日経平均、ぎりぎりで7月2日終値ベースの高値を更新
アドバンテスト1つで、日経平均上昇をカバー
続伸商状の米国株を受けて、本日の東京市場も続伸。7月2日の戻り高値をわずか2円ですが更新。
日経平均は46円高の21,756円。半導体製造装置の高騰は依然として際立っているものの、業種としては内外需ともに買われていました。日経平均の上昇寄与度ランキング上位10銘柄を見ても、シクリカル(景気敏感)系と、ディフェンシブ(非景気敏感系)と、およそ半々の割合。
日中足を見ますと、9時9分前後に21,823円の本日高値をつけて、あとはずっと高原状態でした。
実際の日経平均上昇の寄与度から言いますと、前日の決算を受けて高騰したアドバンテスト<6857>だけで、上げ分のすべてを占めています。
相変わらず、出来高・売買代金は非常に少ないので、このところの上昇の駆動軸が、海外勢によるショートカバーが主体であるという構図は、あまり変わっていないでしょう。
外部環境では、グローベックス市場でNYダウ工業株先物が朝がたトントンだったところから、その後はおおむね30-40ドル高の気配で安定。
中国・上海コンポジット指数は、22日安値更新をしてあわやと思われましたが、その後は本日まで3連騰で25日線を奪回。7月9日以降の往来レンジの上限に戻ってきていました。
意外に、米国株が値を飛ばさない相場~この後に来るものは?
(静かな米国株の新値更新)
今週、米国企業決算発表のピークですが、どうやら6月のマクロの悪材料出尽くしに続き、今月は期待通りミクロも悪材料出尽くしで動いているようです。
長年見ている米国株市場の上昇トレンドにしては、今年は上がっても極端な値の飛ばし方が少ないような印象です。
どちらかという手堅く、ガス抜き調整をしながらじわじわ上がっていくパターンです。
(大幅下落調整後の上昇パターン)
イメージとしては2016年の大幅調整後の上昇局面にやや似ている気がしています。
2015-6年の下げは、連銀発の利上げでした。今回は、景気の途中中だるみ期間(景気減速懸念)で大きく下げたわけですが、今度は連銀発の利下げ観測です。
利下げをしなければならないほどのマクロ環境ではなく、相場も最高値更新という状況ですから、この連銀の利下げが本当に行われるとしたら、ちょうど2016年秋以降18年年初の天井まで、一貫右肩上がりに近い上昇トレンドに発展していくことも考えられそうです。
当然それは、米国長期金利の変動の仕方によっては(米2年・10年国債利回りの逆転現象の有無)、バブル相場と化す危険性も高いわけです。
ちなみに、米国株がバブル化したと言える水準は20倍を超えて、25倍当たりです。おおむね過去のバブルは25倍から40倍というところです。S&P500の「みなしEPS」で試算すると、25倍なら3,755ポイントということになるわけで、現在の3,019ドルから24%超の上昇ということになります。昨年クリスマスの安値から直近高値までが28%くらいの上昇率ですから、バブルの場合、これとほぼ同じくらいの波動を出してくるイメージで良さそうです。
(4年間のサイクルという、米国株のアノマリー~バブルならどこまで上がる?)
