雇用統計が驚きの弱さとなり、ドル売り広がる
雇用統計が驚きの弱さとなり、ドル売り広がる
運輸・倉庫、人材派遣などでの雇用減が重石に。
事前予想との乖離は記録的
ECBメンバー、6月でのPEPP減速の可能性に言及
【東京市場】朝方ドル円109円割れも続かず、雇用統計を前に落ち着いた動き
ドル円はNY市場でドル売りが進んだ流れを受けて、節目の109円を朝方割り込む動きを見せた。
NY市場午後に109円ちょうどを付けた後の戻りが鈍く
頭の重さが意識される中でいったん下値をトライした格好。
その後すぐに大台を戻すと、マイナス圏でスタートした日経平均のプラス転などを好感して円売りが入り、
109円10銭台に。
もっとも上値の重さは継続しており、戻りも限定的でその後は落ち着いた動き。
午後は109円00銭台を中心とした推移になった。
この後の米雇用統計をにらんで上下ともに積極的な取引を手控える動きが見られた。
ポンドがややしっかりに。NY市場夕方の1.3882前後から午前中に1.39台をしっかり回復する動きを見せた。
その後1.3910台まで上昇し、午後は1.3900台を中心とした推移。
ポンド円はドル円の下げも宛て151円41銭前後まで値を落としたが、
ポンド買いとドル円の買い戻しに151円80銭超えまで上値を伸ばした。
【ロンドン市場】ユーロしっかり
基本的には雇用統計待ち。
その中でやや目立ったのがユーロ買いの動き。
ECB理事会メンバーであるラトビア中銀カザークス総裁が
来月のECB理事会でPEPPでの債券購入ペース減速を決定する可能性について言及し、
ユーロ買いの動きが広がった。ユーロドルは1.2060前後から1.2090前後へ。
ユーロ円も131円60銭前後から131円90銭台へ。
ドル円は米雇用統計を前に109円台前半での推移が続いた。
【NY市場】米雇用統計が驚きの弱さ
注目された米雇用統計は非農業部門雇用者数が100万人増の予想に対して
26.6万人増に留まった。前月の数字も大きく下方修正されており、
さらに失業率も予想に反して悪化するなど、厳しい数字となった。
期待されていたレジャー&ホスピタリティ部門の伸びなどは見られたが
運輸・倉庫や人材派遣などの雇用減が目立った。
単月の数字に過剰に反応するべきではないとの見方もあるが
市場で広がっていた早ければ6月のFOMCでテーパリングに向けた動きが強まるとの期待が後退。
ドル売りが広がる格好となり、ドル円は109円20銭前後から一時108円30銭台に。
ユーロドルも1.20台後半から1.2170台までと、ドルは全面安に。
【本日の見通し】ドル円は米雇用統計ショックを受けた108円台でおもみ合いから、その後買い戻しも
ショッキングな先週末の米雇用統計を受けていったんドル売りが広がった。
その後の戻りも鈍く、発表前のドル買い再びという流れに対する調整が入りやすい局面に。
もっとも調整一服後はドル買いの動きも。
米債利回りが一時急落も持ち直しており、ドルを支える格好となりそう。
今回の雇用統計を受けて、バイデン政権の景気支援姿勢が強化されるとの期待感も
ドルを支える格好となりそう。
また、早期のテーパリング期待後退が米株には追い風となっており、こちらもドル買い円売りに。
もっとも、目先は109円台をトライした中でできたドル買いポジションの調整が入りそう。
108円台半ばを中心としたレンジ取引が続いた後の買い戻しを期待。
【本日の戦略】スウィングは108円台前半での買いを意識も
スウィングは108円台前半での買い下がり、108円をしっかり割り込むとストップという印象。
ただ、ポジション調整の勢いを見極めたいところで108円台後半がかなり重いようだと、
いったん様子見に徹する手も。
デイトレは目先レンジ取引を意識も買いからの方が入りやすそう。
※山岡和雅個人の見解です
為替や、その他いかなる商品について売買を推奨するものではございません
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《5/7 金曜日》
ドル円 ユーロドル ユーロ円
始値 109.09 1.2065 131.62
高値 109.29 1.2171 132.18
安値 108.34 1.2053 131.48
終値 108.60 1.2166 132.12
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《5/7 金曜日の主要株式指数》
前日終値 前日比
日経 29357.82 +26.45
DOW 34777.76 +229.23
S&P 4232.60 +30.98
Nasdaq 13752.24 +119.40
FTSE 7129.71 +53.54
DAX 15399.65 +202.91
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《5/7 金曜日の商品市場》
NY原油先物6月限(WTI)(終値)
1バレル=64.90(+0.19 +0.29%)
NY金先物6月限(COMEX)(終値)
1オンス=1831.30(+15.60 +0.86%)
