今週のまとめ5月13日から5月17日の週
13日からの週は、米中貿易戦争を軸にリスク回避の動きが広がった。米国が対中制裁関税第4弾を発表、ファーウェイに対すル禁輸措置など中国への風当たりが強まった。中国側も対応措置を発表、米国の姿勢を強く批判している。為替市場には円高圧力が広がった。ドル円は109円割れ目前まで下押しされる場面があった、週末にかけては逆に110円台をつけたが一時的にとどまり、かえって上値の重さを印象付けた。クロス円はより円高の流れが鮮明。英政治リスクを抱えたポンド円は140円近辺へ、中国指標の悪化や週末の豪総選挙を控えて豪ドル円は75円台へとそれぞれ下落した。ドル相場は全般的にドル買いが優勢。クロス円の下落に連れた面が強く、ポンドドルは1.27台へ、豪ドル/ドルは0.68台へと低下した。ユーロ相場は売り優勢も、対ポンドでも買い圧力があり下押しは限定的だった。ただ、欧州議会選を前にイタリアのサルビーニ副首相がEU財政規律に疑問を呈するなど波乱材料もあった。また、米国は日欧に自動車関税引き上げを匂わせながら輸出制限を求めるなどの報道もあった。中東情勢の緊張で原油相場は不安定。リスク材料山積の一週間だった。
(13日)
東京市場は、円買いが先行。ドル円は午前中に109.60台まで値を落とした。週明けにトランプ米大統領から中国に対するけん制の動きが継続、対中関税リスク4への警戒感が重石となっている。反発は109.80近辺までと限定的。午後には米株先物の下げ幅拡大などで109.60台へと再び軟化。 中国人民元が大きく下落。ドル人民元が1月以来の6.9手前までドル高元安に。上海総合など中国株の売りも目立ち、中国売りの動き。豪ドル円は96.50近辺サポートの下抜けを何度かトライする展開。
ロンドン市場は、株安などリスク回避圧力が広がるなかで、為替相場は小動き。米中貿易摩擦が一層激化することが警戒されるなかで、週明けの米株先物の下落につづいて欧州株も売られている。トランプ米大統領は中国に報復しないようにと警告。また、中東での米国とイランの緊張が高まるなかで、NY原油先物が買われている。欧州ではマルムストロームEU貿易担当委員が、米国との自動車税について対決姿勢を示した。米債利回りは低下。ただ、ドル円は109.60-70レベルでの揉み合いが続いている。クロス円は序盤に下押しの動きがみられたが、すぐに下げ渋っており、全般に小動き。米中貿易関連のニュース待ちに。
NY市場は、リスク回避の動き。トランプ大統領の関税引き上げに対して、中国が報復関税を発表したことで問題のエスカレート化に対する懸念が再燃。中国は米国からの一部輸入品の関税を6月1日から25%に引き上げると発表。週明けのNY株式市場は大幅下落。ドル円は先週強いサポートだった109.50レベルを割り込んで、109円手前まで下落。ユーロドルは上に往って来い。序盤は1.1260近辺まで上昇も、その後は元の位置の1.1230近辺に失速。ポンドドルは序盤に1.30台を回復も、戻り売りに推されて200日線を割り込んだ。
(14日)
東京市場は、円売りが優勢。トランプ大統領がホワイトハウスでのイベントで「中国との貿易協議が成功すると感じている」「中国との協議が成功か3-4週間以内に分るだろう」などと発言したことが背景。ドル円は序盤は109円台前半で上値が重かった。しかし、トランプ発言あとは109.70台まで上昇。米株先物が時間外取引で買われるなかで、一時400円超安となっていた日経平均も下げ幅を縮小。ユーロドルは1.12台前半でじり高。ユーロ円は122円台後半から123円台乗せ。