大統領選挙前年は、米国株のパフォーマンスは一番良好であるという戦後のアノマリーといい、大統領選挙年もその延長線上でやはり良好なパフォーマンスをだしてきた事実といい、下手をしなくともバブル性に満ちた上昇相場になっていくかもしれません。
今、米国株が高値更新をしている相場にもかかわらず、まったく過熱感が無いということが、一段と上述のシナリオを予想させるのに十分な兆候なのではないでしょうか。
(四度目の正直)
ダウ工業株指数のチャートを見ますと、2018年1月の高値、10月の高値、そして今年4月の高値と、三回に及ぶ似たような水準で天井をつけています。
6月の調整の後、同指数は足元で最高値更新をしているわけです。四度目の正直ということですが、いわゆる逆三尊を形成した、大きな底入れパターンを経ての高値更新となってきています。
これと日経平均を重ねますと、波動はおおむね同じなのですが、パフォーマンスでは東京市場はどうしても見劣りします。
要因としては二つ考えられます(構造論としての日本の欠陥は横に置いておきましょう)。
一つには、ドル円が円高気味であることへの警戒感。
もう一つは、世界的な景気回復シナリオに、まだ市場参加者の多くが疑心暗鬼であるということ。
この二つだろうと推察されます。
円高については、ますます円高か、それとも再びドル高へ回帰するかは、月末のFOMCで答えが出るでしょう。
景気回復シナリオに対する疑心暗鬼は、ようやく半導体に回復の兆候が出たばかりですから、疑心暗鬼が多分に市場を支配していても不思議なことではありません。これもFOMC後に、それが本物なのかどうなのか、市場は答えをだしてくることになるのでしょう。
(米国企業業績の改善)
しばしば当レポートでも指摘していることですが、そもそも4-6月期の企業業績というものは、日米ともに昨年絶頂期の4-6月期との比較です。悪いに決まっています。
が、7-9月予想となりますと、すでにピークアウトして悪化し始めた昨年の同時期に対して、今度は回復の兆候があれば、非常に「良く」見えてくるのです。
また、足元で決算ピークを迎えている米国企業においては、事前の段階では、S&P500の平均の利益成長率予想(4-6月期)が-0.9%でした。
これが現時点では+4.6%に上方修正されてきています。事前予想で相当、コンセンサスが引き下げられていたわけで、恐らく今後ますますこの集計数値は改善していくことでしょう。
日本の決算集中日は、来週・再来週にまたがりますが、ここでも似たような傾向がでてくると推察しています。
(アドバンテストの高騰)
本日のスターはなにはともあれアドバンテスト<6857>でしょう。
4-6月期決算では、連結純利益が前年同期比13%減、120億円ということでした。
これだけ見れば、悪い決算です。
とくにユーザーはメモリー向けの設備投資を抑制しており、在庫調整が長引いているようだということでした。このメモリー向けでは前年同期比69%減ということです。
ところが2020年3月期、通期の業績予想を会社側は据え置きました。
そして、同じ4-6月期だけで、この通期の純利益予想のなんと4割を達成しているというのです。
メモリー向けの激減をなにがカバーして余りあったのかというと、スマートフォン向けの検査装置でした。
先日も、携帯電話の6年周期説からいって、今年で前半終わり。ここから2022年のピークまで代替需要が本格化していくところに今、わたしたちは立っているということになります。
同じく信越化学が決算発表をしていましたが、これも好感されたようです。ポイントは、値上げが効いたということを、市場は評価したようです。小売りでもなんでもそうですが、値上げが好感される相場というのは、ブル相場(業績相場)の必須要件です。
従って、まだ市場における景気認識が、利下げ期待の大合唱になるほど悲観的、あるいは疑心暗鬼である中で、もっとも先行的に動く業種の一つ、半導体が鮮明な強さを見せてきているということになります。
本日、アドバンテストは昨夜のPTS市場で一時4,000円をつけたりしていたものですから、本日寄天で一気に急反落するのではないかと心配していましたが、杞憂でした。
ほとんどダレることもなく、朝方の高騰した水準を引けまで維持しました。
うまくすると、ここから半導体の本格的な買い積み上げが始まるのかもしれません。
戦略方針
日経レバレッジETF<1570>の買い持ちでホールド。
執筆者 : 松川行雄|有限会社増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
大和証券外国株式部勤務の後、投資顧問業を開業。2013年2月ヘッドハンティングにより増田経済研究所に入社。現在同社発行の「日刊チャート新聞」編集長。株式セミナーに於ける投資理論は個人投資家に満足度100%の人気を博す。