為替相場まとめ11月4日から11月8日の週
4日からの週は、米大統領選に翻弄される相場展開となった。先週まではトランプ氏優勢とみられていたが、先週末の調査ではハリス氏との支持率が拮抗を伝えらえ市場の見方は混乱した。週初は前週でのドル高が調整される動きがみられた。しかし、選挙後の開票結果では続々とトランプ氏勝利が伝えられ、市場は熱を帯びた形でトランプトレンドを強めた。高関税や国内減税、拡張的政策などがインフレ圧力となり、ドル高、債券利回り上昇を招来した。また、米株は急上昇した。しかし、米FOMCを控えてその動きは一巡。市場は冷静さを取り戻すとともに、熱狂相場に対する疲れもみられた。米FOMCでは予想通り政策金利が25bp引き下げられた。声明ではインフレに関する「自信深めた」の文言は削除された。パウエル議長は、削除した文言は利下げ開始に伴うものだったと説明した。今後も25bpの通常ペースで利下げを継続するとの市場観測に特段に変化はみられていない。まだ、同日には英中銀も政策金利25bp引き下げを発表した。英予算案の影響でインフレ見通しが0.5%ポイント弱押し上げられるとの見方が目を引き、ポンド買い圧力となった。また、ドイツ大手銀行は、ECBの最終到達金利水準の見通しを従来の2.25%から1.50%へと大幅に下方修正した。トランプ氏の関税引き上げの可能性が、来年のユーロ圏経済を圧迫すること懸念としていた。ドル円は一時154円台まで買われ、週末には加藤財務相が円安けん制発言を行った。トランプ政策への不透明感もあって、週末にかけては円高方向に傾く動きをみせた。もっともドル安圏から買いも入っていた。
(4日)
東京市場は文化の日の振り替え休日のため休場。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。明日の米大統領選を控えて、トランプトレードによるドル買いに巻き返しの動きが入っている。先週末の米世論調査ではトランプ氏とハリス氏の支持率がほぼ拮抗していた。トランプ氏優勢との見方にやや懐疑的な動きがみられている。先週末の米雇用統計では非農業部門雇用者数の増加が1.2万人に留まったが、ハリケーンや大規模ストライキの影響との見方が広がったことで一過性のものとしてドル買いが広がった。しかし、米大統領選に対する不透明感が高いことから、週明けにはドル買いの動きは続かず。ドル円は151円台半ばへと軟化しており、先週末NY終値からは1.5円程度下げている。米10年債利回りは4.31%付近から4.27%台へと低下するなかで、ユーロドルは1.09台乗せへと上昇。ポンドドルは1.29台後半から1.30台手前までの推移。今週の英中銀政策金利発表では25bp利下げ観測が広がっており、ポンド相場の上値は重い。ユーロ円が165円台での振幅と方向感無く推移する一方で、ポンド円は197円台での振幅から196円台へと下放れている。
NY市場では、ドル売りが一服。ドル円は一時151円台に値を落としていたが、152円台前半に戻す展開。市場は明日の米大統領選に焦点を集めており、その結果待ちの雰囲気が強かった。米大統領選の情勢は予想通りの接戦となっており、どちらが勝つかはなお未知数といったところ。週末の世論調査でハリス氏の優勢が示され、トランプ氏勝利の見方が若干後退。これがドル売りを誘発していたとの指摘も出ていた。ユーロドルは買いが優勢となり、一時1.09台まで上昇する場面も見られた。ただ、NY時間に入ると1.08台に戻している。200日線が1.0870付近に来ているが、その水準を再び上回っていた。今後については米大統領選を受けての反応次第の面が強い。ポンドドルは1.30手前まで買い戻される場面が見られたものの、NY時間に入って1.30台を回復することなく伸び悩んだ。21日線と100日線が1.30ちょうど付近に来ているが、その水準で上値を抑えられており、10月以降の下げトレンドはなお継続しているようだ。英中銀は今週7日に金融政策委員会(MPC)を開催するが、先週のリーブス英財務相の秋季予算案に対する英中銀の評価がポンドをやや下支えする可能性があるとの指摘が出ている。
(5日)
