【来週の注目材料】今後の米金融政策姿勢を確認=ジャクソンホール会議
9月17日、18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、4年半ぶりの利下げに踏み切ることがほぼ確実視されています。
2020年の新型コロナによるパンデミックを受けて政策金利を0.0-0.25%と事実上のゼロ金利にまで引き下げた米FRBは、アフターコロナでの物価高などを受けて2022年3月に利上げを開始。2023年7月に現行の5.25-5.50%まで金利を引き上げた後は、据え置きを続けてきました。
物価の鈍化を受けて、2024年中の利下げ開始見通しが強まり、当初は今年3月にも開始という見方が広がりました。物価が下げ渋ったことや、米景気の底堅さが示されたことを受けて、利下げ開始期待は3月から6月さらには9月への先送りされていきました。先月前半までは一部で9月も見送るのではとの見方が一部で見られましたが、7月11日に発表された6月の米消費者物価指数(CPI)の弱い伸びもあって、据え置き期待が払しょくされ、一部で0.5%の大幅利下げを期待する動きまで広がり始めました。今月2日に発表された7月の米雇用統計において、雇用者数の伸びが予想を大きく下回り、失業率が予想外に悪化したことを受けて、大幅利下げ期待が加速。失業率の悪化によりサーム・ルールが発動(直近3カ月の失業率の平均が、過去12カ月で最も低い水準と比べて0.5%を超えて高かった場合、米国はリセッションとなる可能性)したことなども話題となり、一時は短期金利市場で85%が0.5%利下げを見込むという動きが見られました。
少し落ち着いて、0.25%の利下げ見通しと0.50%の利下げ見通しが拮抗する中で迎えた先週の物価統計は、生産者物価指数(PPI)が予想を下回る伸びとなったものの、より注目度の高い消費者物価指数(CPI)がほぼ想定通りとなったことで、0.25%利下げ見通しがやや優勢となりました。さらに15日に発表された米小売売上高が予想を大きく上回る伸びを見せたことで、大幅利下げ見通しが大きく後退、0.25%見通しが約75%、0.50%見通しが約25%という状況になっています。小売売上高は雇用の状況に影響を受けやすく、予想以上の鈍化を見せる可能性が意識されていたことに、予想外の強さを見せたことで、米景気の鈍化懸念が後退した形です。とはいえ、まだ約25%も大幅利下げ見通しが残っている状況。9月のFOMCまでには8月の雇用統計や消費者物価指数の発表が控えているだけに、今後についてはまだまだ不透明といったところです。
そうした中、来週は金融政策の見通しに大きく影響する重要なイベントが予定されています。22日から24日までワイオミング州のジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催の年次経済シンポジウム、通称ジャクソンホール会議です。各国の中銀総裁、政治家、学者などが参加する同シンポジウムでは、各国の中銀関係者が金融政策についての意見を交換する貴重な場として認識されています。1998年にはアジア危機などで揺れる世界経済情勢の中で、当時のグリーンスパンFRB議長がジャクソンホール会議中にFRB内の意見をまとめ、その後の利下げ開始に繋げました。また、1999年にはその後FRB議長となるバーナンキ・プリンストン大学教授と山口日銀副総裁(当時)が日本の金融政策についてのかなり熱い論争を行いました。
FRB議長は同シンポジウムの目玉となる講演を行うことが多く、2010年には当時のバーナンキ議長がその後の米量的緩和政策第2弾(QE2)開始を講演で示唆。同シンポジウムに参加していた白川日銀総裁(当時)が緊急帰国し、講演3日後に臨時会合を行い、新型オペ拡充を決定したことなどもありました。
今回のシンポジウムでもパウエル議長の講演が23日に予定されています。今回のシンポジウムのテーマである「Reassessing the Effectiveness and Transmission of Monetary Policy(金融政策の有効性と伝達の再評価)」に絡め、経済見通し、今後の金融政策姿勢などについての発言があるとみられます。
議長は7月のFOMC後の会見で9月の利下げ開始の可能性について触れました。今回の講演でその可能性がどこまで高まっているのか、大幅利下げとなる可能性があるのか、今後の利下げペースについての現時点での認識はどうなっているのかなどが注目されるところです。15日の米小売売上高の好結果を受けて後退した大幅利下げ期待ですが、今回の好結果については6月に米自動車ディーラーの多くが被害を受けたサイバー攻撃の反動による販売増や、アマゾンのプライムデー、ウォルマートやターゲットが実施した大幅値引きなどの影響があるとの指摘があり、数字ほど実態が強くない可能性があります。講演内容次第で大幅利下げや、今後の積極的な利下げ継続期待が広がると、ドル売りが強まる可能性があります。
ちなみに昨年は参加した植田日銀総裁ですが、23日に衆議院財政金融委員会に呼ばれており、今回は不参加の見込みです。
MINKABUPRESS 山岡
執筆者 : MINKABU PRESS
資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。