【今週の注目材料】米指標への注目継続
今週はそれほど目立った米経済指標の発表予定はありません。そうした中、やや注目を集めているのが27日の5月米コンファレンスボード消費者信頼感指数、29日の米第1四半期GDP改定値、30日の4月米PCE価格指数です。
まずはコンファレンスボード消費者信頼感指数。民間調査会社コンファレンスボードによるアンケートでの景況感調査を基にした同指標。同系統の指標であるミシガン大学消費者信頼感指数などに比べて調査サンプル数が多く(コンファレンスボードは5000サンプル、ミシガン大学は速報が420、確報が800超)、より精度の高い指標として注目されています。
前回4月は86.0と3月の92.9から一気に低下し、新型コロナによるパンデミック最中の2020年5月以来の低水準となりました。5月連続での前月からの低下で、市場予想の87.5も下回る弱さです。中でも所得や雇用などの短期見通しを示す期待指数が54.4と3月の66.9から大きく低下。景気後退入りを示唆するといわれる80を3カ月連続で大きく下回りました。同調査での記入方式での回答をみると、家計として最も関心の高い問題として関税が挙げられており、関税問題が家計の景況感悪化に大きく寄与していることが示されました。
その後、米英、米中での貿易合意が見られたこともあり、今回は87.0と小幅ながら改善が見込まれています。もっとも先行き不透明感が継続していること、直近米債券安、株安、ドル安のトリプル安になる米国売りが見られるなど、警戒感が広がっていることなどから、前回から悪化している可能性も十分にありそうです。その場合、ドル売りが加速する可能性があります。
続いて米第1四半期GDP改定値です。
4月30日に発表された同速報値は前期比年率-0.3%と2022年第1四半期以来のマイナス成長となりました。市場予想は+0.3%と、前期の+2.4%から大きく鈍化もプラス圏維持の見通しでしたが、予想以上の鈍化となっています。
内訳をみると、個人消費が前期の+4.0%から+1.8%へ鈍化。ただこれは活況となった年末商戦の反動や、歴史的な寒波の影響とみられます。一方設備投資は+9.8%となり、前期の-3.0%から一気に上昇しました。これは関税対応でコンピューター関連の輸入急増が見られたことに併せて、情報関連を中心とした機器の拡大が背景にあります。機器部門だけだと+22.5%と前期の-8.7%から一気に増加。その内、情報機器は+69.3%と相当な伸びを見せました。
関税前の駆け込み輸入の関係で在庫投資も大きく拡大。在庫だけでGDPを2.3%ポイント押し上げています。なお前期は0.8%ポイントの押し下げでした。輸入自体は41.3%の大幅な伸び。輸出も+1.8%と伸びていますが、輸出から輸入を引いた純輸出で4.8%GDPを押し下げており、投資部門での押し上げを打ち消して全体のマイナス成長に寄与しました。なお政府部門も-1.4%と前期の+3.1%から鈍化。連邦政府の人員削減、一部の支出凍結、ウクライナ軍事支援停止などの影響が出ているとみられました。
今回の改定値でこうした状況がどこまで変化するか。今月6日に発表された3月の米貿易収支は1405億ドルの赤字と、2月の1232億ドルから赤字が拡大。市場予想の1372億ドルを超える赤字となっています。3月の製造業受注の予想外の減少、企業在庫の鈍化など、GDP速報値発表後に示された米指標の厳しい結果もあり、マイナス幅が広がっている可能性がありそうです。その場合、ドル売りが強まる材料となります。
最後に30日の4月米PCE価格指数です。米国のインフレターゲットの対象物価指標でもある同指数。前回3月のPCEは前年比+2.3%、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア前年比+2.6%とともに2月から伸びが鈍化しました。
同系統の指標である米消費者物価指数(CPI)は13日に4月分が発表済みで、前年比+2.3%と3月及び市場予想の+2.4%から小幅鈍化。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアは3月及び市場予想通りの+2.8%となりました。内訳をみるとガソリン価格の低下が響いてエネルギーが-3.7%と低下。食品も家庭用食品の伸び鈍化を受けて全体で伸びの鈍化が見られました。コア部門では鈍化傾向が続いていた住居費が3月と同じ+4.0%と伸びが横ばい。財部門での自動車の力強い伸びもあって、全体では小幅鈍化に留まった形です。
PCE価格指数の予想は前年比+2.2%と3月から小幅鈍化見込み、コアPCEも+2.5%と小幅鈍化見込みです。食品やエネルギーの鈍化はCPI同様に全体の伸びを抑えてくるとみられます。CPIで横ばいとなった住居費に関しては市場全体に占める割合がCPIよりもかなり小さいこともあり影響は限定的となりそう。少し気になるのがCPIで+3.1%と3月の+3.0%から伸びが強まった医療費で、PCEはCPI以上に医療費が全体に占める割合が大きいだけに予想ほど鈍化しないという可能性があります。この場合、ドルは反発を見せそうです。
MINKABUPRESS 山岡

執筆者 : MINKABU PRESS
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