東京市場では、ドル円が底堅く推移。朝は152.10台で取引を開始。本日の米大統領選を前に様子見ムードが広がる中、日経平均の500円以上の上昇、中国本土株の堅調な動き、またそれを受けて寄り付きのマイナス圏から買いに転じて1%超上昇した香港ハンセン指数の動きなどが下支えとなった。午後には152.55近辺まで上値を伸ばした。ユーロ円はドル円の上昇を受けてしっかりも、165.92近辺までと166円を付けきれず。ユーロドルは朝からほぼ膠着。レンジはわずかに8ポイント。これまでトランプ共和党大統領候補が優勢との思惑からドル買いが入りやすくなっていたが、終盤戦に入ってハリス民主党候補が巻き返しを見せ、ほぼ横一線の状況。米大統領選を前に行き過ぎた動きにも警戒感がみられた。
ロンドン市場は、ドル売りが優勢。米大統領選投票がいよいよ始まるなかで、世論調査ではハリス氏とトランプ氏の支持率はほぼ拮抗している。これまでのトランプ氏優勢を受けたトランプトレードのポジショニングを、よりバランスの取れたものに調整する動きがみられている。豪ドルやNZドルなどオセアニア通貨が好パフォーマンスを示しているほか、ユーロやポンドなども対ドルで上昇。ドル円もわずかながら本日の安値を広げている。クロス円も豪ドル円を中心に堅調。この日発表された中国財新サービスPMIが予想を上回り、全人代に向けた中国政府の追加策への期待も豪ドル相場に好感されているもよう。ドル円は152円台前半から半ばで上に往って来い。ユーロドルは1.08台後半から1.09台乗せ水準へ、ポンドドルは1.29台半ばから1.30手前水準へと上昇。豪ドル/ドルは0.65台後半から0.66台前半へと買われている。ユーロ円は東京市場で買われたあと165円台後半で、ポンド円は197円台後半でわずかに高値を伸ばしている。豪ドル円は100円台前半から後半へと高値を追う動き。
NY市場では、ドルの戻り売りが強まった。ドル円は一時151.35円付近まで下落する場面が見られた。市場は本日の米大統領選の投開票に焦点を集めており、前日に引き続きその結果待ちの雰囲気が強まった。為替市場のシナリオはトランプ氏であればドル高、ハリス氏であればドル安との見方も出ている。一方、トランプ氏であっても、市場はこれまでのトランプトレードで、それを十分に織り込んでおり、一旦材料出尽くしのドル売りのリスクも留意されるとの声も。ユーロドルは1.09台に買い戻された。EUへの関税の脅威から、トランプ勝利の可能性に対してユーロは最も脆弱と見られている。しかし、そのシナリオは先週までにかなり織り込まれている状況。結果がいつ判明するか未知数な部分も大きい。ポンドドルは買い戻しが優勢となり、ここ数日上値を拒んでいた1.30台を回復。きょうの上げで100日線と21日線を上回り、米大統領選を受けた明日以降の動きが注目される。きょうは英10年債の入札が実施されていが、需要は約1年ぶりの低水準となった。リーブス英財務相が10月30日に発表した拡張的な予算案と、米大統領選に対する投資家の根強い不安が反映されたもよう。
(6日)
東京市場では、米大統領選結果をめぐりドル高に動意づいた。ドル円は151.50台で取引を開始。東京朝はいったん円買いの動き。151.30前後を付ける動きを見せたが、そこから一気にドル買い・円売りとなった。米大統領選の開票が始まって以降、米賭けサイトでトランプ氏の勝利見通しが一気に強まったこと、激戦州の中で開票が早かったジョージアで世論調査を超えるトランプ氏のリードが見られ、トランプ氏優勢が報じられたことなどに敏感に反応した。昼前後には154.30台まで上値を伸ばした。午後には153.10付近まで反落も、すぐに買いが入った。大手メディアの一部が激戦州ペンシルベニアでのトランプ氏勝利を報じたこと、大手大統領選サイトがトランプ氏大統領選勝利を報じたこと、ハリス氏が本日の演説予定を延期したことなどから買いが強まり154.38レベルに高値を伸ばした。ドルが全面高となり、ユーロドルは1.09台から1.07付近へと大幅下落。ポンドドルは1.30台半ばから1.28台半ばへと下落。ユーロ円は165円台での推移にとどまり、ドル主導の展開だった。米国関係の警戒感が強いメキシコは朝の20.03から20.80まで上昇。2022年以来のドル高・ペソ安。
