とれんど捕物帳 米中協議に一喜一憂もドル円は堅調
今週のは米中貿易協議に一喜一憂した週だったと言えよう。それでもドル円は戻り売りに押されながらも107円台を維持し、週末には108円台半ばまで上げ幅を広げ、堅調な週ではあった。
その米中貿易協議だが、トランプ大統領は「中国とフェーズ1の合意に達した。合意には知財、農産物の購入、金融サービスの市場開放が含まれる」と述べていた。また、ムニューシン米財務長官は「中国人民銀行との協議は順調に進んでおり、為替の透明性で合意があった。来週の関税引き上げは見送り」と述べている。さすがに全体合意は難しい情勢で、部分的合意に留まったが、決裂という最悪の事態は回避され、来週の関税引き上げは見送られる。もともと市場は全面合意までは期待していなかったであろう。決裂という最悪の事態を回避できれば現時点では十分といった感じだったのではないだろうか。
中国側は農業分野で譲歩する一方で、ファーウェイを始めとしたハイテク企業への制裁は解除してほしいというのが今回の落とし処だったのではと思われる。日米貿易協定を参考にしたとの指摘も聞かれたが、ファーウェイについては今回は見送られたようだ。
ひとまず、15日からの関税引き上げは見送られそうだが、強制的な技術移転や産業への補助金など今後も課題は山積みだ。トランプ大統領は今回の合意に関して、11月にチリで開催されるAPEC首脳会談で署名する意向。習国家主席もその意向を示していた。
今回は部分合意となったが、この問題はあくまで貿易を材料にした米中の覇権争いであり、短期で解決できる話ではない。米国側も容易には妥協しないであろう。ただ、来年に大統領選を控えたトランプ大統領からすれば、米議会が要望しているように、過度に強硬に押し進めて株式市場が不安定になり、景気後退のムードが広がることは是が非でも避けたいはず。ここは一歩づつ進めて、その間に米企業が中国依存度を低下させて行けば、御の字というところなのかもしれない。
今回の一連の米中協議の中で個人的に気になったのが、トランプ政権が監視カメラなど新疆ウイグルの弾圧に関わる企業2社を含むテクノロジー企業8社に対する米企業からの禁輸措置を発表した点。米国が貿易問題に人権カードを加える動きが今後強まるようであれば、中国側の反発は筆致だ。今後、香港、新疆ウイグル、チベット、南シナ海、台湾問題まで本格的に発展させるようであれば、これはもう貿易戦争ではなく冷戦だ。この辺は専門ではないので言及しないが、市場にとっては、米中の覇権争いは今後も長期に渡って横たわるリスクであろう。
さて来週だが、米経済指標では小売売上高や鉱工業生産、そして、中国GDPなど中国の経済指標もいくつか発表され注目される。また、英EU離脱問題も大詰めに迫って行くであろう。そのような中、米大手銀行を皮切りに7-9月期の米企業決算発表がスタートする。今回の米企業決算はやはり、半導体関連など製造業の数字に注目したい。米製造業は冴えない見通しを出してくることはある程度、市場も織り込んでいる。そのうえで、米製造業が世界経済の減速、貿易問題の影響をどう捉えているいるのか、非常に気掛かりではある。株式市場と伴にドル円もそれなりの反応を見せるのであろう。ただ、来週に関しては大手金融が中心で、本格的な動きは再来週以降になりそうだ。
ドル円はFRBの利下げ期待も根強く、上値の重さもあるものの、109円ちょうど付近に控えている200日線を目指す動きも期待したい。想定レンジとしては、107.50~109.50円を想定。スタンスは「中立」を維持したい。
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 →(↑↑)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓↓)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓↓)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上から中立へトレンド変化
短期 ↓↓(↓↓)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓↓)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↓↓(↓↓↓)
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MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。