【来週の注目材料】ジャクソンホール会議でのパウエル議長講演に注目集まる
8月24日-26日にカンザスシティ連銀が主催する経済シンポジウム、通称ジャクソンホール会議が開かれます。1978年にスタートし、1982年から今回の会場でもあるワイオミング州にある米有数の避暑地ジャクソンホールで実施されている同会議。米連邦準備制度理事会(FRB)を始め、ユーロ圏、英国、カナダ、日本などの先進国中銀関係者、著名なエコノミストなどが招かれて、金融政策・世界経済などについて議論を行う重要な場となっています。
基本的には非公開で行われる同シンポジウムは、マスコミはもちろん、通訳なども入れず、招待されたメンバーのみでカジュアルに議論を深める場として、中銀関係者に重宝されています。各時間帯に公開プログラムも用意されていますが、そのプログラム内容は基本的に24日朝まで公表されません。ただ、基調講演として25日にパウエル議長による経済見通しについての講演が実施されることは報じられています。
歴史のある同シンポジウムが市場の注目を集めたのは2010年、当時のバーナンキFRB総裁が、講演で量的緩和の再開を示唆したことがきっかけです。この時は実際に同年11月のFOMCで量的緩和政策第2弾(QE2)の実施が決定しました。バーナンキ総裁は2012年の量的緩和政策第3弾(QE3)開始時にも、同会議で追加的な緩和を示唆しており、同会議をうまく使って市場に政策の方向性を示していました。
米国だけでなく、2014年には当時のドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が追加的な緩和を示唆し、同年9月のECB理事会で利下げを実施しました。
パウエル議長も2018年の就任以降、同会議をうまく利用しています。コロナ禍でオンライン開催となった2020年には「今後は一定期間の平均で2%を目標とする」と発言。パンデミックを受けて2020年3月以降急速な金融緩和が進む中、一時的に物価が2%のターゲットを超えることを許容するものと、市場は捉えました。
今回のジャクソンホール会議のテーマは「世界経済の構造変化」(Structural Shift in the Global Economy)です。世界的に物価高がピークを超え、利上げサイクルの終了と、一部資源国などで利下げサイクルのスタートなどが見られる中で、パウエル議長が現状をどのようにとらえ、米国の今後の姿勢をどのように示すかが注目されます。
7月の米FOMCの議事要旨が8月16日に公表され、インフレリスクから追加的な引き締めが必要になるかもしれないとして、追加利上げの可能性が示唆されました。一方、市場は7月のFOMCでの利上げ打ち止めを完全に織り込み、FRBが早期の利下げを否定しているにもかかわらず、来年上半期での利下げ開始を織り込む勢いを見せています。それだけ米国の物価鈍化傾向がはっきりしているということでもあります。こうした中、議長が来年の利下げ開始の可能性を感じさせるような発言を行った場合、ドル売りが一気に進む可能性があります。
米国以外の中銀関係者の発言にも要注目です。どの中銀総裁が出席するのかについても、プログラム日程同様に当日まで公式な発表はありませんが、日本からはおそらく植田総裁が出席すると見られます。主要中銀によるパネルディスカッションなどが実施された場合、各中銀の姿勢の差がはっきりと見えることで、市場の注目を集めそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅

執筆者 : MINKABU PRESS
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