変化の予兆~株、金利、そして物色動向
今週の課題
日経平均は軟調にスタートしたものの、結局27円高の21,285円。
依然として、このていどの上昇では、3月の月中平均21,414円、50日線21,409円いずれもまだ遠い状況です。
今週のポイントは、当然G20(大阪サミット)で相場になんらかの転機が訪れるか、ということです。いわゆるイベント通過です。
米国株・米国債券の暴走まがりの価格上昇(利回り低下)が止まるか、反転するかということがなんといっても注目されるところです。
これにくらべて日本株は不甲斐なかったのですが、これはほぼ一重に円高(107円すれすれまで円高)にブレたことが足を引っ張りました。当然ドル円にも転機が起こるかどうか、期待されます。
売買代金・出来高ともに、今年最低を記録。なんらかの転機を予告しているかもしれません。
日本株にチャンスがくるか?
なにしろ、日本株を撹乱する最大のプレイヤーは投機筋・ヘッジファンドです。
彼らの手の内は一体どうなっているのかということです。
見る視点は二つあります。
(裁定買い残)
裁定取引というものがどういうことなのかは、「一粒萬倍の株式投資宝典(パンローリング社)」の240-241頁にありますから、参考にしてください。
日本株相場下落で問題になるのは、どのくらい裁定買い残が積み上がっているかということです。なんと6月14日までの週間では5,425億円でした。これは少ないです。
つまり、投機筋・ヘッジファンドの売るパワーはほとんど無いということです。相場の下ブレをそう気にする必要はない、という結論になります。
(シカゴのポジション)
一方、彼ら投機筋・ヘッジファンドのシカゴ先物市場における日経平均のショートポジション(空売りポジション)はどうなっているでしょうか。
実はこれも急減しています。6月11日までは、おおむね毎週13,000枚から14,000枚のネットではショート(空売り)ポジションだったのですが、これが6月18日までの週には、一気に5,965枚に急減しています。つまり、空売りを手仕舞いし、買い戻したということです。
この二つの視点から、ヘッジファンドは売り叩き(の意図があったかどうかはともかく)のリスクは大幅に後退しており、場合によっては、日本株ロングになってくるのではないか、とさえ期待ができそうです。
物色にも変化がでてきている
本日の物色動向を見ますと、非常に興味深い動きが散見されます。
先週も指摘したことですが、確定利回りもの(金利敏感系)が頭打ちで、景気敏感株、それも大型株に上昇トレンドを模索する兆候が、散見されています。
たとえば、代表的なディフェンシブ投資の対象である東証REIT指数ですが、これは5月20日以降、なかなか1,950円前後の天井水準でのもみ合いとなっており、抜けません。
この間、挙げていた、不動産デベロッパー、三菱地所<8802>は大きく下げてきています。
一方これに対して、先週末(日経平均が大きく下げたにもかかわらず)逆行高となっていた信越化学<4063>、ファナック<6954>、京セラ<6971>など典型的な景気敏感株が本日も続伸。
ずっと6月10日以降高原状態だった東レ<3402>が、上放れました。
もちろん、たくさんある景気敏感セクターのうちの一角でしかありませんが、非常に象徴的なベンチマークがこうした強勢を見せるというのは、やはり尋常ではない、と考えられます。
米長期金利低下、米国株上昇という暴走に変化が起こるか?
問題の中心となっている米10年国債利回りですが、先週は一時2%割れになるなど、異常な価格上昇(利回り低下)でした。
これが反転上昇するかどうかです。モーメンタムを示すRSIはすでに6月に入ってから、むしろ切りあがっており、直近では完全に逆行現象を形成。
早晩、米長期金利の反転上昇を示唆しています。
ということは、当然ドル円もこれに近い動きをしておかしくないわけです。
ドル円のほうは、RSIは5月9日以降、かなり逆行していますが完全にではありません。もちろん、為替市場は、より複合要因が多いでしょうから、ぴったり米国長期金利通りに動いているわけではないでしょうが、明らかに傾向はドル円反転になりそうな気配です。
戦略方針
日経平均レバレッジ<1570>の持続です
執筆者 : 松川行雄|有限会社増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
大和証券外国株式部勤務の後、投資顧問業を開業。2013年2月ヘッドハンティングにより増田経済研究所に入社。現在同社発行の「日刊チャート新聞」編集長。株式セミナーに於ける投資理論は個人投資家に満足度100%の人気を博す。