【来週の注目材料】米利下げ開始時期見極めに向け注目集まる=米消費者物価指数
【来週の注目材料】米利下げ開始時期見極めに向け注目集まる=米消費者物価指数
3月12日に2月の米消費者物価指数(CPI)が発表されます。
パウエル議長が議会証言において「インフレが持続的に2%に向かっていると確信が強まるのを待っている」「確信が得られるまでそう遠くない。確信が得られれば制約的な金融政策を引き下げ始めるのが適切」と発言しました。そう遠くない時点での利下げに言及したことで、市場は利下げ時期見通しについての注目が集まっています。
利下げのカギを握る大きな材料である物価。米国のインフレターゲットの対象はPCEデフレータですが、発表が遅いこともあり、同系統の指標である米CPIに市場の注目が集まります。
前回1月のCPIは前年比+3.1%と、2023年12月の+3.4%から鈍化しましたが、市場予想の+2.9%を上回りました。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+3.9%と12月と同水準の伸びとなりました。市場予想の+3.7%を上回る伸びとなっています。前月比は+0.3%、コア前月比は+0.4%でともに市場予想を上回りました。
内訳を見ますと、前回低下が目立ったのがエネルギー価格で前年比-4.6%。ガソリン価格低下を背景に11カ月連続でのマイナスとなりました。マイナス幅も12月の-2.0%から大きくなっています。ガソリン価格は-6.4%と2023年7月以来の低下となりました。食料品は前年比+2.6%と12月の+2.7%から小幅な鈍化。小幅とはいえ着実に鈍化が進んでおり、2022年8月の11.4%をピークに17カ月連続での鈍化となりました。
変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア部分では、全体に占める割合(ウェイト)の比較的大きい自動車の価格低下もあり、財部門が前年比-0.3%とマイナス圏になりました。横ばいまではありましたが、マイナス圏は2020年5月以来となります。
一方強かったのがコアのサービス部分で前年比+5.4%と12月の+5.3%から小幅ながら伸びが強まりました。CPI全体の36.2%、コアの45.4%、コアのサービス部分の59.4%と相当な部分を占める住居費が期待ほど鈍化しなかったことが背景にあります。住居費の伸びは前年比+6.0%と12月の+6.2%から鈍化し、10カ月連続の鈍化となりました。このうち帰属家賃(OER)が前年比+6.2%と12月の+6.3%から小幅な鈍化となりました。前月比では+0.6%となっており、昨年4月以来の伸びです。この伸びが予想外となり、全体を押し上げました。
こうした状況を受けて今回の市場予想ですが前年比+3.1%と1月と同水準の伸びが見込まれています。コアは+3.7%と1月から伸びが鈍化見込みです。前月比では+0.4%と1月の+0.3%から伸びが強まる見込み。コア前月比は+0.3%と1月から伸びが鈍化する見込みです。
ガソリン小売価格が2月は1ガロン当たり3.328ドル(全米全種平均・米エネルギー情報局調査)と1月の3.197ドルから上昇。前月比で4.1%の上昇となります。前年比ではどちらもマイナスですがEIAベースの数字だと、1月が-7.2%に対して2月は-4.9%までマイナス幅が縮小します。CPIは都市部のみのデータで全米のデータであるEIAとイコールではありませんが傾向は一致しますので、エネルギー価格が全体を支えると見られます。
その他項目では半導体不足からの供給制限の緩和が改善している自動車部門の価格低下が継続して見込まれていることなどもあり、全体に低めの数字が見込まれます。
前回伸びが予想を超えた主要因として、帰属家賃内の一戸建て住宅と集合住宅のウェイトが予想外に変更された影響が指摘されています。今回の予想はウェイト変更を加味したうえで立てられていることから、前回の予想なサプライズにはなりにくいです。とはいえ0.1%の小幅な乖離であっても市場予想からの乖離には反応が出ることの多いCPIだけに、予想からのブレには要注意です。予想を下回る伸びに留まると、ドル売りの流れがさらに加速する可能性があります。
MINKABU PRESS 山岡和雅

執筆者 : MINKABU PRESS
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