【来週の注目材料】過度な期待は禁物も、マーケットの注目集まるジャクソンホール会議
26日から28日にかけてカンザスシティ連銀が主催する経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が、ワイオミング州の景勝地ジャクソンホールで行われます。映画「シェーン」の舞台であるティトン国立公園に程近い同地での会合では、毎年、世界中の中銀総裁、著名な経済学者などが集まることで知られ、市場の注目を集めています。
前回は新型コロナの感染拡大の影響でオンラインでの開催となりましたが、今年は対面での開催が予定されています。注目は日本時間27日午後11時に予定されているパウエルFRB議長の講演です(なお、こちらはオンライン形式です)。
毎年のようにFRB議長講演は行われていますが(行われない年もあります)、同会議が特に注目を集めるようになったのは、2010年の同会議で当時のバーナンキFRB議長が追加緩和を示唆したことからです。その後、同年11月にQE2(量的緩和第2弾)が決定されました。その後、2016年の同会議でも当時のイエレンFRB議長が利上げについて「ここ数か月で論拠が強まった」と発言。その年の12月に利上げが実施されたこともあり、その後のFRBの金融政策動向を見越すうえでの重要なイベントとして認識されています。
注目は今後のテーパリング開始についての示唆があるかどうか。米国の消費者物価指数が3か月連続で前年比5%台となるなど、インフレの進行が目立つ中、雇用市場が順調な回復を見せていることで、FOMCメンバーからも引き締め志向が強まっています。地区連銀総裁の中には次回9月のFOMCでテーパリング開始を決定するべきという意見も出てきており、決定前に市場へ説明する場として、ジャクソンホール会議での講演が注目されています。
ただ、一時に比べると期待感は後退しています。デルタ株による新型コロナの感染拡大が深刻となっていることが要因です。新型コロナの感染者数や死亡者数が世界で最も多く、被害が深刻な米国。1月のピーク時には1日当たりの感染者数(7日間平均値・この後も)が25万人を超える状況もみられました。その後ワクチン接種の進展で1万1千人程度まで大きく減少し、行動制限の緩和につながりました。しかし、デルタ株による新型コロナの感染拡大が広がる中で、ここにきて14万人超にまで感染者数が拡大してきています。
重傷者や死亡者の数がピーク時に比べると抑えられていることもあり、行動制限を再び強化する動きはそれほど進んでおらず、雇用統計などの重要指標へも目立った影響が出ていなかったことで、これまでは楽観視する動きが広がっていました。
しかし13日に発表された8月のミシガン大学消費者信頼感指数が、事前予想をはるかに下回り、パンデミック直後の直近最低値よりも低い約10年ぶりの低水準を示したことで、消費者マインドの落ち込みが一気に警戒される状況となっています。
この感染拡大の動きは収まる様子を見せておらず、今後の不透明感につながっています。パウエルFRB議長はもともと慎重派ということもあって、今回の講演では慎重姿勢を強調し、緩和政策の長期化を改めて示してくる可能性が十分にあると思われます。
一方で、これまで金融政策変更をはっきりと示唆した2010年や2016年のケースでも、実際の変更はその直後のFOMCではなく、数か月後のFOMCであったことを考えると、将来の可能性としての開始に言及するケースも十分考えられます。
先月行われた議会証言で共和党議員を中心に物価上昇に対するFRBへの圧力が強まっていた状況を考えると、ある程度の配慮は必要と判断することはありそうです。
前向き姿勢が示されるとドル買い。慎重姿勢を維持するとドル売りという流れとなりそう。慎重姿勢を維持した場合、一部のFOMCメンバーが期待する9月の開始決定は難しく、早くても9月のFOMCで示唆、11月か12月に正式決定、実施は年明けぐらいのスケジュールとなりそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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