ロンドン市場は、ドル高水準で推移。東京午後には激戦州であるペンシルべニア州をトランプ氏が制したとの報道で同氏の勝利がほぼ確定した。史上二人目の大統領再選となった。ドル円はロンドン朝方には154.38近辺に高値を伸ばした。その後は154円を挟んだ水準での高止まりが続いている。いわゆるトランプトレードの再燃となっており、ドルが全面高商状。ユーロドルは1.07台と東京市場からの安値圏を離れず。ポンドドルは東京市場での下落を受けた1.28台で推移。対ユーロではポンド買いが優勢。あすは英金融政策委員会の結果が発表される。市場では25bp利下げが織り込み済みとなっている。クロス円はドルストレート主導のなかで明確な方向性をみせていない。ユーロ円は165円台での上下動。ポンド円は東京市場で買われたあと、198円台での取引に落ち着いている。為替市場以外では、米債利回りが大幅上昇、米株先物は大幅高となっている。全般的に米大統領選の決着が早い段階でついたことが好感される面もあるようだ。今後の焦点は、米下院で共和党が過半数を獲得できるのかどうかとなる。
NY市場でも、ドル高の動きが継続。ドル円は目立った調整もなく、154円台半ばにじりじりと上昇した。米大統領選でトランプ氏が勝利したことでドル買いが強まり、米国債利回りの上昇と伴にドル円も買われた。上院も共和党が多数派を奪還。事前予想では劣勢と見られていた下院でも共和党の善戦が伝えられ、市場の焦点は下院の動向に集まっている。トランプ氏は減税と規制緩和、そして関税強化を主張している。財政拡大も視野に入る中、為替市場ではインフレが再燃し、FRBの利下げペースが想定以上に遅くなるのではとの見方がドルを後押しすると見ているようだ。あすの米FOMCについて、市場は25bp利下げを確実視している。ただ、エコノミストからは、最近の根強いインフレを受けてFRBは声明でインフレに関する表現を変える可能性があるとの指摘も出ている。ユーロドルは東京市場で1.07台に急落後も安値圏で推移した。一方、ポンドドルは一時1.2835近辺まで急落したあと、1.29台まで下げ渋る場面があった。明日は英中銀の金融政策委員会(MPC)の結果が公表される。市場では25bpの利下げが確実視されている状況。12月のヒントを市場は知りたがっているようだ。一部からは、先週のリーブス英財務相の秋季予算案に対する英中銀の評価がポンドをやや下支えする可能性があるとの指摘も出ている。
(7日)
東京市場は、調整的なドル安の動き。ドル円は午後に入って一時154円割れに沈み、153.94付近まで下落する場面があった。前日のドル高に対する反動や、日本時間の明日未明に発表される米FOMCとパウエル米FRB議長の会見を控えたポジション調整とみられる動きが重石となった。ユーロ円は、ドル円同様に午後に165.41前後まで下落し、この日の安値を更新した。ユーロドルは午前に1.0713前後まで下げたが、午後のドル売り局面では一転して1.0748前後まで上昇した。午後のポンド円は199円台前半でもみ合い、ポンド/ドルは1.2935付近まで上昇した。日本時間午後9時に発表される英中銀政策金利は、25bp引き下げられる予想。英財務省が先月発表した予算案を受けてインフレ長期化懸念が強まっており、今後の利下げペースに関心が集まっている。
ロンドン市場は、東京市場からのドル売りの動きが一服。ドル円は153.65近辺まで下押しされたあとは、154円を挟んでの揉み合いに。ユーロドルは1.0772近辺まで買われたあとは、1.0750付近で推移。この後英中銀金融政策が発表されるポンドドルは1.2947近辺まで買われたあと、1.29ちょうど付近へと反落。英中銀のあとにはNY後半に米FOMCの結果発表も控えており、次第にイベント待ちのムードが広がってきている。ユーロ円は165円台半ばから後半で売買が交錯。ポンド円は198.50台まで下押しも、東京市場での上昇を消す動きにとどまっている。この後の英中銀会合では25bp利下げ観測が優勢。票割れではマン委員などタカ派メンバーが据え置きを主張する可能性も指摘される。インフレ見通しやベイリー英中銀総裁会見なども予定されるスーパーサーズデーとなっている。また、この日は政治の話題もでている。ドイツでは連立解消から総選挙への日程が調整されている。トランプ米大統領の再選で貿易関連の圧力が想定されるなかで、景気不透明感も高まりそうだ。ドイツ銀行はECBのターミナル金利予測を従来の2.25%から1.50%へと大幅に引き下げている。
