【来週の注目材料】米金融政策動向を占ううえでも雇用状況に注目=米雇用統計
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたFOMCメンバーによる2023年末時点での政策金利見通し(ドットプロット)において、5.50-5.75%予想が19名中12名となりました。市場参加者は年内据え置き見通しが相当に優勢となっていましたが、この結果を受けて据え置き見通しが6割弱、利上げ見通しが4割強と、見通しが分かれる状況となっています。
追加利上げが行われるかどうかは、パウエル議長がFOMC後の会見で「デュアルマンデートに焦点を絞る」と発言したように、FRBの課せられた二つの命題(デュアルマンデート)である物価の安定と雇用の最大化の状況次第です。
そうした意味でも6日に発表される9月の米雇用統計はいつも以上の注目を集めそうです。
なお、米議会で紛糾している10月からの予算案合意が遅れ、連邦政府機関の一部閉鎖が実施された場合、雇用統計の発表は延期される可能性があります。
前回8月の米雇用統計では非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+18.7万人と、市場予想の+17万人前後を上回りました。ただ、7月の数値が+18.7万人から+15.7万人、6月の数値が+18.5万人から10.5万人に、計11万人の大幅な下方修正となっており、厳しい数字という見方が広がりました。失業率は7月から0.3%ポイントの大きな悪化で3.8%となりました。
非農業部門雇用者数の内訳をみると、建設業が+2.2万人、製造業が+1.6万人と財部門は堅調な数字となりました。サービス部門は教育・医療サービスが7月に続いて+10.2万人と堅調な伸びを示す一方、情報通信業が-1.5万人と4カ月連続での雇用減。運輸倉庫業が-3.4万人と3カ月連続の雇用減と厳しい結果になりました。情報通信、運輸倉庫と並んで弱く出たことで6月の弱い伸びの要因となった小売業はプラス圏もわずか+0.6万人に留まっており、厳しい状況を見せています。
雇用全体の先行指標と言われる事業所サービス部門の中のテンポラリーヘルプサービス(派遣業)は、-1.89万人と今年に入ってからの前月比マイナスを続けています。
関連指標を確認しましょう。
2日23時に9月の米ISM製造業景気指数が発表されます。前回8月は47.6と7月の46.4から改善。し状予想の47.0も上回りました。もっとも拡大縮小の分岐点となる50を10カ月連続で下回っています。リーマンショック前後の不況期、いわゆるグレートリセッション以来の長期にわたる50割れです。内訳をみると新規受注が弱かったものの生産がしっかりした伸びとなりました。さらには雇用が一気に4.1ポイント改善して48.5となり、全体の改善を支えました。雇用の改善は好結果ですが、先行指標とされる新規受注の鈍さが気になる所。今回の市場予想は47.8と小幅改善となっています。
3日23時には8月の米雇用動態調査(JOLTS)が発表されます(こちらも発表延期の可能性があります)。市場の注目度が高い求人件数は前回882.7万件と3カ月連続での減少となりました。市場予想の946.5万件と比べてもかなりの少なく、2021年3月以来約2年半ぶりの低水準となりました。また6月分が958.2万件から916.5万件に大きく下方修正されています。またその他の項目で目立ったのが自発的な離職件数が前月比25.3万件減の354.9万件となったことです。これは2021年2月以来の低水準です。自発的離職件数は一般に雇用市場の動向があまり芳しくなく、雇用の流動性が低下している時に低くなる傾向があります。求人件数の減少と合わせ、雇用市場動向の厳しさを示す結果となっています。
今回の予想は890万件と小幅ながら4カ月ぶりの改善が期待されています。
4日21時15分には9月の米ADP雇用者数が発表されます。市場予想は+15万人と前回の+17.7万人から伸びが鈍化見込みです。ただ、このところADPと雇用統計本番の相関があまりとれていないため、市場の注目度が下がる傾向にあります。
同日23時には9月のISM非製造業景気指数が発表されます。前回8月は54.5と7月の52.5から上昇し、半年ぶりの高水準となりました。製造業では冴えなかった新規受注が2.5ポイントの伸びで57.5と好結果になりました。また雇用は4.0ポイントの伸びで54.7と好結果でした。今回は53.5と少し調整が入りますが、50超えを維持しており、予想前後の数字は好結果という印象です。
週間ベースの新規失業保険申請件数は、調査期間が雇用統計と被る12日を含む週の比較で8月の24万件から9月は20.2万件に減少しています。こちらはかなりの好結果です。」
こうした関連指標動向を受けて今回の予想ですが、非農業部門雇用者数は+17.0万人と前回を下回る弱めの数字が見込まれています。失業率は3.7%と前回の3.8%から0.1%ポイント改善見込みです。
雇用の厳しい状況は米国の追加利上げ期待を後退させる可能性があります。非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を下回り15万人前後まで鈍化しているようだと、一気のドル売りもありそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅

執筆者 : MINKABU PRESS
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