【来週の注目材料】サプライズな会合後の初の講演 黒田総裁は何を語るのか
2022年も終わりが近づきました。今年のドル円は1月の113円台から10月の152円手前まで、実に38円48銭という大きな値幅となりました。これはリーマンショックの年などを超え、1985年のプラザ合意の影響で大きく円高が進んだ1986年以来の大きさです。しかも、ドル高円安が進んだ後、調整が入って終わるかと思いきやの今月の日銀金融政策会合でのサプライズによる円高。上昇分の半値戻しの水準を割り込んで130円台まで一時付けるという、最後まで激しい相場展開となりました。
年末が近づき、主要な経済指標は前倒しでの発表が済んでいますのでやや材料不足感がありますが、そうした中、今週は黒田総裁による日本経済団体連合会審議員会での講演が予定されています。年の瀬が近づく中でのビッグサプライズとなった19日、20日の日銀金融政策決定会合後初の講演となるだけに注目を集めています。
日銀金融政策決定会合では市場の大方の現状維持予想に反して、長期金利の変動幅を従来の±0.25%から±0.5%に拡大してきました。物価高や世界的な金利上昇を受けて、日本国債の利回りも全般に上昇圧力を受けており、債券の償還までの残存期間を横軸にして利回りをグラフ化したイールドカーブは、短期から長期にかけての右上がりの曲線のうち、10年手前が高く、指値オペなどにより0.25%に抑えられた10年で下がり、10年を超えると再び大きく上昇するという歪んだ形になっていました。今回この歪みを解消するために変動幅を拡大してきました。10年国債利回りは発表後に0.45%を付けるなど、一気に上昇しています。10年国債利回りは長期金利のベンチマークとなる金利であり、市中の貸出金利や社債などの基準となる重要なものだけに、歪みを放置することによる金融環境の悪化を無視できなかった形です。
黒田総裁は会合後の記者会見で、記者からの「事実上の利上げではないのか」という質問に対して「あくまで市場機能の改善、金融を引き締めようとか、そういうものでは全くない」と答えています。
ただ、多くのメディアも市場も今回の変動幅拡大は事実上の利上げとみなしています。来年4月に任期満了を迎える黒田総裁は、任期中緩和姿勢維持を貫くと見られていましたから、大きなサプライズです。このところ、次期総裁の下で緩和策の検証を行うといった報道や、岸田政権が日銀による緩和策継続の根幹となっている政府・日銀による共同声明での「できるだけ早期に2%の物価目標を実現」について、修正することで固まるとの報道(官房長官がその後報道を否定)など、次の総裁の下での緩和策修正に向けた動きが広がってきています。ただ、新総裁の下で一気に緩和政策の修正を進めると、市場や日本経済に与えるインパクトが大きくなりすぎる可能性があるため、その地ならしをしてきたという印象です。
今回の黒田総裁の講演では、会合後の記者会見同様に利上げではないという姿勢を示し、緩和政策の維持を強調してくる可能性が高いです。ただ、緩和姿勢後退への動きを期待している市場は、細かい表現などで緩和姿勢後退の兆しが見られないかなどを確認してくると思われます。
前回の会合を受けて一部では4月以降短期金利のマイナス金利を解除するなどの緩和後退を進めるとの期待が見られます。短期金利の引き上げは事実上どころではなく「利上げ」そのものとなるだけに、実施までのハードルはかなり高いですが、それだけ市場の緩和姿勢後退に対する期待が強いといえます。
講演内容によって今後の緩和姿勢後退に向けた市場の期待が強まるようだと、円買いの動きが広がる可能性があります。
では皆様、メリークリスマス!!
MINKABU PRESS 山岡和雅
執筆者 : MINKABU PRESS
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