NY市場では、ドルの戻り売りが強まった。ドル円は152円台に下落。米大統領選でトランプ氏が勝利したことで前日はドル買いが強まったが、やり過ぎとの批判もあり、過熱感も指摘されている。ファンダメンタルズからは、ここまでドルが買われる理由もなく、期待先行との冷やかな見方もあるようだ。午後にFOMCの結果が公表。市場の予想通りに25bpの利下げを発表した。市場は声明やパウエル議長の会見に注目していたが、声明文からは「インフレが持続的に2%に向かっているというより大きな確信」という一行が削除され、「雇用の伸びは減速している」との文言も削除された。ただ、「リスクはおおむね均衡」との文言は維持されている。FRBはインフレ再加速をまだ懸念していないことを示唆しているものの、これまでのように利下げに前向きな雰囲気は後退させている印象もあり、今後はすべてオープンとの姿勢を強調していた印象。短期金融市場では12月の利下げ確率が五分五分に。ユーロドルは1.08台まで買い戻された。さすがに下げ過ぎ感も出ているようだ。ただ、来年のトランプ政権の復活で欧州経済が打撃を受けるとの見方が広がっている。ポンドドルは買い戻しが強まり、一時1.30台を回復。ドルの戻り売りもさることながら、この日の英中銀の政策委員会(MPC)の結果もポンドを押し上げた。英中銀は予想通りに政策金利を25bp引き下げたが、追加利下げには慎重姿勢も垣間見せた。リーブス英財務相が提示した予算案がインフレを最大0.5%ポイント押し上げる可能性があると警告したほか、ベイリー総裁は声明で「インフレを目標付近で確実に維持する必要があるため、あまりに急激な、あるいは大幅な利下げはできない」と表明した。市場は、今回が今年最後の利下げであると受け止めたようだ。
(8日)
東京市場は、円買い・ドル買いが優勢。ドル円は午前に153.37近辺まで買われたあと、午後には152.55近辺まで反落。加藤財務相の円安けん制発言を受けて介入警戒感が強まった。その後の下げ渋りは前日NY終値152.94付近までにとどまっている。クロス円も午後に軒並み円高傾向となり、ユーロ円は164.50付近まで、ポンド円は197.84付近まで下落した。ドル円と同様に反発力は限定的。ユーロドルは朝からドル高傾向となり、午後にこの日の安値となる1.0773付近まで下落した。ポンドドルも1.29台後半で上値重く推移している。ただ、総じて値幅は狭く、注目された米大統領選と米FOMCを通過して、週末を前に徐々に模様眺めムードが広がっているようだ。
ロンドン市場は、円高とドル高の動きが優勢。今週は4年に一度の米大統領でトランプ氏が勝利、昨日には英米の金融政策発表を通過している。今日は当面の材料出尽くし感が広がっている。米大統領選ではトランプトレードでドルが急伸、昨日は急反落と激しく動いた。週末にかけての材料はほとんどなく、市場には相場疲れもありそうだ。ドル円は153円台から152円台前半へと軟化している。東京昼に加藤財務相が円安けん制発言を行ったことが上値を重くした。また、中国は全人代を終えて既存の隠れ債務の借り換えを目的とした6兆元規模の債務計画が発表されたが、市場では想定内としてポジティブサプライズはなかった。一時人民元売り・ドル買いが入ったことが主要通貨にドル買いを波及させる場面もあった。ユーロドルは1.07台後半、ポンドドルは1.29台前半まで一時下落。そのなかでドル円は上値重く推移しており、クロス円も上値も抑えられている。ユーロ円は一時164円台割れ、ポンド円は197円台前半まで安値を広げた。欧州株は軟調に推移。米債利回りは低下。全般に調整ムードが広がっている。
NY市場はロンドン午前までのドル安に対する調整が目立った。ドル円はロンドン午後から買い戻しが始まり、東京午前からロンドン午前の下げ分を半分ほど戻す展開。午後に入ると152円台後半で動き自体が落ち着き、週末を前にした様子見ムードとなった。ミシガン消費者信頼感指数などは好結果も、相場の反応は限定的。ユーロドルは木曜日に1.08台まで買い戻しが入った後、東京からロンドン市場にかけては1.07台後半中心の推移となったが、NY市場に入ってドル買いが強まり一時1.0687を付けている。欧州株の下げなどが重石。中国リスク警戒がドル買い円買いを誘い、ユーロ円は163円台前半まで下げている。
執筆者 : MINKABU PRESS
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