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深セン経済特区40周年祝賀会から読み解く香港情勢「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

マネ育チャンネル 

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港の最新の情勢について迫っていきます。中国や香港とのビジネスや投資、人民元・香港ドルといった通貨の売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第19回は「深セン経済特区40周年祝賀会から読み解く香港情勢」でお届けいたします。

それでは、さっそく本題に入っていきます。

目次

1.習近平総書記が深セン経済特区設置40周年祝賀会にて講演
2.なぜ深センにこれほどの自治権が与えられるのか?
3.香港の立ち位置はこれからどうなるのか?

1.習近平総書記が深セン経済特区設置40周年祝賀会にて講演

今月14日、香港と陸繋がりで急成長中の都市、広東省深セン市で、経済特区設置40周年祝賀会が執り行われ、中国の習近平総書記が講演を行いました。

具体的には「深センは改革開放後に中国共産党と人民が手を携えて築き上げた全く新たな都市であり、何も無い白紙の状態から中国の特色ある社会主義を見事に描き上げた」と言った深センを称賛する発言や、「経済特区は引き続き運営していく必要があるだけでなく、より良く、より高い水準で運営していく必要がある」とした深セン経済特区にさらに改良を加えていく必要との発言が注目を集めました。

これを受けて18日、国務院(行政の最高権力機関)の直下に位置する、中国・国家発展改革委員会が深センを模範地区として、新たな自治権を認める計画案を公表しました。全6項目からなる計画案の中には、深センの地方政府がオフショア人民元建の起債を行うことができるなど、今まで香港に特権的に与えられてきたオフショア人民元業務(人民元の国際化業務)に関する案も含まれており、明らかに深センを香港の代替都市として意識した計画が公表されました。

この深セン自治権の強化に関する話題が、今週、香港を賑わせています。香港を代表する華南地区のニュースに特化した新聞、SCMP(South China Morning Post)誌でも大きく取り上げられ「より大きな自由が深センに与らえられると香港の地位はどうなってしまうのか?」などと、香港の先行きについてフォーカスした社説も組まれているほどです。

しかし、なぜここまで習近平総書記は深セン経済特区に力を入れるのでしょうか?

2.なぜ深センにこれほどの自治権が与えられるのか?

実は習近平総書記の父親である習仲勲氏が1980年(40年前)に広東省長を務めた際に、香港への密航者が後を絶たないことに衝撃を受け、広東省の改革開放を進め、党中央工作会議で深センの経済特区構想を提起した過去があるそうです。そこから40年が経過した今、世間を賑わせているデジタル人民元の実験の話題を始め、世界の最先端を走る都市の一つとして成長した深センは、香港の代替となりうる国際都市としても注目を集めるに至りました。

余談になりますが、習仲勲氏は一度、国務院の副総理まで務めたのですが、文化大革命の初期とも言える1962年、反党の思想を含んだ小説の名誉回復を企んだとして、国内で逮捕されています。そして現在の中華人民共和国の建国の父でもある毛沢東氏の死後2年が経過した1978年にようやく解放され広東省の要職に復職した経緯があります。そして父親の逮捕もあり、習近平総書記も若い頃は大変に党内で苦労をされたようです。

本シリーズの第11回で香港実業家で有名なジミーライ氏について言及しましたが、彼はいわゆる香港ドリームを夢見て広東省から香港に密航し、1981年にアパレルブランドの「Giordano」を創設し財を成しました。そのジミーライ氏が今は香港で国家安全維持法に違反しているとして逮捕され、今も裁判所と争っています。

https://media.gaitame.com/entry/2020/08/18/140000

香港に密航しそこで財を成し、反中央の姿勢を貫いたジミーライ氏が逮捕され、中国に残って文化大革命の苦渋を舐めた習仲勲氏が、後に深センを経済特区とし成長させ、さらにその息子である習近平総書記が深センにさらなる特権を与え、香港の国際金融都市としての立ち位置を脅かしている。中国本土と香港の間の国民感情の隔たりや、習一族の思いを感じずにはいられないエピソードであると感じました。

深センに経済特区を造った習仲勲氏の思いと、今の香港への風当たりの強さには大きな関係があるのかも知れませんね。

3.香港の立ち位置はこれからどうなるのか?

