ドル円も下げ一服。豪ドルも欧州株高とともに下げ一服。ポンドドルは1.25台前半、ポンド円は135円台後半など安値付近で揉み合っている。
NY市場は、トランプ発言でドル円が買われた。序盤には山形県沖で発生した地震を受けて108.10近辺まで下押しされた。しかし、その直後にトランプ米大統領が日本でのG20で習主席と会う。習主席とはG20で時間をかけて会談する」と発言、ドル円は一転して買われ108.65近辺に高値を伸ばした。米中協議への期待感が高まり、米株式市場は大幅高となった。ユーロドルは1.11台後半での推移。ドラギECB総裁の追加緩和示唆発言の影響が残り、上値を抑えられた。ポンドドルは下げが一服、1.2560近辺まで反発した。2回目の英保守党党首選では、引き続きジョンソン氏がトップで通過、市場での合意なき離脱への警戒感は根強い。
(19日)
東京市場で、ドル円は振幅。朝方は前日NY市場での上昇を受けて108.60台まで再び上昇。株高の動きも下支えとなっていた。しかし、ロシアからのS400の購入を決めたトルコに対して米国が新たな制裁を検討との報道で一転して円買いに。ドル円は108.30台まで下落した。トルコリラが下落。ドルリラは5.83台から5.9170近辺まで上昇した。リラ円は一時18.28近辺まで下落。
ロンドン市場は、ややドル高方向への調整。ただ、米FOMC会合の結果待ちとなっており、全般に小動き。ドル円は108円台前半で底堅く推移。ユーロドルは1.12台を回復。ポンドドルは1.25台半ばから後半へと上昇。英消費者物価指数が予想ほど鈍化しなかったことが下支え。クロス円でも東京市場での下げを戻した。先週末からドル買いの流れを示したドル指数は、足元では上昇一服に。欧州株は序盤に売り先行もプラスに転換する動き。米債利回りは2.08%台へと小幅上昇。デギンドスECB副総裁は、ECBは複合的な行動でインフレを修復することできる、と述べたが先日のドラギ総裁発言のようなインパクトはなかった。
NY市場では、FOMCの結果を受けてドル売りの動きが広がった。FOMCは、市場の利下げ期待が強まる中、今回は金利据え置きとなったが、声明から「辛抱強く居られる」の文言を削除するなど、期待通りに利下げの可能性を示唆してきた。このところハト派色を強めているブラード・セントルイス連銀総裁が利下げを主張し反対票に回ったこともドル売り材料。一方、金利見通しは意見が分かれ、中央値は年内変わらずだった。ドル円は一時108円割れ。ただ、米株が大幅高となり108円台にかろうじて戻した。ユーロドルは1.12台乗せ。FOMC後に1.1250近辺まで上昇した。前日のドラギECB総裁発言を受けた下落を帳消しにしている。ポンドドルは一時1.2675近辺まで上昇した。3回目の英保守党党首選では、ジョンソン氏が差をつけてトップを維持。
(20日)
東京市場では、ドル売りが加速した。前日の米FOMCを受けて米10年債利回りが一気に低下、一時1.97%近辺をつけた。米利下げ期待が高まり、7月はほぼ100%との確率を織り込んでいる。株高、債券高(利回り低下)とともにドル売りが進行。ドル円は108台前半から107.50台へと下落。その後も戻り鈍く揉み合いに。ユーロドルは1.12台前半から1.1270台へと上昇。朝方発表されたGDPが予想を上回ったNZドルは対ドルで0.6580近辺まで買われた。ドルカナダは1.33台割れから1.3230近辺へと下落。原油高もカナダ買いにつながった。
ロンドン市場は、リスク選好の円売りが優勢。米株先物に続いて欧州株も堅調に推移。ロンドン市場では株高・円安の面がみられた。ドル円は107.50割れまで下押しされたあとは107円台後半に反発。リスク選好の動きに乗ってユーロ円は121円台前半から後半へ、豪ドル円は74円台前半から後半に上昇。ポンド円は136円台半ばから一時137円台に乗せる場面があった。ただ、英中銀が政策金利据え置きの発表とともに、第2四半期の成長見通しを下方修正、ブレグジットに関して英中銀の前提と市場の見方との間に緊張があると指摘した。ポンドはこれを受けて上昇一服となり、ポンドドル1.27台割れ、ポンド円136円台後半へと押し戻された。ドル売り圧力は健在で、ユーロドル1.13台乗せ、豪ドル/ドル0.69台前半と英中銀発表後も高値を伸ばす動きが相次いでいる。
NY市場は、ドル売り・円買いが優勢。前日のFOMCを受けて市場での早期利下げ期待が強まっており、米10年債利回りは心理的節目の2%を下回り、ドル売り圧力に。また、イラン情勢が緊迫化しており地政学リスクから円買いの圧力が加わった。イランの革命防衛隊(IRGC)がホルムズ海峡上空で米国無人偵察機を撃墜したことが背景。タンカー攻撃もあり、米国側は反発姿勢を示している。軍事衝突のリスクが指摘され緊張状態にある。ドル円は107円台前半へと下落。ユーロドルは1.13台を一時回復。ポンドドルは1.27台を挟んだ振幅。米株は堅調で、S&P500指数は史上最高値を更新した。しかし、クロス円は総じて上値重く推移しており、円買いが優勢。NY時間に入って英保守党党首選の結果が発表され。ジョンソン前外相とハント外相が決選投票に駒を進めた。
(21日)
東京市場は、円買いが優勢。ドル円は一時107.05レベルまで下落した。昨日報じられたイラン革命防衛隊(IRGC)が米無人偵察機グローバルホークを撃墜した件に関して、米国とイランとの緊張が高まるとの懸念がドル売り円買いを誘った。NYタイムズが、トランプ米大統領がイランへの攻撃を許可したものの、数時間後に撤回したと報じたことで、両国間の軍事衝突への懸念が広がったことも重石。日経平均は200円超安で引けた。ドル相場は当初、売りが先行したが、クロス円の軟化とともにドル買いに転じている。ただ、値動きは限定的。ユーロドル1.13挟み、ポンドドル1.27台挟みの振幅。
ロンドン市場は、ドル買いの動き。週末を控えて米FOMC後のドル売りの流れに調整が入った形。ドル円は107円手前でサポートされると107.58レベルまで反発。ポンドドルは1.26台前半、豪ドル/ドルは0.69ちょうど近辺まで下押しされている。欧州株は堅調にスタートしたが次第に上値が重くなっており、クロス円も序盤の上昇を消す動き。米国とイランの緊張が意識された面も。一方、ユーロ相場は堅調。一連の欧州PMIの6月速報値が予想を上回る改善を示したことが買いを誘った。ユーロドルは1.13台乗せへと上昇、ユーロ円も序盤からの買いの流れを維持。対ポンドでのユーロ買いも進行している。
NY市場でドル円は、序盤こそ買戻しが見られたものの依然として上値が重い。ドル売りの流れが続く中、序盤の買い戻しはトランプ大統領のイランに関する発言がきっかけとなっていたようだ。大統領は、イランに対する3箇所への空爆を承認したが、軍司令官に何人(イラン兵)が死ぬかと尋ねたところ、150名との答えに、米無人機撃墜に対する報復としては、相応ではないと判断し中止したという。一時107.70近辺まで上昇したものの、上げを維持できずに後半は戻り売りに押された。
執筆者 : MINKABU PRESS
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