【来週の注目材料】物価高傾向継続へ
11日に4月の米消費者物価指数(CPI)が発表されます。前回3月のCPIは前年比8.5%、食品とエネルギーを除いたコアCPIの前年比が6.5%となりました。CPIは1981年12月以来40年超ぶりの高水準。コアCPIも1982年8月以来の高水準となっています。このCPIの好結果を受け、先月29日に発表された米個人消費支出(PCE)デフレータは1982年1月以来となる前年比6.6%、同コアデフレータは前年比5.2%となり、インフレターゲットである2.0%をはるかに上回る状況となっています。
こうした歴史的な米国の物価上昇傾向が、先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5%利上げにつながりました。米国が0.5%の大幅利上げに踏み切ったのは2000年5月以来です。市場ではFOMC前まで今後さらに利上げ姿勢が強まり、6月のFOMCで0.75%の利上げに踏み切るという見通しを強めていました。こちらについてはFOMC後の会見でパウエルFRB議長が消極的な発言を行い、今後数回のFOMCでの0.5%利上げ方針を示したことで、期待が後退しています。ただ、金利先物市場動向を見ると、まだ0.75%の利上げ期待が残っている状況。市場の物価高への警戒感が強いことが示されています。
前回の消費者物価指数の内訳を確認すると、ウクライナ情勢を受けて原油価格が上昇していることを受けて、ガソリン価格が前年比+48.0%となっており、全体を押し上げているのがわかります。前月比でも+18.3%となっており3月の原油価格上昇の影響が強く出ています。次に目立ったのが食品価格の上昇です。前年比+8.8%となっており、ここに来ての食品価格上昇の勢いが感じられます。特に家庭用食品が前年比+10.0%となっており、家計への影響が懸念されました。
ガソリンと並んで直近の物価高騰につながっている自動車価格は、中古車が+35.3%、新車が+12.5%と、こちらも上昇傾向が続いています。ただ、前月比では中古車が-3.8%と2月から低下、新車も+0.2%と小さな伸びにとどまっており、供給不足からの価格高騰の流れがようやく落ち着いてきたかと期待されました。
その他、住居費が+5.0%と伸びており、食料品、米国では生活必需品である車及びその維持費などと並んで、家計に対する物価高圧力が強まっているという印象が強い状況となっていました。
今回はCPIが8.1%と依然8%台の高い水準が見込まれるものの、前回の8.5%からは鈍化見込み。コアCPIも6.1%と前回の6.5%から伸びが鈍化する見込みです。米クリーブランド連銀によるInflation Nowcasting(物価最新予測)でも、5月6日時点でCPIが8.14%、コアCPIが6.12%と市場予想とほぼ一致しています。
EIA(米エネルギー省エネルギー情報局)による全米全種平均のガソリン小売価格を見ると、3月の1ガロン当たり4.222ドルから4月は4.109ドルと、2.7%の低下を見せており、物価高圧力が少し収まると期待されます。もっとも昨年4月の2.858ドルと比べると43.8%の上昇となっており、今回のCPIでも全体の押し上げ要因となりそうです。
前回は少し抑えられた自動車価格についても、4月は在庫のひっ迫から新車販売台数が前年比-23.8%となる見込みが示される状況となっており、上昇傾向が継続しそうです。
食品価格も、イースターで需要が高まった鶏卵及び同関連食品について、2月にインディアナ州で始まった鳥インフルエンザが広がり2015年以来の深刻な状況となっていることを受けた価格高騰もあって、かなり厳しい状況が見込まれています。
こうした動きから、市場予想前後の数字は十分に見込まれるところ。前年比の比較対象元である2021年の数字が、3月から4月にかけて上昇している分、前回からは伸びが鈍化も、高い水準での推移が続く見込みです。
物価高傾向の継続は米国の大幅利上げ期待に繋がり、ドル買いの材料となります。ある程度は織り込み済みとはいえ、ドル円の上昇基調を支える形となりそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅

執筆者 : MINKABU PRESS
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