今週のまとめ1日22日から1月26日の週
22日からの週は、ドル売りが進行した。週後半のダボス会議関連の米政府当局者発言がきっかけ。米国は16年ぶりのセーフガード発動となったが、ロス米商務長官は「さらなる関税措置が講じられるだろう」と発言。さらに為替相場にインパクトを与えたのが、ムニューシン米財務長官の「ドル安は貿易にとって良い」との発言。市場での米通商政策への警戒感が高まった。一方で、トランプ米大統領からは「最終的には強いドルを望んでいる」との発言もあり、ドル相場は激しく上下動した。トランプ政権は米国ファースト(第一主義)を掲げており、通商政策で自国にとって有利な状況を作り出そうとしていることは明白。ドル相場の反発は一時的に留まっている。その他では、日銀とECBの金融政策発表があった。両者とも現行の金融政策を据え置いた。市場の予想通りの結果。ただ、黒田日銀総裁は会見で、市場の出口戦略への思惑をことごとく否定したものの、ドル円相場の上値は重かった。ドラギECB総裁会見では、「ユーロの変動は見通しを不確実にさせる」と、ユーロ高をけん制。年内利上げ観測も「可能性は非常に小さい」と火消し回っていた。しかし、ユーロドルはドル円と同様にドル安の流れに押されている。
(22日)
東京市場は、ドル売りが先行。米暫定予算の期限が切れて連邦政府機関の一部閉鎖が決まったことで、週明けはドル安が進んで始まった。ドル円は110円台後半で先週末NY市場後半のドル買いの動きを消している。ユーロドルは1.22台前半から1.22台後半へと上昇。独連立交渉に関するSPDの党大会は21日に交渉再開を決定した。ただ、値動きは限定的。
ロンドン市場は様子見ムードが広がるなかで、ややドル安と円安の動きが優勢。ドル円は111円手前までの上昇にとどまっている。日本時間あす午前2時ごろに米上院で暫定予算案の採決が行われる予定と報じられており、市場は結果待ちの姿勢。ユーロドルは1.2214レベルに安値を広げ、東京市場の上昇を消した。その後は再び1.22台後半に上昇も、レンジ内に留まった。ユーロ円は135円台での振幅。ポンドドルは1.39台乗せ、ポンド円は154円台に上昇する場面があった。
NY市場は、ドル買い先行も後半は戻り売りに押された。米上院が移民問題を協議することを条件に2月8日までの暫定予算で合意しそうなことからドルは買いが優勢となった。ドル円は一時111円台を回復。ただ、可決できた場合も2月8日までの暫定予算で問題先送りとの声もあった。取引後半には110円台に戻している。ユーロドルは1.22台前半に下落したあと、1.22台後半に戻した。ポンドは堅調。対ドルでは1.39台後半、対円では155円台に上昇。対ドルは、英国民投票後の高値更新。
(23日)
東京市場は、日銀会合をにらんで神経質な動き。日銀金融政策会合は、現状の長短金利操作付き量的質的緩和の維持をこれまで通り8対1で決定。展望レポートでは2018年の物価見通しの底値が1.1%から1.3%に引き上げられたものの中央値は変わらず。「予想物価上昇率は弱含みの局面が続いていたが、最近は横ばい圏内で推移」とした。ドル円は一時110.56レベルまで下落。ただ、売りは続かず110円台後半での揉み合いに。米暫定予算はトランプ大統領が署名して成立したが、市場は反応薄。
ロンドン市場では、円安から円高へと方向転換。ロンドン朝方の黒田日銀総裁会見がハト派的だったことや日経平均の大幅高、香港株の高値更新などリスク選好ムードが先行した。しかし、ロンドン時間には欧州株が序盤の上げ幅を削り、米株先物も堅調な動きから一時マイナスに転じるなどしており、円買いが優勢になっている。ドル円は黒田総裁会見中に111円台乗せ。しかし、米国のセーフガード発動などが警戒され株式市場が軟調となると110.38近辺まで反落。ユーロドルは1.22台での振幅のなかでやや上値が重くなった。豪ドルは鉄鉱石など商品市況の下落が売り材料となっていた。
NY市場では、ドル売りが優勢。ドル円は110円台前半に下落。ユーロドルやポンドドルはロンドンフィキシングにかけて買い戻しが強まった。ユーロドルは一時1.23ドル台、ポンドドルは1.40ドル台に上昇。米経済指標の発表もなく手掛かり材料に乏しい中、ドル売りが優勢となった。前日にトランプ大統領が太陽光パネルと洗濯機の輸入に関税を賦課することを承認したことが嫌気されているとの指摘も。外貨準備の多様化、米景気拡大や利上げ期待は高いものの議会でのごたごたや、トランプ政権の貿易政策に対する警戒感がドル買いを躊躇させているようだ。
(24日)