ロンドン市場は、円売りが先行。目先の米中貿易関連のイベントをひとまず通過、米株先物や欧州株が反発している。ドル円は109.77レベル、ユーロ円は123.40レベルまで一段高となった。ただ、取引中盤にかけて円売りの勢いは一服。ユーロにとっては5月ZEW景況感指数が再びマイナス領域に転落したことが重石となり、特に対ポンドで売りのフローが入っていた。一方、1-3月期の英ILO雇用統計では失業率が低下したが、賃金の伸びは予想を下回った。ポンド相場はいつも通り売り先行で取引を開始したが、すぐに買い戻しが入っている。ポンド円は一時141.75近辺に下押しも、その後は142円台を回復している。全般に短期ポジションにやや調整が入る状況に。
NY市場は、ドル買いが優勢。トランプ大統領の発言にポジティブに反応した。中国との貿易協議について、「成功かどうか約3、4週間以内に知らせることになるだろう。私はそれが非常に成功すると感じている」と述べていた。米株か大幅反発。ドル円は109.80近辺まで買い戻された。ただ、110円台には慎重。ユーロドルは戻り売りの動きで1.12台割れをうかがう展開。EU議会選を控えてイタリアのサルビーニ副首相が「雇用拡大に必要ならEUの財政規則に違反する用意がある」と述べていたことに敏感に反応した面も。ポンドドルは1.29台前半に下落。EU離脱問題に関心が集まっており、経済ファンダメンタルズの好結果には反応しにくい状況。
(15日)
東京市場は、狭いレンジでの揉み合い。ドル円は109円台後半でわずか17銭のレンジ。買い先行の日経平均がマイナスに転じ、ダウ平均先物の売りなどもあって一時109.52近辺まで値を落とした。トランプ大統領が国家安全保障上のリスクをもたらす通信機器を米企業が使用することを禁じる大統領令に署名方針との報道も重石に。その後東京株式市場が回復。令和初となるプラス圏で一日の取引を終える流れになり、リスク警戒の動きが一服した。ユーロドルは1.12台前半、ユーロ円は122円台後半での揉み合い。
ロンドン市場は、円高の動きが優勢。欧州株が反落するなかで、米株先物も下げに転じている。米10債利回りは一時2.37%近辺に再び低下。為替市場ではリスク回避の円買い圧力が広がり、ドル円は109円台後半から前半へ再び下落。ユーロ円は122円台前半、ポンド円は一時141円台割れへと下落。豪ドルは75円台半ばへと一段安。東京午前に発表された中国経済統計が弱かったことが特に豪ドルを押し下げていた。また、欧州ではイタリアのサルビーニ副首相が前日に続いてEU財政規律に疑問を呈した。英国では夏休み前の離脱が急がれるなかで与野党協議の進展がみられないことに焦りが示されている。
NY市場では、ドル円が下げ渋り。序盤はこの日の中国経済指標が弱い内容だったことや、朝方発表の米小売売上高や鉱工業生産も予想を下回ったことから、米株安と伴にドル円も109円台前半に下落した。その後、一部報道で、トランプ大統領が金曜日に期限が迫っていた輸入自動車に対する関税措置を6ヵ月間延期する計画との報道が伝わりドル円に買い戻しが膨らんだ。ドル円は109.70付近まで一時反発。ユーロドルは1.1185近辺から1.1225近辺へと買い戻された。ユーロ円は一時123円台を回復。ポンドドルは1.28台前半から後半に反発したが、ユーロと比較すると戻りは限定的。EU離脱問題で英与野党の協議が進展しないことが、積極的なポンド買いを手控えさせた。米株は買い優勢に取引を終了。
(16日)
東京市場では、ややリスク警戒の動き。トランプ大統領は、ファーウェイを念頭において国家安全保障上のリスクをもたらす企業の通信機器を米企業が使用することを禁じる大統領令に署名したと発表。リスク警戒感が広がり、ドル円は109.60近辺から109.34レベルまで下落した。その後は売り一服も109円台半ばまでの戻りにとどまった。ユーロドルが朝からわずか9ポイントレンジ。 豪ドルは1豪雇用統計の弱さを受けて、一時急落。失業率が予想外に悪化、雇用者数自体は予想を上回ったが、正規雇用はマイナスだった。対ドルで一時0.69割れなど、売りが入る展開も、すぐに買い戻された。