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《5/7 金曜日に発表された主な経済指標》
【中国】
貿易収支(ドル建て)(4月)12:00
結果 428.5億ドル
予想 277.0億ドル 前回 138.0億ドル(貿易収支)
【スイス】
雇用統計(4月)14:45
結果 3.3%
予想 3.3% 前回 3.4%(失業率(季調前))
結果 3.1%
予想 3.3% 前回 3.3%(失業率(季調済))
【ユーロ圏】
ドイツ鉱工業生産指数(3月)15:00
結果 2.5%
予想 2.2% 前回 -1.9%(-1.6%から修正)(前月比)
結果 5.1%
予想 5.7% 前回 -6.8%(-6.4%から修正)(前年比)
ドイツ経常収支(3月)15:00
結果 302.0億ユーロ
予想 240.0億ユーロ 前回 186.0億ユーロ(188.0億ユーロから修正)(経常収支)
ドイツ貿易収支(3月)15:00
結果 205.0億ユーロ
予想 211.0億ユーロ 前回 182.0億ユーロ(181.0億ユーロから修正)(貿易収支)
【ブラジル】
小売売上高(3月)21:00
結果 2.4%
予想 -1.6% 前回 -3.8%(前年比)
【米国】
雇用統計(4月)21:30
結果 26.6万人
予想 100.0万人 前回 77.0万人(91.6万人から修正)(非農業部門雇用者数)
結果 6.1%
予想 5.8% 前回 6.0%(失業率)
結果 0.7%
予想 0.0% 前回 -0.1%(平均時給(前月比))
結果 0.3%
予想 -0.4% 前回 4.2%(平均時給(前年比))
民間部門雇用者数
結果 21.8万人
予想 93.8万人 前回 70.8万人(78.0万人から修正)
製造業雇用者数
結果 -1.8万人
予想 5.4万人 前回 5.4万人(5.3万人から修正)
週平均労働時間
結果 35.0
予想 34.9 前回 34.9
労働参加率
結果 61.7%
予想 61.6% 前回 61.5%
卸売売上高(3月)23:00
結果 4.6%
予想 1.0% 前回 0.0%(-0.8%から修正)(前月比)
卸売在庫(確報値)(3月)23:00
結果 1.3%
予想 1.4% 前回 1.4%(前月比)
【カナダ】
雇用統計(4月)21:30
結果 -20.71万人
予想 -15.0万人 前回 30.31万人(雇用者数)
結果 8.1%
予想 8.0% 前回 7.5%(失業率)
Ivey購買担当者景況感指数(4月)23:00
結果 60.6
予想 N/A 前回 72.9
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《5/7 金曜日に発表された主なイベント・ニュースなど》
【ユーロ圏】
*ECBカザークス氏
債券購入減速の6月決定は可能。
インフレが弱ければ、PEPPの後にAPPの拡大を議論する可能性も。
【英国】
*ホールデン英中銀委員
英国ではポジティブなニュースがしっかりと定着した流れとなっている。
英国は急速な回復をみせたあとは、成長が緩やかに。
英国では仕入れ価格の上昇がほとんど消費者物価に反映されない。
インフレリスクは上下どちらにもあるが、いずれも大きいものに。
*ブロードベント英中銀副総裁
英国のインフレ指標は不安定に上下する可能性。
【米国】
*バーキン・リッチモンド連銀総裁
米雇用統計は期待とかけ離れていた。
人口比率に対する雇用の実質的な進歩を依然待っている。
女性の労働参加後押しには安価な育児ケアの問題を解決する必要。
貯蓄増で仕事への復帰に選択の余地ができている可能性。
FRBはインフレの責務で進歩を遂げると感じている。
*イエレン米財務長官
半導体不足と材木価格が4月の雇用に影響。
米雇用統計は回復への長い道のり浮き彫りにした
来年に完全雇用を達成すると確信。
インフレサイクルの顕在化は非常に疑わしい。
債務の法定上限が夏に到達するシナリオも考えられる。
債務上限の適用停止は夏に期限切れる可能性。
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《本日予定されている主な経済指標》
【豪州】
小売売上高 10:30
予想 -0.4% 前回 2.5%(第1四半期・前期比)
予想 1.4% 前回 1.4%(3月確報値・前月比)
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執筆者 : 山岡和雅|MINKABU PRESS 外国為替情報担当 編集長
1992年米チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)東京支店入行、ディーリングルームに配属され、外国為替ディーラーに。英ナショナルウェストミンスター銀行、RBS銀行などで10年以上外国為替ディーラーとして市場の最前線に。その後大手FX会社などで外国為替市場のアナリストとして個人向けの外国為替情報の配信業務に携わり、2016年3月から、みんかぶグループに参画。 (社)日本証券アナリスト協会検定会員