東京市場は、ドル安の流れが加速。ドル円は前日の海外市場でサポートされた110円手前水準を割り込み、109円台に。その後の戻りは鈍く110円台が重くなった。前日に日銀総裁発言後に上昇がすぐに売り戻されており、地合いの弱さが示された格好。一方、株安を受けた円高の側面もあり、ユーロドルなどその他主要通貨でもドル安は限定的。ユーロドルは前日海外市場で1.23台に乗せ、東京市場では一服感もでていた。
ロンドン市場で、ドル安が一段と進行。米国がセーフガードを16年ぶりに発動しており、保護主義的な通商政策がドル売りの背景となっているが、きょうはムニューシン米財務長官の発言がドル売りを加速させた。ドル安は貿易にとって良い、と発言している。ロス米商務長官からは、さらなる関税措置が講じられるだろう、との発言も。ドル円は110円近辺から一時109.39レベルまで下落。その他主要通貨でもドル売りが強まった。そのなかで、ユーロドルは伸びが限定的。あすのECB理事会を控えて動きにくさも。
NY市場でもドルは全面安。ムニューシン米財務長官のドル安を肯定する発言が伝わったことも流れを加速させたが、NY時間に入ってもそれが続いた。トランプ政権の保護主義的な政策への警戒感が広がっている。更に米株式市場でダウ平均が伸び悩んだこともドル円を圧迫していたようだ。ドル円は一時109円割れ。ユーロドルは1.24台乗せ。ポンドドルは1.42台まで急伸。対ユーロでもポンドは堅調だった。ECB理事会での慎重姿勢が見込まれる一方、英GDP速報値への期待やカーニー英中銀総裁のダボス会議での発言への思惑も。
(25日)
東京市場は、ドル円上値の重さが示された。序盤はゴトウ日関連のドル買い・円売りなどでドル円は109円台半ば近くまで反発。しかし、その後は再び108円台まで下落。109円はさみでの揉み合いに落ち着いた。NZドルは第4四半期消費者物価指数が予想を下回り売りが強まった。ドル安地合いのなかでNZドル/ドルは0.74台が重くなった。
ロンドン市場で、ドル円は再び下落。昨日、ドル安肯定発言で市場を驚かせたムニューシン財務長官が前日の発言を再確認し、ドル安が加速。ドル円は108.70近辺まで一段安となった。その後の戻りは109.20近辺までと振幅。ECB理事会は事前見通し通り金融政策の現状維持を発表。9月の量的緩和期限以降も必要とあれば延長の可能性を示し、金利は9月以降も相当期間低水準を維持と、従来姿勢を踏襲した。予想通りの内容で、市場の反応は限定的。ドラギ総裁の会見待ちに。
NY市場は、トランプ発言でドルが買い戻された。前半はドル安が加速したものの、終盤になって買い戻しが強まった。大統領は「ムニューシン米財務長官の発言は文脈の問題。最終的には強いドルが望ましい」と発言。ドル円は序盤に108.50近辺まで下落したが、発言後は109.70近辺まで急反発。ECB理事会後のドラギ総裁会見では、インフレや景気に関しては概ね変化はなかった。しかし、「ユーロの変動は見通しを不確実にさせる」と、ユーロ高をけん制。年内利上げ観測も「可能性は非常に小さい」と火消し回っていた。ユーロドルはドラギ会見後、2014年12月以来の1.25ドル台に上昇。
(26日)
東京市場は、ドル相場の上値が重かった。ドル円は朝方に前日高値を上回る109.77近辺まで買われたがその後は売りが優勢に。109円半ば付近に押し戻された。トランプ大統領のダボス会議での演説が予定されており、発言内容を確認したいとのムード。ユーロドルは朝方に1.2370近辺まで下落する場面があったが、その後は1.24台前半へと下げ渋り。
ロンドン市場では、ドル売りが先行。ドル円は一時109円割れへと下落。ユーロドルは1.25台手前、ポンドドルは1.43台手前まで水準を上げた。ポンドは対円や対ユーロでも堅調。この日発表された第4四半期英GDPは予想を上回る伸びを示したことが買いを誘った。ただ、この後予定されているダボス会議でのトランプ米大統領の演説を控えて、ドル売りは一服している。
NY市場は円高の動きが強まった。ダボス会議に出席中の日銀の黒田総裁の発言をきっかけに円高が再び強まっている。総裁は「日本は緩やかな景気拡大を続ける可能性が高い。日本は2%のインフレ目標にようやく近い状況にある」などと述べた。また、「日本では労働力が不足しつつある」とも語った。ただ、午後になって日銀が声明を発表しており「黒田総裁はインフレ見通しを修正していない」と火消しに回ったことで、円高の動きは修正されている。ただ、戻りも限定的。ドル円は前日サポートされていた108.50水準をブレイクし、ストップを巻き込んで108.30近辺まで一時急落。
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執筆者 : MINKABU PRESS
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