ロンドン市場は、落ち着いた値動き。米商務省がファーウェイに対する禁輸措置を発表、中国側も対抗する姿勢を強めている。欧州株は軟調に取引を開始。米株先物もマイナス圏で推移していた。全般に円買いの動きが先行。しかし、リスク回避動向はすぐに一服し、円安方向に調整されている。米株先物はプラスに転換、欧州株も下げは一服。総じて相場のモメンタムは低調。ドル円は109.30台から109.60台で、ユーロ円は122.50台から123円手前のレンジでやや円売りに。ユーロドルは1.12台前半で小幅に上下動。東京市場で売りが広がった豪ドルにも買戻しの動きが入った。ポンドはきょうも売りが優勢。ポンドドルは1.28台前半、ポンド円は140円台前半へと下押し。きょうもEU離脱をめぐる動きに進展はみられていない。
NY市場は、ドル買いが優勢。ドル円は一時110円台手前まで上昇。トランプ大統領がファーウェイとZTEが製造した通信機器の米国内での販売制限に繋がる大統領令に署名し、米商務省が取引しようとする米企業に許可取得を義務付けを発表。中国側はこれに強く抗議、米中間の対立が激化している。ただ、為替市場はリスク回避の動きにはなっていない。米株は上昇。今週の下値トライでドル円には短期的なシートカバーが入ったもよう。ユーロドルは1.11台に再び下落。サルビーニ伊副首相は「イタリアもルールを無視するトランプ大統領のような衝撃が必要」に発言した。今週に入って同副首相はEU財政規律に疑問を呈する発言をしている。ポンドドルは1.27台へと一段安。これまでと変わらずに政治リスクがポンドを圧迫。超党派協議は継続されているものの、依然として合意できていない。
(17日)
東京市場では、円買いが優勢。午前中は前日NY市場の流れを受けて底堅く推移し、一時110.03レベルまで買われた。日経平均が前日の米株高を受けて堅調なことも下支え。しかし、大台は維持できず少し下げてもみ合いとなると、午後には中国メディアが「中国は今のところ、米国との貿易交渉を継続することに興味がないかもしれない、誠意がほとんど感じられない」との論評を発表。リスク警戒の動きが広がってドル売り円買いが強まった。ユーロ円は122円台半ばを割り込むなど、午後に入ってリスク警戒の動きで軟化。ユーロドルは1.11台後半と前日安値付近で揉み合い。明日総選挙を控える豪ドルは対ドルで0.6880近辺。若干頭が重いが値幅は限定的。
ロンドン市場では、クロス円が下落。中国株の下落に続いて欧州株や米株先物が売られており、リスク回避ムードが再燃している。ドル円が109.60-70レベルで揉み合う中で、対ポンドや対ユーロなどクロス円で円高が進行。ポンド円は140円割れ、ユーロ円は122円台前半へと安値を広げた。ポンドドルは1.27台半ばへと下落、4か月ぶり安値水準に。米中貿易戦争の様相が深まっていることに加えて、EU議会選を控えてサルビーニ伊副首相が反EU的な姿勢を強めている。また、英政府は労働党との協議が決裂したことを確認、一部では来週にも英議会でEU離脱案の採決を実施したいとの政府の意向が報じられている。
NY市場はドル買いが優勢となり、ドル円は110円台を回復した。きょうのドル円は東京時間から戻り売り優勢の展開が続き、109円台半ばでNY時間の取引を開始した。中国政府は米国との再交渉に意欲を失っているといった報道が市場の雰囲気を圧迫していたようだ。ただ、この日発表のミシガン大学消費者信頼感指数が2004年1月以来の水準に上昇したことを受けて動きが反転している。一時200ドル超下落していたダウ平均もプラスに転じるなど買い戻しが見られ、ドル円も追随した格好。
執筆者 : MINKABU PRESS
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