さて、そうは言っても新たな計画案において、深センに、まだまだ香港ほどの経済的な自由が与えられるわけではありません。資本主義が適用されている香港と、中国の特色的な社会主義が適用されている深セン、英語・中国語に対応出来る香港と、中国語しか対応出来ない深セン、金融センターとしての歴史の厚みがある香港と、ビジネス街としての歴史が浅い深センの役割が、明日すぐに同様になるというのは現実的ではないでしょう。

ですから今回の計画もまずは2025年までの5年計画のようで、極めて現実的に、どうにも海外からの影響を受ける香港の代わりとなる国際金融都市を築いていこうと言うのがメインシナリオだと思います。

一方で、本シリーズで述べているように、香港はすでに中国本土色が強くなってきており、国外企業の撤退が進み、中国企業の上場が進むなど、いわゆる本土化が進んでいます。またそれを傍目に投資家が香港への投資を手控え、香港株式市場が低迷していることも述べてきました。

中国の変化というのは何事も恐ろしく早いです。これは百聞は一見にしかずなのですが、とにかく中国では時の流れが早いので、もしかすると香港の凋落、深センの台頭も思いの外に早い可能性には留意したいところです。


さて、本日はここまでとなります。

ここで一つ、本日は直接的な相場の話題に言及していませんので、蛇足ですが、相場への向き合い方ということでシェアさせて頂きます。

私の反省として、2016年のブレグジットを全く予想出来なかったということがあります。それは背景として英国と欧州の歴史関係を把握していなかったことから、英国民の感情を理解出来なかったからです。

ですから現在、例えば米大統領選挙や、香港を舞台とした米中対立に注目が集まっていますが、その背景を自分の中に蓄積していくことは重要だと考えています。より本質に近いアイデアを持つことができれば、それだけ政治的なイベントを読み解くことができる可能性が高まるからです。

FXでは、つい短期的な値動きにばかり目がいってしまいますが、世の中の変化を捉えることが、大局観を捉え、トレンドを捉えることに繋がると思います。本日の内容は相場の大局観を掴むための情報としてお役立て頂ければ幸いです。

引き続き注目度・影響度の高い、中国本土・香港の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。ご支援のほどよろしくお願いいたします。

それでは、またの機会にお会いしましょう。

戸田裕大

<最新著書のご紹介>

f:id:gaitamesk:20200929125737p:plain

なぜ米国は中国に対して、これほどまでに強硬な姿勢を貫くのか?

ポストコロナ時代の世界情勢を読み解くカギは米中の「通貨覇権争い」にあります。

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【インタビュー記事】

【過去記事】

 

<参考文献・ご留意事項>

人民日報:深セン経済特区設置40周年祝賀大会における習近平総書記の金言
http://j.people.com.cn/n3/2020/1014/c94474-9769154.html

中華人民共和国国家発展改革委員会:深センの中国社会主義先行模範区に関して
https://www.ndrc.gov.cn/xwdt/xwfb/202010/t20201018_1248311.html

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若竹コンサルティング 創業者戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本のグローバル企業300社、在中国のグローバル企業450社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は若竹コンサルティング代表として、為替市場調査と為替リスク管理に関するコンサルティング業務を提供する傍ら、為替相場講演会に多数登壇している。著書に「米中金融戦争 香港情勢と通貨覇権争いの行方」。
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執筆者 : マネ育チャンネル|外為どっとコム

マネーを育てよう!をテーマに、外為どっとコム総合研究所に所属する研究員が執筆するオリジナルレポートのほか豪華講師陣の貴重なFXレポート、個人投資家や著名投資家のインタビュー記事など、バラエティ豊かな情報を配信しています。為替トレンドに合わせた特集記事やFX初心者でも安心の学習コンテンツを用意しており、個人投資家の取引技能の向上に寄与すべく活動しています。

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