[資源・新興国通貨3/9~13の展望] 豪ドルに対して下押し圧力。豪中銀は4月も利下げ!?
豪ドル
RBA(豪中銀)は3日、0.25%の利下げを決定。政策金利を0.75%から過去最低の0.50%へと引き下げました。利下げは2019年10月以来、4会合ぶりです。
声明は、「国外での新型コロナウイルスの感染拡大は現在、豪経済に重大な影響を及ぼしている」と指摘。「引き続き状況を注意深く監視し、新型コロナウイルスが豪経済に及ぼす影響を評価する」としたうえで、「豪経済を支えるために、金融政策を一段と緩和する用意がある」と表明。追加利下げの可能性を残しました。
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市場は4月7日の次回RBA会合で追加利下げが行われる確率をほぼ100%織り込み、また“RBAは年内に量的緩和へと踏み切る”との観測もあります。RBAは政策金利が0.25%まで低下した場合には量的緩和を検討する方針を示しています。RBAの利下げ観測を背景に、豪ドルは上値が重い展開になりそうです。
また、新型コロナウイルスをめぐる懸念から主要国の株価が不安定な値動きとなっています。主要国株価が下落するなどしてリスク回避の動きが強まる場合、豪ドルに対して一段の下押し圧力が加わる可能性があります。豪ドル/米ドルは0.64227米ドル(2/28安値)割れを試し、豪ドル/円は69.351円(2/28安値)を下回るかもしれません。
NZドル
来週(3/9- )はNZの主要経済指標の発表がなく、NZドルは投資家のリスク意識の変化の影響を受けやすいとみられます。主要国の株価が下落するなどしてリスク回避の動きが強まれば、NZドルに対して下押し圧力が加わりそうです。その場合、NZドル/米ドルは0.61796米ドル(2/28安値)割れを試し、NZドル/円は66.202円(2019/8/26安値)を下回るかもしれません。
なお、市場ではRBNZ(NZ中銀)の利下げ観測があり、市場が織り込む3月25日の次回RBNZ政策会合で0.25%の利下げが行われる確率はほぼ100%です(日本時間6日午前11時時点)。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は4日、0.50%の利下げを決定。政策金利を1.75%から1.25%へと引き下げました。利下げは2015年7月以来、4年8カ月ぶりです。
声明は、「新型コロナウイルスは、カナダや世界の経済見通しに重大な負の衝撃をもたらしている」と指摘。また、「経済成長を支援しインフレを目標水準に維持するため、必要なら金融政策を一段と調整する用意がある」と表明しました。
ポロズBOC総裁は翌5日、国内の経済指標が予想よりも弱いことを挙げ、「新型コロナウイルスを考慮しなくても、(4日に)利下げを行うのに十分な理由があった」と発言。「新型コロナウイルスの感染拡大の深刻度やその影響が及ぶ期間によるものの、カナダ経済の底堅さが根本的に試される可能性がある」と述べ、追加利下げを示唆しました。
市場では4月15日の次回政策会合での利下げ観測が高まっています。OIS(翌日物金利スワップ)によると、市場が織り込む4月の利下げの確率は71.4%(据え置きは28.6%)です(日本時間6日午前6時30分時点)。BOCの追加利下げ観測を背景にカナダドルは軟調に推移するとみられ、カナダドル/円は78.398円(2019/8/26安値)割れを試す可能性があります。
トルコリラ
エルドアン・トルコ大統領とプーチン・ロシア大統領は5日、モスクワで会談。“イドリブ県(シリア北西部)で6日から停戦することで合意”しました。イドリブ県では、アサド政権軍と反体制派を支援するトルコ軍との戦闘が続いており、両者の緊張が高まっていました。ロシアはアサド政権の後ろ盾です。
シリア情勢をめぐる懸念がトルコリラに対する下押し圧力の主因だったため、停戦合意を受けたリラは底固く推移するかもしれません。しかし、アサド政権とトルコの停戦合意はこれまで何度も破られてきました。停戦合意が守られるのかが今後の焦点になりそうです。停戦合意が破られることになれば、トルコリラには再び下押し圧力が加わるとみられます。
南アフリカランド
3日、南アフリカの2019年10-12月期GDP(国内総生産)が発表され、結果は前期比年率マイナス1.4%でした。7-9月期(マイナス0.8%)に続いてマイナス成長となり、南アフリカ経済は定義上のリセッション(景気後退)に陥りました。リセッションは、2018年以降2回目。12月に行われた9日間の計画停電が成長の足を引っ張りました。
10-12月期GDPの弱い結果を踏まえ、ムーディーズ(米格付け会社)は3月27日の見直しで南アフリカを格下げするかもしれません。景気の低迷によって税収が落ち込むことで、財政赤字や政府債務が増大する可能性があるためです。ムーディーズは3大格付け会社の中で唯一、南アフリカに対して投資適格級の格付けを付与しています(ただし、投資適格級最低の“Baa3”)。
ムーディーズによる格付け発表が近付くにつれて、市場で格下げの可能性が意識されれば、ランドに対して下押し圧力が加わりそうです。
メキシコペソ
メキシコペソは今週(3/2- )、対米ドルや対円で約6カ月ぶりの安値を記録しました。新型コロナウイルスをめぐる懸念からリスク回避の動きが強まったことやBOM(メキシコ中銀)の利下げ観測が、ペソを押し下げました。リスク回避は、新興国通貨であるペソにとってマイナス材料。市場ではBOMが3月26日の次回会合で0.50%の利下げに踏み切るとの観測があります。
ペソについては引き続き、新型コロナウイルスに関する報道や主要国の株価動向に反応しやすい地合いになりそうです。また、9日に発表されるメキシコの2月CPI(消費者物価指数)も材料になる可能性があります。CPIが市場予想(6日時点で前年比3.56%)を大きく下回れば、BOMの利下げ観測はさらに強まるとみられます。ペソ/円は、5.165円(2019/8/26安値)が目先の下値メドになりそうです。
マネースクエア シニアアナリスト。資源・新興国通貨を中心に分析し、マネースクエアのWEBサイトにてレポート(「ウィークリー・アウトルック」、「デイリー・フラッシュ」など)配信のほか、動画コンテンツ「M2TV」出演、セミナー講師を務めている。